この記事では「早起きは三文の徳(はやおきはさんもんのとく)」について解説する。
端的に言えば「早起きは三文の徳」の意味は「早く起きるといいことがある」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「早起きは三文の徳」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。
ライター/ヤザワナオコ
コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。
ライターとは別の仕事のために、週何度か4時起きの日があるらしい。早起きはできるようになったものの、昼寝してしまうことも多くメリットは感じられないとのこと。「早起きは三文の徳」について解説してもらう。
「早起きは三文の徳」には、次のような意味があります。
早起きをすると健康にもよく、また、そのほか何かとよいことがあるものであるということ。
出典:デジタル大辞泉(小学館)
「朝活」という言葉もあるように、早く起きて活動を開始する人も増えていますね。他方、「夜型だから朝は調子が出ない」という人も多いのではないでしょうか。そんな夜型タイプの人に改善を促すときにも使われるのが、この「早起きは三文の徳」ということわざ。
江戸時代から使われていて、古くは「朝起きは三文の徳」といったようですが、意味は変わっていません。この「三文」は、江戸時代の一を基準にするかに寄りますが、今の価値でいうと70円~300円ほど。「大金」とは思えない金額ですから、「わずかではあるがいいことがある」という意味合いです。
次に「早起きは三文の徳」の語源を確認しておきましょう。
語源とされるのは中国の古い書物にある「早起三朝當一工」という記述で、これは「3日間早起きすれば1人分の働きに相当する」という意味。
なぜ日本では「三文の徳」なのでしょうか。2つの説があり、1つは高知でかつて、「洪水対策で堤防を早朝から踏み固めると三文もらえた」というもの。もう一つは奈良由来節で「家の前で鹿が死んでいたら三文の罰金を取られる」というものです。
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「早起きは三文の徳」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。
・10分早く起きて体操するようにしたら身体の調子がよくなった。まさに早起きは三文の徳だ。
・早起きは三文の徳とはいうものの、仕事が忙しくて早寝も難しい今の状態ではかえってストレスを感じそうです。
早起きをするメリットはたくさんあります。通勤や通学までの時間的な余裕ができるので、落ち着いて行動することができるというのは分かりやすいですね。また、免疫力アップや肌の再生を活発にする、記憶力を向上させる、自律神経を整えるといった効果を挙げる人もいます。
健康面の効果はもちろん、仕事や勉強のパフォーマンスが上がるという声もあるので、気になる人は朝型への生活改善を検討してもいいですね。
朝は仕事が効率よく進められるので、夜の10倍の価値があるという意味で、「早起きは三文の徳」と同じく早起きのメリットを説いています。
違う点は、「夜の10倍」と価値を強調しているところでしょうか。「早起きは三文の徳」は「三文とわずかではあるがいいことがある」と控えめしたが、こちらにはそうしたニュアンスはありません。
ちなみに、夜の効率の悪さだけに着目した「夜なべは十両の損」「長寝は三百の損」という言葉もありますよ。
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一般に「あさのひとときはばんのふたときにあたる」と読みますが、一時を「いちじ」、二時を「にじ」と読む解説もあります。
こちらも「朝は効率よく動けるので、夜なら2時間かかることも1時間でこなせる」と、早起きのよさを表す言葉。「三文の徳」や「朝起き…」と異なり、作業時間に着目してメリットを表現しているのが特徴ですね。
「早起きは三文の徳」には、対義語はないと考えます。ことわざの解説本などでは「長寝は三百の損」を対義語として挙げているものもあるのですが、皆さんはどう考えますか。
確かにこの言葉は、「長く寝ると大損する」といっていますが、裏を返せば「だから早起きしろ」といいたいわけで、むしろ「早起きは三文の徳」と同義といえるのではないでしょうか。
また、ほかに睡眠の効用を表すことわざとしては「寝る子は育つ」や「果報は寝て待て」がありますが、早く起きるデメリットを言っているわけではないので対義語とまではいえないように思います。
「worm」はミミズなどの虫のことで、全体で「早起きした鳥は虫を捕まえる」の意味です。
日本のことわざは人間がお金を入手する例で早起きのメリットを表すのに対し、動物で表しているのが興味深いですね。同じく動物を使って、「The cow that's first up,gets the first of the dew.」という表現も。こちらは「一番に起きた牛は最初の朝露を味わう」という意味で、少量しかなく貴重な露を入手できることを表しています。
アメリカの政治家で科学者でもあったベンジャミン・フランクリンの言葉で、「早寝早起きすると健康で裕福、かつ賢くなれる」という意味です。
実際、早起きの効用としては美容や健康に良いとか、記憶力の向上、自律神経が整うなども挙げられることが。とはいえこのベンジャミン・フランクリンの言葉を検証するために行われた実験では、睡眠時間と所得、死亡率には相関関係は見られなかったという話もありますよ。
\次のページで「「早起きは三文の徳」を使いこなそう」を解説!/
この記事では「早起きは三文の徳」の意味・使い方・類語などを説明しました。早く起きて散歩に出るなど、リフレッシュして一日の活動を始められるのは気持ちよさそうですね。どうしても布団の誘惑に負けてしまいがちな筆者ですが、時には朝のゆとりの時間を楽しめるようになりたいものです。