乾性遷移と湿性遷移は、遷移という自然現象の一種です。遷移について知っておくことは、生態系についての学習をする際に重要になる。それぞれの遷移の具体的な流れを見ながら、乾性遷移と湿性遷移の違いについても考えていこう。
大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。
ライター/小野塚ユウ
生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。
1.遷移とは?
今回のテーマは乾性遷移(かんせいせんい)と湿性遷移(しっせいせんい)ですね。これらはいずれも遷移という現象に含まれます。まずは遷移について学んでおきましょう。
image by iStockphoto
遷移(せんい)とは、ある地域の植生(しょくせい)が時間とともに変化していくことを言います。植生とは、その地域にまとまって生育している植物の集団を指す用語です。
このように書くと難しく聞こえますが、決してそんなことはありません。砂利ばかりの空き地に雑草が茂るようになったり、子どものころに見た草原が、何十年か経って雑木林に変わっていたり…そのような変化こそが遷移なのです。
高校の生物学(生物基礎)で、この遷移という現象を習います。なぜ遷移や植生に注目するかといえば、「その環境にどんな植物が生えているか」は「その環境にどんな動物が生育できるか」につながってくるからです。
植物が一切生えないような環境では、昆虫も、ミミズのような土壌生物も存在できません。すると、植物や昆虫などを餌とするネズミのような小動物も生息できず、その小動物を食べる大型動物も生存が困難になります。
植生の状態や遷移は、植物だけの問題ではなく、他のあらゆる生物の存在を左右する要因の一つになるのです。
\次のページで「一次遷移と二次遷移」を解説!/