この記事では「六道輪廻」について解説する。

端的に言えば六道輪廻の意味は「迷いの世界をめぐり続けること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語検定一級を持ち、文学部に所属する現役大学生ライターである文学少女を呼んです。一緒に「六道輪廻」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/文学少女

文学部で学んでいる読書好きの現役大学生。大学のみならず、日々の読書や日本語検定・漢字検定などで学んだ知識を活かして、種々の言葉を丁寧に解説する。

「六道輪廻」の意味や語源・使い方まとめ

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漫画好きの人ならば、『NARUTO』や『境界のRINNE』などで聞き覚えがあるかもしれません。しかし、その背後にある複雑な仏教思想まで正確に把握している人はほとんどいないと思います。それでは早速、「六道輪廻」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「六道輪廻」の意味は?

「六道輪廻」には、次のような意味があります。この語の読み方は、「ろくどうりんね」又は「りくどうりんね」です。

仏語。衆生が六道に迷いの生死を繰り返して、車輪の巡るように停止することのないこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「六道輪廻」

上の引用は専門用語が多く分かりづらいため、その背景の思想を詳しく見ていきましょう。なお、「衆生」の解説は他記事でされていますので、詳細は割愛します。ここでは大まかに、「悟っていない生きとし生けるものすべて」と把握して下さい。

仏教では、生命の境地を十種類(地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人界・天界・声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界)に分類しています。その内、特に前者の六つの総称が「六道(六界や六趣とも)」です。我々は悟りを開かない限り、行為の結果(業:karman)に応じてこれらの世界で無限に転生を繰り返します。これが「輪廻(転生)」です。仏教はこれを苦痛とし、この輪から解脱することを目的としています。

近年では、こうした六道輪廻は生物学的な死後の話に限らないとする説も広まっているようです。これらの主張においては、六道輪廻は「生きているときの心の状態」と捉えられています。つまり、一日の中でも精神状態により六道内を行き来しているという考え方です。こうした観念的な見方についての是非の決着はついていませんが、説や議論の存在は把握しておきましょう。

「六道輪廻」の語源は?

次に「六道」の語源を確認しておきましょう。ここでは「六道」と「輪廻」に分け、それぞれの語源を見ていきます。どちらも仏教用語であり、仏典を記述した際のサンスクリット語由来です。

まず「六道」の基となったのはसद्गति(ṣaḍgati)という語。「ṣaḍ」が六、「gati」が運命や道を表します。現在では道の数を六ではなく五と主張する人もいますが、少なくとも「マハーヤーナ」などの原典においてはこの「ṣaḍgati」が採用されているようです。

一方「輪廻」は「संसार(saṃsāra)」に由来します。「輪廻」だけでなく「世界」などの意味も持つ語です。この概念は仏教以前から存在し、ウパニシャッドなどに記述が見られます。なお、上でも少し触れた仏教における輪廻転生の苦しみは、「दुःख(dukkha)」という語で記述されることが多いです。

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「六道輪廻」の使い方・例文

「六道輪廻」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は仏教の専門用語であるため、意味の幅はほとんどありません。「六道」「輪廻」それぞれは日常的に使われることもありますが、「六道輪廻」の形では宗教的な文脈に限られるでしょう。

1.この絵画は六道輪廻をテーマとしている。
2.六道輪廻の間にはともなう人もなかりけり

どちらの例文も、これまで紹介した通りの意味で使われています。1の六道輪廻をテーマとした絵画として、「六道輪廻図」というものが有名です。これは円形の中に六道それぞれが描かれ、さらにその外環には十二縁起、内環には三毒が描かれています。十二縁起とは人間の苦しみの原因を表し、三毒とは克服すべき三つの煩悩を表したものです。上部に掲載している画像はまさにこれですので、確認してみて下さい。

また、2は一遍という鎌倉時代の僧侶の言葉です。日本史を学んだ人であれば、時宗の開祖として知っているかもしれません。この言葉は、いくら現世で多くの財宝を持ち人に囲まれて暮らしても、死後は絶対的に孤独であることを示しています,一遍は、そうした絶対的な孤独に直面して初めて救いの道を見出すことができると説きました。

「六道輪廻」の類義語は?違いは?

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「六道輪廻」の類義語について見ていきましょう。なお、「六趣輪廻」は全くの同義語です。

「輪廻転生/流転輪廻」

どちらも仏教で使われた場合には、基本的に「六道輪廻」と同様の意味を持ちます。しかし、これらの語は六道に限らず輪廻思想を指す語であるため、必ずしも仏教に限りません。バラモン教やヒンドゥー教、ジャイナ教などでも輪廻の概念自体は共有されています。これらの教義では輪廻における主体として永遠不滅の我(アートマン)が想定されるのに対し、仏教ではそれを否定する(無我)点が大きな違いです。

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「六道輪廻」の対義語は?

