この記事では「ほくそ笑む」について解説する。

端的に言えばほくそ笑むの意味は「うまくいったことに満足して、一人ひそかに笑う」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役の落語家でウェブライターの晋治を呼んです。一緒に「ほくそ笑む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/晋治

現役の落語家でwebライター。20代後半から落語家に入門し、40歳からは兼業ライターに。言葉を生業とする落語家とライターの経験を活かして、わかりやすく言葉の意味を解説する。

「ほくそ笑む」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「ほくそ笑む」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「ほくそ笑む」の意味は?

「ほくそ笑む」には、次のような意味があります。

ほくそ笑む
 
[動マ五(四)]《「ほくそ」は「北叟」か》うまくいったことに満足して、一人ひそかに笑う。「してやったりと―・む」

 

出典:goo辞書「ほくそ笑む」

「ほくそ笑む」は悪い企みがうまくいった時に出る笑顔で、ニヤニヤと笑う時代劇の悪代官をイメージをする方も多いと思います。しかし、それは「ほくそ笑む」の正しい認識ではありません。「ほくそ笑む」は必ずしも悪いことにだけ使われるものではないからです。「ほくそ笑む」の特徴は、物事が計画通りに、自分に都合の良いような結果になった時に、声を出さずに、一人でこっそり笑うこと。

私は落語家という商売をしていますのでお客様の前で話すときには、当然ですが事前にマクラやネタは準備していきます。しかし、残念ながら毎回、思い通りの結果が出るとは限りません。ウケるときもあればビックリするほどスベってしまうことも正直あります。落語でウケた時はお客様も客席で笑ってくれていますが、実は演者も高座の座布団の上で内心ほくそ笑んでいるのです。「やった!うまくいったぞ」と。やっぱり笑っていただけると嬉しいものですからね。笑顔ほど美しいものはないと気づかされました。

「ほくそ笑む」の語源は?

次に「ほくそ笑む」の語源・由来を確認しておきましょう。

ほくそ笑むの「ほくそ」は、「北叟(ほくそう)」のこと。北叟とは、古く中国で北方の砦に住むとされた老人塞翁(さいおう)のことで、北叟が喜ぶときにも憂うときにも少し笑ったという故事から、「ほくそう笑む」が転じて「ほくそ笑む」となったとのこと。室町時代の『源平盛衰記』にも「ほくそ笑む」「ほくそわらふ」の例が見られます。

北叟とは、「人間万事塞翁が馬」ということわざにも出てくる「塞翁」のこと。

\次のページで「「ほくそ笑む」の使い方・例文」を解説!/

「ほくそ笑む」の使い方・例文

「ほくそ笑む」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.「人の不幸は蜜の味」で、他人の失敗をほくそ笑んでいると内面の醜さが表情に表れるのか、年を重ねるほど不気味な人相になっていく。

2.不得意な英語の試験で予想していた問題が数多く出題され、「良い点数が取れる」と内心ほくそ笑んだ

3.お笑いコンクールの一次予選で観客の爆笑をとり、予選通過という思い通りの結果が出た。明日の本選も自分を信じて頑張ろう。占い師に手相を見てもらったら明日は物事が良好に進むらしい。占い結果を聞きながら、口元から自然と笑みがこぼれ、無意識にほくそ笑んでいた。

4.兄弟でも真逆の性格というパターンがある。兄は社交的で大声で笑う、明るい性格。弟は孤独を愛し、ほくそ笑むことが多く、根暗な性格。コンプレックスの塊の弟が一念発起して勉学に打ち込み、独学で難関資格の公認会計士試験に合格した。

1の例文は、人の失敗や不幸を喜んでいると人相が悪くなるという例文ですね。生き様がその人の顔を作ります。顔の形の美醜ではなく、生き様の美醜が大切ですね。

2の例文は、試験問題の予想が当たったという例文。例文、作り話と分かっていても、学生時代を思いだして嬉しい気持ちになりますね。

3の例文は、お笑いコンクールで予選を突破した芸人さんの気持ちを表した例文ですね。どのジャンルでも本選や本番は緊張するものですが、平常心で頑張りましょう。

4の例文は、コンプレックスの塊の弟が一念発起して自分を変える努力をして人生を切り開いていくという例文です。夢物語のようですが独学で勉学に打ち込み難関資格に合格された方はたくさんおられます。今日が一番若い日です。始めるのに遅すぎるということはない。目標に向かって頑張りましょう。

「ほくそ笑む」の類義語は?違いは?

