この記事では「微力ながら」について解説する。

端的に言えば微力ながらの意味は「わずかな力しかありませんが」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「微力ながら」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「微力ながら」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「微力ながら」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「微力」の意味は?

残念ながら「微力ながら」の形では国語辞典に載っていません。そこで「微力」の意味を確認してみましょう。「微力」には、次のような意味があります。

1.力が弱く足りないこと。また、その力。
2.自分の力量をへりくだっていう語。「―ながら協力させていただきます」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「び‐りょく【微力】」

「微力」の意味を参考に、「微力ながら」の意味を確認していきましょう。

「微力ながら」は、「わずかな力しかありませんが」「期待通りの仕事はできないかもしれませんが」「能力は乏しいですが」などの意味を示す表現です。

ここで大切なのは、「微力ながら」は実際の自分の力量に関係なく自分の能力を低く謙遜して、相手への敬意を示す謙譲語だということですね。よって、少し遠慮じみたニュアンスが出ます。ビジネスの場面で、上司や取引先の相手に対して手助けをする際によく使われる表現です。

「微力」の語源は?

次に「微力」の語源を確認しておきましょう。

「微力」の詳細な語源は分かっていません。ただ、「微力」は鎌倉時代(詳細な年代不詳)の『東寺百合文書』に出てくるものが、文献での初出だと考えられています。

かつては、現代の「びりょく」という読みの他、「ひりょく」「びりき」という読み方もあったそうです。

\次のページで「「微力ながら」の使い方・例文」を解説!/

「微力ながら」の使い方・例文

「微力ながら」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.微力ながら私もお手伝いいたします。
2.今回のプロジェクトの達成に、私も微力ながら尽力いたします。
3.優華ちゃんの手術費の募金、微力ながら応援いたします。
4.入社2年目ですが、微力ながらに立てれば幸いです。
5.微力ながら精一杯取り組みたいと思います。

「微力ながら」は様々な言葉とセットで使われることが多いです。

例文1では「お手伝い」とセットで、「わずかな力ですが私もお手伝いいたします」という意味を、例文2では「尽力」とセットで、「わずかな力しかありませんが力を尽くします」という意味を表しています。

例文3は「応援」とセットですね。この場合は「わずかな額ですが募金にご協力します」という意味です。

例文4は「」とセットで、「わずかな力ですが役に立てれば…」という意味を、例文5は「精一杯」とセットで、「わずかな力ですが全力で」という意味を表します。

「微力ながら」は、自分の力を謙遜した表現であるため、履歴書など自分の力をアピールしなければならない場面で使うのは不適切です。また、明らかに自分のほうが力量が高い場合に「微力ながら」を使用するのは、相手を馬鹿にしているように捉えられ、失礼にあたることがあります。誰に対してどんな状況なのかをよく考えてから使用しましょう。

「微力ながら」の類義語は?違いは?

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「微力ながら」の類義語には「及ばずながら」「憚りながら」「僭越ながら」があります。意味や違いを見ていきましょう。

その1「及ばずながら」

及ばずながら」は「十分な力ではないが」という意味で、人助けをする時などに自分の力を謙遜して言う表現です。「微力ながら」と同じで実際の自分の力量に関係なく使います。

「及ばずながら」と「微力ながら」の違いは、「思わずながら」は主に人を助けるときや手伝う時のみに使用される点ですね。

意味は変わらないため、「及ばずながらお手伝いいたします」は「微力ながらお手伝いいたします」に言い換えが可能です。

\次のページで「その2「憚りながら」」を解説!/

その2「憚りながら」

憚りながら」は「はばかりながら」と読みます。「出過ぎた真似かもしれませんが」「遠慮すべきことかもしれませんが」「生意気かもしれませんが」といった意味で、目上の相手に対し意見を述べる時に使用される表現です。

「微力ながら」とは使用する場面が違いますが、どちらの表現も「~ながら」で終わり、「遠慮じみたニュアンス」があるということで類義語扱いになっています。

憚りながら私の意見をお聞きください」は、「出過ぎた真似かもしれませんが、私の意見をお聞きください」という意味です。

その3「僭越ながら」

僭越ながら」は「せんえつながら」と読みます。「自分の立場を越えて、出過ぎたことをいたしますが」という意味です。何か行動を始める前や意見を述べる前に申し訳ありませんがというニュアンスで使用します。

「僭越ながら」は必ず立場や身分が上の相手に対して使用する表現です。「微力ながら」とは使用する場面が違いますが、どちらの表現も「~ながら」で終わり、「遠慮じみたニュアンス」があるということで類義語扱いになっています。

僭越ながらスピーチをさせていただきます」は「私のような身分で恐縮ですが、スピーチをさせていただきます」という意味になりますね。

「微力ながら」の対義語は?

