国語言葉の意味

語源は古今和歌集?「引く手あまた」の意味・例文・類義語などを日本放送作家協会会員がわかりやすく解説

この記事では「引く手あまた」について解説する。

端的に言えば、引く手あまたの意味は「多くの人に誘われる」ことです。その語源は古今和歌集にあるぞ。ビジネスシーンでも使う言葉なので、語源や意味をしっかり覚えて使いこなせるようにしよう。

日本放送作家協会会員でWebライターのユーリを呼んです。一緒に「引く手あまた」の語源や意味、類義語などを見ていきます。

ライター/ユーリ

日本放送作家協会会員。シナリオ、エッセイをたしなむWebライター。時代によって変化する言葉の面白さ、奥深さをやさしく解説する。

「引く手あまた」の語源・意味・例文

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「引く手あまた」は、聞いたことがあるし、意味も何となくわかるという方が多いのではないでしょうか。しかし、その語源が古今和歌集ということは、ご存じでしたか?

「引く手あまた」の語源は古今和歌集!

次に「引く手あまた」の語源を見てみましょう。

大幣の引く手あまたになりぬれば思へどえこそ頼まざりけれ(読人知らず)

出典:古今和歌集

この歌のキーワードは大幣(おおぬさ)。聞き慣れない言葉ですが、神社でお祓いのときに使う、棒に四角い白い紙がたくさんついている道具のことです。お祓いのあと、人々は大幣をからだに引き寄せて穢れを移し、大幣を川に流しました。

和歌の意味は「大幣のように引く手あまたのあなただから、あなたのことを恋しく思っても、頼みにすることはできない」。これが「引く手あまた」の語源です。

この歌には「在原業平を好きなある女性が、業平が不特定多数の女性のもとに通っていると思って詠んだ歌」という意味の詞書(和歌の前書き)があります。在原業平は平安時代の貴族で、『源氏物語』の光源氏のモデルのひとりとも言われている人物。そんなイケメンでプレイボーイな業平が返したのが次の歌です。

大幣と名にこそ立てれ流れてもつひに寄る瀬はありてふものを(在原業平)

出典:古今和歌集

「大幣のように引く手あまたと言われている私だが、最後に流れ着く川の瀬はあなたのところしかない」という意味です。「名」には「評判」や「うわさ」の意味があります。色恋の評判が立っていることは認めながらも、お祓いの後に大幣が水に流されることにたとえて、最後に流れ着くのはあなたのところだよ、と言っているのです。

「好きだけど、モテモテのあなたなんか当てにできない」と冷たい態度を取ったのに、「最後には君しかいない」なんて言われたら心が揺らぎそうですね。業平は姿形だけでなく、言葉の力でも女性を魅了して「引く手あまた」だったのでしょう。

「引く手あまた」の意味

まず、辞書で「引く手あまた」を調べてみましょう。

来てくれと誘う人が多いこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「引く手あまた」

「引く手」とは、自分の方に来てほしいと誘う人のこと。「引く手」という単語を単独で使うことはあまりないかもしれませんね。「あまた」は漢字では「数多」と書き、数が多いという意味です。だから「引く手あまた」「多くの人に誘われる」ということですね。

「引く手あまた」の例文

次に「引く手あまた」の例文を見てみましょう。

1.美人で気さくな彼女は、婚活パーティーでほとんどの男性から交際を申し込まれるほど引手あまただったが、結局誰とも交際には至らなかった。
2.日本では多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を重視しているが、DXを推進するプロジェクトマネージャーは不足しているので、どの業界でも引く手あまただ。
3.抹茶を使ったわが社の新しいスイーツは、アメリカの人気アーティストがSNSに取り上げたことで大人気となり、引く手あまたで海外からも問い合わせが殺到している。

1番目の例文は、異性からの人気が集中して、たくさんの男性から誘われるという意味です。2番目の例文は、その役割を果たせる人材が限られているので、いろいろな会社から来てほしいと誘われることですね。

「引く手あまた」は人が誘われるという意味もありますが、商品などに引き合いが多いことも表現します。3番目の例文は、商品の引き合いが多くなったという意味ですね。ビジネスシーンで使われる「引く手あまた」「需要が高い」「ニーズが高い」とも言い換えられますよ。

\次のページで「「引く手あまた」の類義語」を解説!/

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