「六道輪廻」の類義語について見ていきましょう。厳密な対義語とは言い難い面もありますが、対となる思想をいくつか挙げました。

その1「涅槃/解脱」

これらの語は仏教における究極の目標です。全ての煩悩を滅し、(六道)輪廻の輪から解放された状態のことを指します。カタカナ語の「ニルヴァーナ(निर्वाण:nirvāṇa)」を耳にしたことがある人もいるかもしれません。細かな定義は宗派によって異なりますが、上に述べた意味は共通しています。なお、釈迦の死(入滅)を指して(大般)涅槃の語が使われることもあるようです。

その2「四聖/悟界」

十界の内、迷いの世界である六道に対して、覚りの世界である声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界をまとめて「四聖」または「悟界」と呼びます。ただし、この四つは覚りまでの道筋という側面が強いです。声聞界は仏教を学ぶ状態
、縁覚界が内面が意識的に悟りになった状態、菩薩界は仏の使いとなった状態、仏界は悟りをそれぞれ表します。仏界以外はまだ迷いとしての要素があるため、正しく対義語なのは仏界のみともいえるでしょう。

「六道輪廻」の英訳は?

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最後に、「六道輪廻」の英訳について見ていきます。

「Reincarnation of the Six Realms」

「六道輪廻」に直接対応する定訳というものは存在しません。その上で「六道」「輪廻」に分けて考えると、まず「六道」は主に「Six Realms」と訳されます。「realm」は領域や範囲・部門などを意味する語です。また、「輪廻」には「reincarnation」「rebirth」「transmigration」「Samsara」などが対応します。これらを比較的自由に組み合わせることで、英訳が可能です。より単純に、「the six transmigration」などの形で表す場合もあります。

\次のページで「「六道輪廻」を使いこなそう」を解説!/

「六道輪廻」を使いこなそう

この記事では「六道輪廻」の意味・使い方・類語などを説明しました。六道などの概念は知らなかったとしても、輪廻思想自体は我々の暮らしに深く溶け込んでいるものです。現在でも、日本人の約半分が生まれ変わりを信じているとのデータもあります。難しい漢字が多くはじめは親しみにくい感じがするかもしれませんが、ここでしっかりその意味を確認しておきましょう。

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国語言葉の意味

「六道輪廻」の意味や使い方は?例文や類語を現役文学部生がわかりやすく解説!

この記事では「六道輪廻」について解説する。

端的に言えば六道輪廻の意味は「迷いの世界をめぐり続けること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語検定一級を持ち、文学部に所属する現役大学生ライターである文学少女を呼んです。一緒に「六道輪廻」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/文学少女

文学部で学んでいる読書好きの現役大学生。大学のみならず、日々の読書や日本語検定・漢字検定などで学んだ知識を活かして、種々の言葉を丁寧に解説する。

「六道輪廻」の意味や語源・使い方まとめ

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漫画好きの人ならば、『NARUTO』や『境界のRINNE』などで聞き覚えがあるかもしれません。しかし、その背後にある複雑な仏教思想まで正確に把握している人はほとんどいないと思います。それでは早速、「六道輪廻」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「六道輪廻」の意味は?

「六道輪廻」には、次のような意味があります。この語の読み方は、「ろくどうりんね」又は「りくどうりんね」です。

仏語。衆生が六道に迷いの生死を繰り返して、車輪の巡るように停止することのないこと。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「六道輪廻」

上の引用は専門用語が多く分かりづらいため、その背景の思想を詳しく見ていきましょう。なお、「衆生」の解説は他記事でされていますので、詳細は割愛します。ここでは大まかに、「悟っていない生きとし生けるものすべて」と把握して下さい。

仏教では、生命の境地を十種類(地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人界・天界・声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界)に分類しています。その内、特に前者の六つの総称が「六道(六界や六趣とも)」です。我々は悟りを開かない限り、行為の結果(業:karman)に応じてこれらの世界で無限に転生を繰り返します。これが「輪廻(転生)」です。仏教はこれを苦痛とし、この輪から解脱することを目的としています。

近年では、こうした六道輪廻は生物学的な死後の話に限らないとする説も広まっているようです。これらの主張においては、六道輪廻は「生きているときの心の状態」と捉えられています。つまり、一日の中でも精神状態により六道内を行き来しているという考え方です。こうした観念的な見方についての是非の決着はついていませんが、説や議論の存在は把握しておきましょう。

「六道輪廻」の語源は?

次に「六道」の語源を確認しておきましょう。ここでは「六道」と「輪廻」に分け、それぞれの語源を見ていきます。どちらも仏教用語であり、仏典を記述した際のサンスクリット語由来です。

まず「六道」の基となったのはसद्गति(ṣaḍgati)という語。「ṣaḍ」が六、「gati」が運命や道を表します。現在では道の数を六ではなく五と主張する人もいますが、少なくとも「マハーヤーナ」などの原典においてはこの「ṣaḍgati」が採用されているようです。

一方「輪廻」は「संसार(saṃsāra)」に由来します。「輪廻」だけでなく「世界」などの意味も持つ語です。この概念は仏教以前から存在し、ウパニシャッドなどに記述が見られます。なお、上でも少し触れた仏教における輪廻転生の苦しみは、「दुःख(dukkha)」という語で記述されることが多いです。

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