(1)武士は兵法の道を慥に覚え其外武芸を能つとめ (2)武士の行ふ道少しもくらかず心迷ふ所なく (3)朝々時々におこたらず心意二ツの心をみがき観見二ツの眼をとぎ(4)少もくもりなく迷ひの雲の晴れたる所こそ実の空と知るべき也
宮本武蔵 著 『五輪書』空の巻(一) 番号は引用者による。
難しいですね。順番に解釈していきましょう。
(1)まず、慥という字は「たしかに」という意味です。「武士は兵法の道をたしかに理解して、そのほかの芸にもよく努力し」と解釈します。
(2)この部分はそのまま、「武士が行う道は少しも暗くなく、心の迷いもなく」という解釈です。
(3)「心意二ツの心をみがき」とは、気持ちと意見の二つの心を磨いてと解釈しましょう。観見二ツの眼とありますが、観と見の違いは何でしょうか。まず見は普通に見ることと考えて問題ありません。観は仏教的には真理をみることという意味です。よって、「観見二ツの眼をとぎ」は真理を見る眼も普段通りに見る眼も研ぎ澄ましと解釈できますね。
(4)ここも素直に考えて、「少しも(武士の道に反する)雲がなく、晴れている空こそが実の空であるのだ」と解釈できますね。
この部分が「万里一空」を指す部分となります。修行の末に、心の迷いがなく、行くべき道を理解しているというニュアンスが分かるでしょうか?
「万里一空」の使い方・例文
「万里一空」の例文を見ていきましょう。
1.万里一空は僕の座右の銘だ。
2.万里一空の境地を求めて日々努力、精進いたします。
例文を一つずつ確認します。1.は座右の銘として「万里一空」を挙げている例です。意味合いとしてもスローガン的なニュアンスですのでこのような使い方をすることが多いですね。実際にこの言葉を座右の銘に挙げる著名人も多く、元プロ野球選手の桑田真澄さんの座右の銘でもあります。また、2.で挙げた例文は琴奨菊が大関昇進の伝達式で述べた口上(口頭で申し述べること)です。
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