この記事では「抵触」について解説する。

端的に言えば抵触の意味は「規則に触れる」ことですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元高校国語科教員のminを呼んです。一緒に「抵触」の意味や例文、使い方などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターを目指して勉強中。

「抵触」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「抵触」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「抵触」の意味は?

「抵触」には、次のような意味があります。

てい‐しょく【抵触/×牴触/×觝触】[名](スル)

1 触れること。衝突すること。転じて、物事が相互に矛盾すること。

2 ある行為が法律や規則に反すること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

抵触」はこのように、二つの意味を持っていますが、広く捉えると「ふれる」と解釈することができます。辞書の言葉と照らし合わせてみると「衝突する=物に触れる」「規則に反する=法に触れる」という形で言い換えられますね。

「抵触」の語源は?

より深く理解するために「抵触」の熟語の構造を確認しておきましょう。

まず「」という漢字から説明します。この漢字の部首を除いた部分は、「刃物を砥石に充てる様子」がもとになった象形文字だと言われ、そこから「手にあてる」という意味で使われるようになったのです。そのため、この「」は「ふれる、さわる」を意味する漢字として解釈されます。

次に「」です。こちらは「触(ふ)れる」という漢字そのものですが、理解を深めるために、この漢字の由来を見てみましょう。「触」という漢字は「角」と「虫」で構成されており、「虫」という字はもともと「蜀」という字を由来としています。

この「蜀」は桑の木に群がる虫をかたどった象形文字です。その様子から、「つづく、連なる」といった意味で用いられていました。そのため、「触」は「角につづいて連なっている」→「角に触れている」という状態が語源となり、後に「ふれる・さわる」という意味を持つようになったそうです。

つまり、「抵触」という漢字は、「触れる」という同義の漢字が並んで構成されている熟語であることがわかります。

\次のページで「「抵触」の使い方・例文」を解説!/

「抵触」の使い方・例文

では、「抵触」の具体的な使い方を例文を使ってみていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.新入社員の彼の行為は、就業規則に抵触する可能性がある。
2.イヤホンをして自転車に乗ることは、道路交通法に抵触する行為だ。
3.今の発言は、昨日あなたが言っていたことに抵触している。

一般的には「触れる」という意味から派生した「法律や規則に反する」「矛盾する」という意味で使用されることがほとんどです。

1や2のように、規則やルール、あるいは法律などとセットで使われる場合は「規則に反する」の意味で解釈する必要があります。それに対して2は規則の話題ではないため「規則に反する」という意味で捉えることができません。このような場合に「矛盾」という意味で解釈すると、意味が通るので覚えておきましょう。

「抵触」の類義語は?違いは?

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「法律や規則に反する」という意味での「抵触」は、「違反」という言葉で言い換えることが可能ですが、ここにも微妙なニュアンスの違いがありますので、注意しましょう。

「抵触」の類義語「違反」

違反」とは、「法令・協定・契約などに背くこと」という意味です。「今の行為はルール違反だ」など実際にルールを破った場合などに使用することができます。「抵触」の中の「ある行為が法律や規則に反すること」と同義です。しかし、2語の間には使用されるタイミングやニュアンスに微妙な違いがあります。

抵触には「ふれる」という意味がもとになっていましたね。「ルール」を境界線と捉えてイメージしてみてください。境界線をしっかりと超えた状態が「違反」であるのに対し、「抵触」は境界線に触れている状態だと言えます。

つまり「抵触」とは、「行為がそうした線引きに触れている」というニュアンスです。そのため、実際に「故意にルールを違反した」という場合よりも、「法律に抵触する可能性がある」など、「もうすぐ境界線に触れてしまいそう」のように「違反することを懸念する」という文脈で使用されることが多くなっています。

このように「抵触」と「違反」は、意味として置き換えることは可能ですが、使用される文脈に微妙な違いがありますので、覚えておきましょう。

\次のページで「「抵触」の対義語は?」を解説!/

「抵触」の対義語は?

