この記事では「衣食足りて礼節を知る」について解説する。

端的に言えば「衣食足りて礼節を知る」の意味は「生活に余裕ができてこそ、礼儀や節度をわきまえるようになる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

高校で国語教師をしていた経歴を持つ現役ライターのhiyoriを呼んです。一緒に「衣食足りて礼節を知る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/hiyori

大学で近現代日本文学を専攻し、その知識を生かして国語教師として教壇に立っていた経歴を持つ。現在はライターとして様々な情報を発信している。難しい言葉もわかりやすい説明で解説していく。

「衣食足りて礼節を知る」の意味や語源・使い方まとめ

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みなさんは「衣食足りて礼節を知る」という故事成語を知っていますか?日常的に使用する言葉ではないので、この意味を知らない人も多いのではないでしょうか。しかし、この故事成語は生活を豊かにするために考えられた、私たちにとても関係のあることわざなのです。今回は、そんな「衣食足りて礼節を知る」を解説していきたいと思います。

では早速「衣食足りて礼節を知る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「衣食足りて礼節を知る」の意味は?

「衣食足りて礼節を知る」には、次のような意味があります。

人は、物質的に不自由がなくなって、初めて礼儀に心を向ける余裕が出てくる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「衣食足りて礼節を知る」とは「いしょくたりてれいせつをしる」と読みます。衣食とは衣服と食事、礼節とは礼儀作法とTPOに適した振る舞いをとる節度のことです。衣服や食事など、生きるために必要なことに余裕ができて初めて、礼儀や節度をわきまえた行動をとることができることを表しています。

「衣食足りて礼節を知る」の語源は?

次に「衣食足りて礼節を知る」の語源を確認しておきましょう。

これは、中国春秋時代に活躍した管仲(かんちゅう)という政治家の残した言葉をまとめた『管子』に由来し、「倉廩実つれば即ち栄辱を知り、衣食足りれば即ち栄辱を知る」という言葉から生まれた故事成語です。生活が楽になれば自然に道徳心も生じ、名誉を重んじて恥を知るようになることを表しています。

斉の桓公(かんこう)に仕えていた管仲は当時の政策として、民衆の道徳意識を高めるに、まずは生きるために必要な衣食を十分にして生活を豊かにすることが必要だと考えました。そうして生まれたのが、「倉廩実つれば即ち栄辱を知り、衣食足りれば即ち栄辱を知る」で、それが今もなお「衣食足りて礼節を知る」という故事成語として伝わっているのです。

\次のページで「「衣食足りて礼節を知る」の使い方・例文」を解説!/

「衣食足りて礼節を知る」の使い方・例文

この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.衣食足りて礼節を知ると言うように、昇進した彼は節度をわきまえた態度をとれるようになった。
2.衣食足りて礼節を知るだから、まずはしっかりとお金を貯蓄して生活の基盤を安定させよう。
3.衣食足りて礼節を知ると言うように、社員の意識の向上を図るには、まず給与や福利厚生などを見直すことが必要だ。

ここでは3つの例文を挙げました。

「衣食足りて礼節を知る」は、例文1のように生活に余裕があって豊かな人に対してほめ言葉として使われることが多いです。ただし、いくら生活に余裕があっても横柄な態度をとったり、マナーがなっていない人に対して使うべき言葉ではないので注意しましょう。

また、例文2のように他人に対しての配慮ができるようになるために自身の態度を戒める時に使われたり、例文3のように礼節などを指導する側の人間が方針を出す際に、その引き合いとして用いられることもあります。

「衣食足りて礼節を知る」の類義語は?違いは?

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「生活に余裕ができてこそ、礼儀や節度をわきまえるようになる」ことを表現するには、他にどんな言い回しがあるのでしょうか。

その1「憂いも辛いも食うての上」

「憂いも辛いも食うての上」は「ういもつらいもくうてのうえ」と読み、悲しい・辛いなどといった不満は、3度の食事をとって初めて言うことができることを意味しています。食べるものがなく、1日の食事がままらないといった生活が安定していない状況では、生きることに精いっぱいで不平不満を言うことは二の次になりますよね。人が自身の処遇や環境について、ああしたい、こうならいいのにと不平不満を言えるのは、生きるために必要なものがそろった恵まれた環境にいて初めてできることでしょう。

\次のページで「その2「恒産無くして恒心無し」」を解説!/

・憂いも辛いも食うての上だから、まずは就職して自分の生活を安定させるところから始めよう。

・今は親に養われているからあれこれ言えるが、社会人になったらそうは言っていられない。まさに憂いも辛いも食うての上だ。

その2「恒産無くして恒心無し」

「恒産無くして恒心無し」は、「こうさんなくしてこうしんなし」と読みます。「恒産」とは一定の財産や安定した職業、「恒心」とは人間として常に持つべき変わらない心・正しさを失わない心の意味し、一定の財産や職業がない人は定まった正しい心を持つことができないことをたとえています

これは、孟子が政治の基本として人々の生活の安定の必要性を説いた言葉が由来となってできた故事成語です。「衣食足りて礼節を知る」と意味や成り立ちが似ていますが、「恒産無くして恒心無し」には、学問を修養できた徳のある士だけは、一定の職業や収入が無くても道義心を持つことができると言われているので、意味に微妙に違いがあります。

・恒産無くして恒心無しと言うのだから、安心して暮らすために、まずは仕事を探さなくてはならない。

・恒産無くして恒心無しと言うように、昨今の景気の悪化は治安の悪化に繋がりかねないのだから早急に対策を考える必要がある。

「衣食足りて礼節を知る」の対義語は?

