この記事では「居た堪れない」について解説する。

端的に言えば居た堪れないの意味は「とどまっていられない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は難関私大の文学部を卒業し、表現技法にも造詣が深い十木陽来を呼んです。一緒に「居た堪れない」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/十木陽来

難関私大の文学部卒ライター。現代文芸の表現技法を学びながら趣味で小説を書いたりもしてきた。今回は表情を表す言葉の一つである「はにかむ」の意味をわかりやすく丁寧に解説していく。

「居た堪れない」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「居た堪れない」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「居た堪れない」の意味は?

「居た堪れない」には、次のような意味があります。

それ以上その場所にとどまっていられない。また、それ以上がまんできない。いたたまらない。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「居た堪れない」

「居た堪れない」とは文字通りその場に居辛くなる・離れたくなることを意味します。辛いことがあってその場にそれ以上とどまれなかったり、恥ずかしくて一刻も早くその場を離れたくなったりなど、ネガティブな気持ちから派生する感情です。あくまでその場に居難いという感情のみを表すので、実際にその場から離れる行動に移したかどうかはこの言葉だけでは確定しません。

また、辞書には書かれていませんが「かわいそう」という意味で慣用的に使用されることもあります。これは誰かがかわいそうな目に遭っていると「これ以上見ていられない」「見るためにその場にとどまりたくない」という同情や共感が生まれるため、このような意味が派生したのでしょう。

そして「居た堪れない」は「居た堪ない」と言い換えることもできます。方言などではなく、どちらも正しい表記です。ではどうして二通りの言い方があるのでしょうか。この点は次の語源の解説にて詳しく説明します。

「居た堪れない」の語源は?

「居た堪れない」の由来は「居たまらない」が変化したものです。「居(る)」と「たまらない」が組み合わさった語ですが、どうして「た」が繰り返されるようになったかは明確にはわかっていません。おそらく強調などの言い回しが定着したのでしょう。ですので、本来は「居た堪ない」という形が正しい表記でした。

一方、「たまらない」は「我慢できない」という意味です。日本語では「○○できない」という意味で動詞を変化させる場合、「走れない」「止まれない」みたいに「○○ない」という形になります。これは「居た堪らない」という言葉が生まれた同時から一般的でした。よってこの認識に引きずられるような形で「居た堪ない」が「居た堪ない」に変化し、やがてそれが定着してどちらも正しい表記となったのです。

\次のページで「「居た堪れない」の使い方・例文」を解説!/

「居た堪れない」の使い方・例文

それではここで「居た堪れない」の使い方を例文を使って見ていきましょう。

1.屋外は気分が悪くなるほどの暑さで居た堪れない。
2.仕事の失敗を同僚たちの前で叱られ、居た堪れなくなった。
3.痛ましい事故のニュースをテレビで見て、居た堪れない気持ちになった。

例文1は「それ以上その場所にとどまっていられない」の意味で使われています。辛抱ならないほどの暑さでこれ以上この場にいたくないという気持ちが伝わるでしょう。ただし、あくまで気持ちを表す言葉なので実際に屋外から避難したかどうかは未確定です。

例文2は「それ以上がまんできない」という意味合いが強く出ています。同僚の前でミスを叱られることに対する面目なさや恥ずかしさ、居心地の悪さからこの状況を我慢できない気持ちが伝わってくるはずです。また、恥ずかしすぎて同僚たちの前にどとまりたくないと受け取ることも可能でしょう。

例文3は「かわいそう」という慣用的な表現が用いられています。これ以上見る・聞くに忍び難い他人の不幸に対する同情の気持ちを表す際に使われるのが通常です。自分自身の不幸に対して「居た堪れない」と表記してしまうと、例文2のような意味合いになってしまいます。

「居た堪れない」の類義語は?違いは?

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その場にとどまれないという意味での類義語には「身の置きどころがない」という慣用表現があります。

「身の置き所がない」

文字通りその身を置く所がないために「その場にいられない」という意味となります。恥ずかしかったり針のむしろにされたりなど、広くその場に居辛いことを表現する言葉です。ただし「居た堪れない」とは異なり、他人の影響によって居辛くなることを主に表します。暑さや吹雪といった自然現象によって居辛い時に、この言葉が用いられることは稀です。

\次のページで「「居た堪れない」の対義語は?」を解説!/

「居た堪れない」の対義語は?

