この記事では「一家言」について解説する。

端的に言えば一家言の意味は「その人の独自の主張」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「一家言」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「一家言」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一家言」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一家言」の意味は?

「一家言」には、次のような意味があります。

その人独自の意見、主張。また、ひとかどの見識のある意見、論説。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「いっか‐げん」

「一家言」は「いっかげん」と読みます。その人が持つ独自の意見のことを示す言葉です。「家」は家族の意味を示すものかと思われてしまいそうですが、そうではなく「専門家」などの「その道の人」という意味を指しています。

 

「一家言」の語源は?

次に「一家言」の語源を確認しておきましょう。「一家言」の語源は、古代中国にさかのぼります。

司馬遷の記した『史記』の序文に「一家の言と成す」と記した箇所がありますが、これは、今までの本文に書き洩らした事柄を補って、自分の意見を示した、という文脈で使われているものです。そのことから「一家言」という言葉が誕生したというわけですね。

日本の文学作品における「一家言」の利用は、江戸時代ごろから確認されています。

\次のページで「「一家言」の使い方・例文」を解説!/

「一家言」の使い方・例文

「一家言」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.私は、教育現場に携わった過去があるので教育については一家言ある。

2.毎日様々な種類の新聞を読んでいるため、社会問題に関しては、一家言持っている。

3.招かれた芸術関係のパーティで、一家言を展開したところ周囲に称賛された。

4.一家言とまではいかないが、医療機関について思うところはある。

「一家言」の「家」は「家族」という意味ではないということは先ほど述べました。「一家言」は格言や座右の銘といった、家庭の言葉ではありません。ある分野における、その人独自の見解について示すものです。そのため、「一家言」は一般論とは異なる、知識や経験を積んだ中で自分なりに構築した意見でなければいけません。そこが、「意見」などとは大きく異なる点と言えましょう。

また、「一家言」を持つのは個人であることが多いです。そのため、ビジネスにおいて自分の会社のルールを「一家言」としてしまうのは誤りなので、気を付けましょう。

「一家言」の類義語は?違いは?

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ここでは、「一家言」の類義語について見ていきましょう。それぞれの類義語と「一家言」とがどのような点で異なるかについても紹介していきます。

その1「持論」

「持論」は「かねて主張している自分の説。いつももっている意見。持説。また、自説を主張すること。」という意味を持つ言葉です。「自分の意見」という意味がある点で「一家言」と類似していると言うことができるでしょう。

「一家言」と「持論」とで異なる点は、「一家言」の方がより専門的であるという印象を与えることです。「一家言」の「家」は、その道を知る人という意味なので、より論理的で確実な裏付けが必要になります。

\次のページで「その2「見解」」を解説!/

その2「見解」

「見解」は、「ある物事についての価値判断や評価。意見。また、広く基本的なものの見方。けんげ。」という意味です。この言葉は、「独自の見解」という形で使うことがあり、その場合「一家言」と似た意味の言葉として使えます。

「一家言」と「見解」とで異なる点は、「見解」は「見解」のみの形だと一般論とさほど意味が変わらないというところです。また、「見解」は評価についても言及することができます。

その3「主義」

「主義」は「常に持っている考え方や行動の方針。」という意味の言葉です。考え方などを表す言葉として、「一家言」と類似していると言うことができるでしょう。

「一家言」と「主義」とで異なる点は、「主義」は「資本主義」「社会主義」というように様々な場面に対応した言葉を作れるのに対し、「一家言」はできないという点です。

「一家言」の対義語は?

ここでは、「一家言」の対義語について紹介していきます。

「一家言」は「独自の見解」という意味を持つ言葉です。そのため、反対の意味を持つ言葉としては、「全員の意見」という意味を持つ言葉が適切でしょう。

その1「総意」

「総意」は、「すべての人の意思。全体に共通している意見。」という意味を持つ言葉です。「一家言」がその人のみにおける意見を指すのに対し、「総意」は読んで字のごとく全体に共通する意見を示します。「総意」は「国民の総意」や「全校生徒の総意」など、大人数の範囲を限定して使うこともしばしばです。

その2「一般論」

「一般論」は「ある特定の事柄を対象とするのではなくて、全体に通じるものとしての論。」という意味を持つ言葉です。「一家言」がその人個人という、特定のものを対象としているのに対し「一般論」は世間全体に通じることを指します。

「一家言」の英訳は?

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ここでは、「一家言」の英訳について紹介していきます。

\次のページで「その1「personal view」」を解説!/

その1「personal view」

「personal」は「個人の」という意味です。「view」は「見解。意見。」という意味を持つため、「personal view」は「個人の意見」という意味で使われます。ただ、「一家言」で持っているような、一般論とは異なる独自性を持った意見という意味合いはやや弱めです。

その2「opinion」

「opinion」は、もちろん単なる「意見。見解。」という意味も持ちますが、「持論」という意味も持っています。これは「一家言」の英訳として使うことが可能です。

その3「something to say」

「something to say」は「何か言うこと」という意味です。この英語のみだと、「一家言」という意味には見えないようですが、「I have something to say.」とすると、「私は物申すことがある」という意味になり、「一家言」に類似したニュアンスで使うことができます。

「一家言」を使いこなそう

この記事では「一家言」の意味・使い方・類語などを説明しました。

様々な分野において「一家言」を持てるようになるには、ある程度の経験と知識が必要です。だからこそ、「一家言」を持てるということはすごいことなのですね。「一家言」という言葉の意味を身に着けるだけではなく、ぜひ何かしらの分野において「一家言」持てるようになれるといいですね。

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国語言葉の意味

「一家言」の意味や使い方は?例文や類語を文学院生がわかりやすく解説!

この記事では「一家言」について解説する。

端的に言えば一家言の意味は「その人の独自の主張」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「一家言」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「一家言」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「一家言」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「一家言」の意味は?

「一家言」には、次のような意味があります。

その人独自の意見、主張。また、ひとかどの見識のある意見、論説。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「いっか‐げん」

「一家言」は「いっかげん」と読みます。その人が持つ独自の意見のことを示す言葉です。「家」は家族の意味を示すものかと思われてしまいそうですが、そうではなく「専門家」などの「その道の人」という意味を指しています。

 

「一家言」の語源は?

次に「一家言」の語源を確認しておきましょう。「一家言」の語源は、古代中国にさかのぼります。

司馬遷の記した『史記』の序文に「一家の言と成す」と記した箇所がありますが、これは、今までの本文に書き洩らした事柄を補って、自分の意見を示した、という文脈で使われているものです。そのことから「一家言」という言葉が誕生したというわけですね。

日本の文学作品における「一家言」の利用は、江戸時代ごろから確認されています。

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