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「生活に余裕ができてこそ、礼儀や節度をわきまえるようになる」ことの反対の意味を表現するには、どんな言い回しがあるのでしょうか。

「人はパンのみにて生くる者に非ず」

この言葉は、『新約聖書‐マタイ伝第四章』のイエス・キリストの言葉からきており、人は食欲などの満足だけを唯一の目的として生きる者ではないということを表しています。言葉の通りに読むと「人はパンだけで生きることはできない」ですが、そうではなく、生きるために最低限必要なもの以外に精神的な支えやより所が必要であることを意味しているので間違えないように注意が必要です。

・人はパンのみにて生きる者に非ずというように、ただ必要なお金を稼ぐのではなく生活に張り合いの出る趣味を見つけることが必要だ。

・人はパンのみにて生きる者に非ずだから、信頼できる友達を大切にしましょう。

\次のページで「「衣食足りて礼節を知る」を使いこなそう」を解説!/

「衣食足りて礼節を知る」を使いこなそう

この記事では「衣食足りて礼節を知る」の意味・使い方・類語などを説明しました。

これは管仲の「倉廩実つれば即ち栄辱を知り、衣食足りれば即ち栄辱を知る」という言説が元になった故事成語で、衣服や食事など、生きることに必要なことに余裕ができて初めて礼儀や節度をわきまえた行動をとることができることをたとえです。

類義語には、悲しい・辛いなどといった不満は3度の食事をとって初めて言うことができることを意味する「憂いも辛いも食うての上」と、一定の財産や職業がない人は定まった正しい心を持つことができないことを意味する「恒産無くして恒心無し」があります。

複数の意味がなく覚えやすいので、理解さえしてしまえば簡単に日常生活でも使用することができる言葉です。私たち人間がよりよい生活を送るための前提条件ともいえる故事成語なので、ぜひ覚えておきましょう。

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国語言葉の意味

【故事成語】「衣食足りて礼節を知る」の意味や使い方は?例文や類語を文学部卒ライターがわかりやすく解説!

この記事では「衣食足りて礼節を知る」について解説する。

端的に言えば「衣食足りて礼節を知る」の意味は「生活に余裕ができてこそ、礼儀や節度をわきまえるようになる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

高校で国語教師をしていた経歴を持つ現役ライターのhiyoriを呼んです。一緒に「衣食足りて礼節を知る」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/hiyori

大学で近現代日本文学を専攻し、その知識を生かして国語教師として教壇に立っていた経歴を持つ。現在はライターとして様々な情報を発信している。難しい言葉もわかりやすい説明で解説していく。

「衣食足りて礼節を知る」の意味や語源・使い方まとめ

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みなさんは「衣食足りて礼節を知る」という故事成語を知っていますか?日常的に使用する言葉ではないので、この意味を知らない人も多いのではないでしょうか。しかし、この故事成語は生活を豊かにするために考えられた、私たちにとても関係のあることわざなのです。今回は、そんな「衣食足りて礼節を知る」を解説していきたいと思います。

では早速「衣食足りて礼節を知る」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「衣食足りて礼節を知る」の意味は?

「衣食足りて礼節を知る」には、次のような意味があります。

人は、物質的に不自由がなくなって、初めて礼儀に心を向ける余裕が出てくる。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「衣食足りて礼節を知る」とは「いしょくたりてれいせつをしる」と読みます。衣食とは衣服と食事、礼節とは礼儀作法とTPOに適した振る舞いをとる節度のことです。衣服や食事など、生きるために必要なことに余裕ができて初めて、礼儀や節度をわきまえた行動をとることができることを表しています。

「衣食足りて礼節を知る」の語源は?

次に「衣食足りて礼節を知る」の語源を確認しておきましょう。

これは、中国春秋時代に活躍した管仲(かんちゅう)という政治家の残した言葉をまとめた『管子』に由来し、「倉廩実つれば即ち栄辱を知り、衣食足りれば即ち栄辱を知る」という言葉から生まれた故事成語です。生活が楽になれば自然に道徳心も生じ、名誉を重んじて恥を知るようになることを表しています。

斉の桓公(かんこう)に仕えていた管仲は当時の政策として、民衆の道徳意識を高めるに、まずは生きるために必要な衣食を十分にして生活を豊かにすることが必要だと考えました。そうして生まれたのが、「倉廩実つれば即ち栄辱を知り、衣食足りれば即ち栄辱を知る」で、それが今もなお「衣食足りて礼節を知る」という故事成語として伝わっているのです。

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