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それでは、「ほくそ笑む」の類義語を確認してみましょう。

「にんまりする」「にやりとする」「にやにやする」

「にんまりする」「にやりとする」「にやにやする」に共通する意味は、「思い通りになってひとりで声を出さずに笑う様子」。

\次のページで「「ほくそ笑む」の対義語は?」を解説!/

・大金を手に入れて「にんまり」する。

・競馬でヤマが当たって「にやり」と笑った。

・彼は漫画を「にやにや」笑いながら読んでいる。

「にんまりする」「にやりとする」「にやにやする」の使い分けは、「にんまりする」は、悪だくみなどが上手くいき、満足気に一人で笑う様子。

「にやりとする」は、恥ずかしい、照れくさい、同感などの笑いにもいいます。短く一回だけの笑い方。

「にやにやする」は、何かを思い出したり、自分だけ分かっているが黙っていたりするようなときに、意味ありげな笑い顔を見せる様子。声は出さないが繰り返して行います。

「ほくそ笑む」の対義語は?

続いて、「ほくそ笑む」の対義語を見ていきましょう。

「愉快に大笑いする」

「tほくそ笑む」の正式な対義語は辞書にも載っていませんでした。しかし、「ほくそ笑む」の言葉の意味は「一人で密かに笑う」ことなので、対義語は「愉快に大笑いする」「機嫌よく笑う」などで間違いではないでしょう。

「ほくそ笑む」の英訳は?

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英語で「ほくそ笑む」はどのように表現するのでしょう。

「chuckle to oneself」

・chuckle to oneself. 一人で含み笑いする(ほくそ笑む)。

「chuckle」は、[笑い声を抑えようとして静かな]クスクス笑い、含み笑いという意味があります。laugh(笑う)の一種ですが、口は開かずに小さな声でクックッと独りで笑うことです。

\次のページで「「ほくそ笑む」を使いこなそう」を解説!/

1.chuckle along at the show .

ショーを見てクスクスと笑う。

2. I can`t stop chuckling over my flourishing business.

商売繁盛で内心笑いが止まりません。

「ほくそ笑む」を使いこなそう

この記事では「ほくそ笑む」の意味・使い方・類語などを説明しました。「ほくそ笑む」というのは周りからはあまり歓迎される笑い方ではないので気をつけた方が良さそうですね。「にやにやする」というのはどうしても陰気なイメージに繋がりますので、同じ笑うなら大声で大きな口を開けて笑いましょう。

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国語言葉の意味

「ほくそ笑む」の意味や使い方は?例文や類語を落語家Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「ほくそ笑む」について解説する。

端的に言えばほくそ笑むの意味は「うまくいったことに満足して、一人ひそかに笑う」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

現役の落語家でウェブライターの晋治を呼んです。一緒に「ほくそ笑む」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/晋治

現役の落語家でwebライター。20代後半から落語家に入門し、40歳からは兼業ライターに。言葉を生業とする落語家とライターの経験を活かして、わかりやすく言葉の意味を解説する。

「ほくそ笑む」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「ほくそ笑む」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「ほくそ笑む」の意味は?

「ほくそ笑む」には、次のような意味があります。

ほくそ笑む
 
[動マ五(四)]《「ほくそ」は「北叟」か》うまくいったことに満足して、一人ひそかに笑う。「してやったりと―・む」

 

出典:goo辞書「ほくそ笑む」

「ほくそ笑む」は悪い企みがうまくいった時に出る笑顔で、ニヤニヤと笑う時代劇の悪代官をイメージをする方も多いと思います。しかし、それは「ほくそ笑む」の正しい認識ではありません。「ほくそ笑む」は必ずしも悪いことにだけ使われるものではないからです。「ほくそ笑む」の特徴は、物事が計画通りに、自分に都合の良いような結果になった時に、声を出さずに、一人でこっそり笑うこと。

私は落語家という商売をしていますのでお客様の前で話すときには、当然ですが事前にマクラやネタは準備していきます。しかし、残念ながら毎回、思い通りの結果が出るとは限りません。ウケるときもあればビックリするほどスベってしまうことも正直あります。落語でウケた時はお客様も客席で笑ってくれていますが、実は演者も高座の座布団の上で内心ほくそ笑んでいるのです。「やった!うまくいったぞ」と。やっぱり笑っていただけると嬉しいものですからね。笑顔ほど美しいものはないと気づかされました。

「ほくそ笑む」の語源は?

次に「ほくそ笑む」の語源・由来を確認しておきましょう。

ほくそ笑むの「ほくそ」は、「北叟(ほくそう)」のこと。北叟とは、古く中国で北方の砦に住むとされた老人塞翁(さいおう)のことで、北叟が喜ぶときにも憂うときにも少し笑ったという故事から、「ほくそう笑む」が転じて「ほくそ笑む」となったとのこと。室町時代の『源平盛衰記』にも「ほくそ笑む」「ほくそわらふ」の例が見られます。

北叟とは、「人間万事塞翁が馬」ということわざにも出てくる「塞翁」のこと。

\次のページで「「ほくそ笑む」の使い方・例文」を解説!/

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