「微力ながら」の対義語はありません。「微力」の対義語は「強力」ですが、「強力ながら」という表現はなく、「私は十分な力があるので…」という意味の表現もありません。

「微力ながら」の英訳は?

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「微力ながら」にそのまま該当する英語表現はありません

ただ、「I will put the most efforts」「I don't know how much I can do, but」は「微力ながら」にやや近いニュアンスを表現できます。場面ごとに適する表現が変わるので注意してください。

それでは一緒に見ていきましょう。

その1「I will put the most efforts」

I will put the most efforts」は「最大限努力します」という意味の表現です。

ビジネス場面の英語では「自分に能力がない」という意味の表現を使うと、言葉の意味をそのまま解釈される恐れがあります。つまり、「わずかな力しかありませんが」といった意味の表現を使うと、「こいつは仕事ができないんだな」と思われてしまうということです。

そこで、ポジティブな言い方を探した場合、「微力ながら」のニュアンスに比較的近いのが「I will put the most efforts」となります。

例文を見てみましょう。

I will put the most efforts for the success of your project.

あなたのプロジェクトの成功に最大限の努力をします

\次のページで「その2「I don't know how much I can do, but」」を解説!/

その2「I don't know how much I can do, but」

I don't know how much I can do, but」」は「どれだけできるか分からないけど」という意味の英語表現です。ビジネスの場面ではなく日常会話で使われ「微力ながら」に比較的近いニュアンスを表す表現になります。

例文を見てみましょう。

I don't know how much I can do, I'll help you.

どれだけできるか分からないけど、手伝うよ。

「微力ながら」を使いこなそう

この記事では「微力ながら」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「微力ながら」は「わずかな力しかありませんが」などの意味を表し、自分の能力を低く謙遜して、相手への敬意を示す謙譲語です。基本的に、実際の自分の力量には関係なく使用できます。

ただ、遠慮じみたニュアンスの表現であるため、履歴書や採用面接などの自己PRでは使用を避けた方が良いでしょう。

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国語言葉の意味

「微力ながら」の意味や使い方は?例文や類語を日本語教師の大学院生がわかりやすく解説!

この記事では「微力ながら」について解説する。

端的に言えば微力ながらの意味は「わずかな力しかありませんが」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、ロシアで2年間日本語教師として働いた大学院生ライターの「むかいひろき」を呼んです。一緒に「微力ながら」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/むかいひろき

ロシアの大学で2年間日本語教師として働いた経験を持つ大学院生。その経験を武器に「言葉」について分かりやすく解説していく。

「微力ながら」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「微力ながら」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「微力」の意味は?

残念ながら「微力ながら」の形では国語辞典に載っていません。そこで「微力」の意味を確認してみましょう。「微力」には、次のような意味があります。

1.力が弱く足りないこと。また、その力。
2.自分の力量をへりくだっていう語。「―ながら協力させていただきます」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「び‐りょく【微力】」

「微力」の意味を参考に、「微力ながら」の意味を確認していきましょう。

「微力ながら」は、「わずかな力しかありませんが」「期待通りの仕事はできないかもしれませんが」「能力は乏しいですが」などの意味を示す表現です。

ここで大切なのは、「微力ながら」は実際の自分の力量に関係なく自分の能力を低く謙遜して、相手への敬意を示す謙譲語だということですね。よって、少し遠慮じみたニュアンスが出ます。ビジネスの場面で、上司や取引先の相手に対して手助けをする際によく使われる表現です。

「微力」の語源は?

次に「微力」の語源を確認しておきましょう。

「微力」の詳細な語源は分かっていません。ただ、「微力」は鎌倉時代(詳細な年代不詳)の『東寺百合文書』に出てくるものが、文献での初出だと考えられています。

かつては、現代の「びりょく」という読みの他、「ひりょく」「びりき」という読み方もあったそうです。

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