「居た堪れない」に対応する明確な対義語はありませんが、「その場にとどまれない」という意味とは反対のイメージがあるのは「仁王立ち」でしょう。

「仁王立ち」

「仁王立ち」とは仁王像のように威風堂々と力強くその場に立っている様を表す言葉です。行く手を塞いだりする時に「仁王立ち」する場面が多いため、その場にとどまっていられないどころかその場にとどまる意思が強く表れています。また、堂々と立っている様子は恥ずかしさとは無縁と言えるでしょう。

「居た堪れない」の英訳は?

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「居た堪れない」を英語で書くと「be unable to stay」となります

「be unable to stay」

be unable to stay」を直訳すると「とどまることができない」となりますが、この書き方で「居た堪れない」と訳すことができます。また、強い感情によって居た堪れないことを表したい場合「too (形容詞) to stay」という書いてもいいでしょう。たとえば「too ashamed to stay」は「恥ずかしくて居た堪れない」という意味になります。

「居た堪れない」を使いこなそう

この記事では「居た堪れない」の意味・使い方・類語などを説明しました。「かわいそう」という意味が辞書に書かれておらず、あくまで慣用的な表現であることは意外だったかもしれません。皆さんはここまでの解説を読んでどのように感じたでしょうか。知らないことばかりで恥ずかしくなって「居た堪れなく」なりましたか? それとも、もっといろんな言葉の意味を知りたくなってこの場に「居た堪れなく」なりましたか? どちらの感情を抱いたにしても、更なる教養を深めるために、Study-Zにある他の記事もたくさん読んでみましょう!

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国語言葉の意味

「居た堪れない」の意味や使い方は?例文や類語を文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「居た堪れない」について解説する。

端的に言えば居た堪れないの意味は「とどまっていられない」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は難関私大の文学部を卒業し、表現技法にも造詣が深い十木陽来を呼んです。一緒に「居た堪れない」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/十木陽来

難関私大の文学部卒ライター。現代文芸の表現技法を学びながら趣味で小説を書いたりもしてきた。今回は表情を表す言葉の一つである「はにかむ」の意味をわかりやすく丁寧に解説していく。

「居た堪れない」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「居た堪れない」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「居た堪れない」の意味は?

「居た堪れない」には、次のような意味があります。

それ以上その場所にとどまっていられない。また、それ以上がまんできない。いたたまらない。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「居た堪れない」

「居た堪れない」とは文字通りその場に居辛くなる・離れたくなることを意味します。辛いことがあってその場にそれ以上とどまれなかったり、恥ずかしくて一刻も早くその場を離れたくなったりなど、ネガティブな気持ちから派生する感情です。あくまでその場に居難いという感情のみを表すので、実際にその場から離れる行動に移したかどうかはこの言葉だけでは確定しません。

また、辞書には書かれていませんが「かわいそう」という意味で慣用的に使用されることもあります。これは誰かがかわいそうな目に遭っていると「これ以上見ていられない」「見るためにその場にとどまりたくない」という同情や共感が生まれるため、このような意味が派生したのでしょう。

そして「居た堪れない」は「居た堪ない」と言い換えることもできます。方言などではなく、どちらも正しい表記です。ではどうして二通りの言い方があるのでしょうか。この点は次の語源の解説にて詳しく説明します。

「居た堪れない」の語源は?

「居た堪れない」の由来は「居たまらない」が変化したものです。「居(る)」と「たまらない」が組み合わさった語ですが、どうして「た」が繰り返されるようになったかは明確にはわかっていません。おそらく強調などの言い回しが定着したのでしょう。ですので、本来は「居た堪ない」という形が正しい表記でした。

一方、「たまらない」は「我慢できない」という意味です。日本語では「○○できない」という意味で動詞を変化させる場合、「走れない」「止まれない」みたいに「○○ない」という形になります。これは「居た堪らない」という言葉が生まれた同時から一般的でした。よってこの認識に引きずられるような形で「居た堪ない」が「居た堪ない」に変化し、やがてそれが定着してどちらも正しい表記となったのです。

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