「ろくでもない」とは「何の値打ちもない」ことだ、問題行動ばかりの人を指した悪口また不良品を表して使われる。「ろく」とは何のことか、漢字ではどう書くのか知っているか? より詳しい意味や使い方も押さえて「ろくでもない」を使いこなせるようになろう。
今回は語学系主婦ライターの小島ヨウを呼んです。一緒に「ろくでもない」を説明していく。
ライター/小島 ヨウ
言葉の使い方、漢字の意味に興味を持ち、辞典で調べまくるアナログ主婦ライター。分かりやすく、読みやすい文章を心がけている。
「ろくでもない」の意味や使い方
image by iStockphoto
金遣いがあらく、飲んだくれ、次々に恋人を替える……など素行不良の人を「ろくでもない」と表現します。また「ろくなものじゃない」「ろくでなし」との言い方もしますね。ほかにも「病気でろくなものしか食べていない」「忙しくてろくに寝ていない」など否定をともなって様々に使われる「ろく」。いったい何のことでしょう。
「ろくでもない」の意味
それではまず「ろくでもない」を辞書で調べてみましょう。
〘形口〙 (「碌」はあて字) 無意味で、なんのねうちもない。つまらない。
出典:精選版 日本国語大辞典「陸でもない・碌でもない(ろくーでもーな・い)」より
価値がない・くだらないことを「ろくでもない」と表現、漢字では「陸」、また当て字ですが「碌」の字を使います。「陸」をどうして「ろく」と読み、「陸」がないことがつまらない意味になるのでしょう。さらなる疑問、語源を調べてみます。
「ろく」とはなんだろう?
「陸地」「陸上」など普段は「りく」と読む「陸」の漢字を「ろく」と読む場合の意味を再度辞書で調べます。
[名・形動]
1.(あとに打消しの語を伴って用いる)正常なこと。まともなこと。満足できる状態であること。また、そのさま。まとも。
2.(陸)土地や物の面の平らなこと。また、そのさま。平坦。
3.気分の平らかなこと。安らかなこと。また、そのさま。
[補説]「碌」はあて字
出典:デジタル大辞泉(小学館)(「陸・碌」ろく)より
「陸」を「りく」と読むのは漢音。より前に中国から伝わった呉音では「ろく」と発音します。この場合の意味は、まともであること・十分なこと・地面や気分が平らなこと。これを否定・打ち消す表現が「ろくでもない」なので、まともじゃない・十分にない・たいしたものではないといった意味になるのです。
ちなみに「碌(ろく)」はごろごろと小石が多い様・役に立たないの意味。すでに役に立たないの意味があるのでこれを打ち消すと「まとも」に戻ってしまいますね、なので当て字なのでしょう。高齢となって身体能力・記憶力の低下を表す「耄碌(もうろく)」、役に立たない様「碌々」と使われます。
「ろくでもない」の使い方・例文
使った方が分かりやすいかもしれません、例文をみてみましょう。
1.一目惚れした彼はギャンブル好きのろくでもない男で、姉はすぐ別れた。
2.友人からまだ使えるともらった掃除機は、吸い込みが悪くホコリ臭いろくでもないものだった。
3.一人部屋が欲しいと親に頼んだが、ろくに掃除しない子はダメと言われた。
1.は人に対して真面目じゃない、2.は物に対して役に立たない意味で使われた例文です。3.は十分にしない意味の「ろくに」を使って、掃除しないことを嫌味のように表しています。
「ろく」はまともなことですが「彼はろくである」とは使いません。「ろくでない」「ろくにしない」など常に否定をともなったネガティブな表現で用いられます。
「くだらない」:価値のない
「くだらない」は漢字で「下らない」と書き、価値がない・取るに足らない・程度が低くてばからしい、など否定的な意味です。高いところから低いところに達する・下回る・劣るなどの意味がある「下る」を「ない」と打ち消したら、良い意味になりそうですが、どうしてネガティブなのでしょう。上質なものは江戸に「下る」けれど、質の悪いものは現地で消費され「下らない」。よって、たいしたことないものを「くだらない」といった、など語源は諸説あります。
使い方は「学生時代、友人たちとくだらない話ばかりしていたが楽しかった」「カリスマ投資家の講演は自慢話のあげく勧誘で、くだらなかった」などです。
\次のページで「「つまらない」:値打ちがない」を解説!/