抵触には「矛盾する」「法律や規則に反する」といった2つの意味がありました。ここでは、それぞれの意味と対になる表現を確認していきます。

その1「合理」

まずは「矛盾する」という意味の場合に対義語として挙げられるのが「合理」です。「合理」は「理にかなっている」という意味で、「つじつまが合わない」の矛盾と対になる表現であると言えます。

つまり、「矛盾する」という意味をもつ「抵触」の対義語にふさわしい言葉です。

その2「遵守」

次に、「法に触れる」の場合を見てみましょう。

逆の意味は「ルールや法律を守る」になりますよね。そんな意味を持つ言葉に「遵守」があります。「抵触」が「法に触れる」という意味を持つ場合、対義語としてピッタリな表現です。

「抵触」の英訳は?

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法やルールにふれる」の意味であれば、英語では様々な表現が存在します。

例えば「violate~」で「~に反する」と動詞的に表現することもできますし、「抵触していない」という意味では、例文のような表現も可能ですので、ぜひチェックしてみてください。

そして、「矛盾」という意味の場合ですが、「conflict」という単語で訳すことができます。下記の例文で確認してみましょう。

He violeted the regulations.
彼は規則に抵触した

I have done nothing against the law.
私は法律に抵触するようなことは何もしていない。

His view conflicted with the accepted theory.
彼の見解は定説と抵触するものであった。

\次のページで「「抵触」を使いこなそう」を解説!/

「抵触」を使いこなそう

この記事では「抵触」の意味・使い方・類語などを説明しました。

難しい言い回しに思える熟語ですが、漢字の成り立ちから考えると意味が捉えやすくなったと思います。このように、漢字にはその形や構成に意味があるため、調べてみるとさらなる語彙力の強化に繋がることでしょう。

また、「抵触」と「違反」に微妙な違いがあるように、類義語とのニュアンスの違いを理解しているかどうかも大切です。なんとなくの理解で終わらせるのではなく、一つ一つの言葉の意味に常に敏感でいられるようにしたいですね。

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「抵触」の意味や使い方は?例文や類語を元国語科教員がわかりやすく解説!

この記事では「抵触」について解説する。

端的に言えば抵触の意味は「規則に触れる」ことですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元高校国語科教員のminを呼んです。一緒に「抵触」の意味や例文、使い方などを見ていきます。

ライター/min

高等学校の国語科教員として、授業や受験対策、小論文の講座を3年間経験。主に現代文を担当し、言葉に関する指導を幅広く経験してきた。現在はWebライターを目指して勉強中。

「抵触」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「抵触」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「抵触」の意味は?

「抵触」には、次のような意味があります。

てい‐しょく【抵触/×牴触/×觝触】[名](スル)

1 触れること。衝突すること。転じて、物事が相互に矛盾すること。

2 ある行為が法律や規則に反すること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

抵触」はこのように、二つの意味を持っていますが、広く捉えると「ふれる」と解釈することができます。辞書の言葉と照らし合わせてみると「衝突する=物に触れる」「規則に反する=法に触れる」という形で言い換えられますね。

「抵触」の語源は?

より深く理解するために「抵触」の熟語の構造を確認しておきましょう。

まず「」という漢字から説明します。この漢字の部首を除いた部分は、「刃物を砥石に充てる様子」がもとになった象形文字だと言われ、そこから「手にあてる」という意味で使われるようになったのです。そのため、この「」は「ふれる、さわる」を意味する漢字として解釈されます。

次に「」です。こちらは「触(ふ)れる」という漢字そのものですが、理解を深めるために、この漢字の由来を見てみましょう。「触」という漢字は「角」と「虫」で構成されており、「虫」という字はもともと「蜀」という字を由来としています。

この「蜀」は桑の木に群がる虫をかたどった象形文字です。その様子から、「つづく、連なる」といった意味で用いられていました。そのため、「触」は「角につづいて連なっている」→「角に触れている」という状態が語源となり、後に「ふれる・さわる」という意味を持つようになったそうです。

つまり、「抵触」という漢字は、「触れる」という同義の漢字が並んで構成されている熟語であることがわかります。

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