この記事では「斟酌」について解説する。

端的に言えば斟酌の意味は「手加減すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語が好きで日本文学科を卒業したハルを呼んです。一緒に「斟酌」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハル

日本語が大好きで日本文学科を卒業。現在はアメリカで子育て中につきさらに日本語の奥深さを実感中。多くの人にそのよいところを紹介したいとの思いを込めて丁寧に解説する。

「斟酌」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 39029343

「斟酌」は「しんしゃく」と読みます。読み方もわからない。お酒を飲むことなの?などと思う方もあるかもしれません。実際はどんな意味を持った言葉なのでしょう。それでは早速「斟酌」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「斟酌」の意味は?

まず初めに「斟酌」の意味を辞書で確認してみましょう。「斟酌」には、次のような意味があります。

《水や酒をくみ分ける意から》

1.相手の事情や心情をくみとること。また、くみとって手加減すること。
2.あれこれ照らし合わせて取捨すること。
3.言動を控えめにすること。遠慮すること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「斟酌」

「斟酌」とは、相手の状況や事情を察し、相手の気持ちになって推し量らうことを指します。相手を推察し、程よく手加減をすることを指す言葉なのです。また、相手の状況を色々と照らし合わせ、良いものと悪いものを振り分けるという意味も持っています。程よく手加減するということから、気をつかうこと、控えめにすること、遠慮することという意味も持ち合わせる言葉となりました。

「斟酌」の語源は?

次に「斟酌」の語源を確認しておきましょう。

「斟酌」の「斟」は「分量を探りながら汲む」という意味を持っており、「酌」は「ひしゃくで汲み出す」という意味を持っています。どちらも「くむ」と読み、何かを「くむ」という同じ意味を持っているのです。この二文字を合わせて「杯の分量をはかって酒や水を酌みわける」という意味の言葉となりました。当初は「お酒などを酌み交わす」という意味ももっていたのですよ。お酒に関わる言葉かな?と思った方、間違いではありませんでしたね。

分量をはかってくみ分けるというところから、程よく行うという意味になり、相手の意をくんで物事を行うと転じ、さらに控えめにすること遠慮することという意味でも用いられるようになりました。

\次のページで「「斟酌」の使い方・例文」を解説!/

「斟酌」の使い方・例文

「斟酌」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.加害者はまだ若年であることを斟酌し、情状酌量する余地があるとの判決が下された。
2.その大手プロバイダは、市場の状況を斟酌してモバイルビジネスにも進出することを決定した。
3.あなたの本音を聞かせていただきたいので、ぜひ斟酌なしに発言してください。

「斟酌」は法律が関わる裁判や事故処理などの厳格な場面で用いることが多い言葉です。例文1のような使われ方は、ニュースなどで聞いたことがあるのではないでしょうか。「未成年であることに斟酌し、無罪とする、減刑する」などという表現もよく耳にしますね。相手の状況や心情、事情などをくみとって結果に対して手加減を加えるという意味なのです。

例文2は、周りのものと比べ合わせて良いところをとり、悪いところを捨てて適切な判断をするという意味で使われている例ですね。「双方の言い分を斟酌し」といったように使うこともできます。

例文3のように「斟酌なしに」とすると、遠慮せず、相手の気持ちを推し量って自分を抑えることをせず、自分を優先して行動することを意味になりますよ。裁判などの厳格な場面だけでなく、ビジネスや日常生活でも使うことができますね。

「斟酌」の類義語は?違いは?

image by PIXTA / 73524355

「斟酌」の類義語にはどんな言葉があるか見てみましょう。

その1「忖度」

忖度」は「そんたく」と読みます。2017年流行語大賞にもなりましたから、知っている方も多いでしょう。「忖度」には「他人の気持を推し量ること」という意味があります。「斟酌」にも「忖度」にも「相手の心情を推し量る」という意味があり、場合によっては置き換えて使うこともできる言葉です。

では違いは何でしょう。「斟酌」は「ほどよく取り計らうこと、手加減すること」という意味を含んでいますので、相手の事情をくみとった結果、手加減を加えたりなど具体的な行動を起こして相手に対する判断や状況を変えるという場合に使われます。一方「忖度」は、「相手の心情を推し量る」という意味しかありません。すなわち相手の気持ちをくみ取った結果変わるのは、自分自身の相手に対する言動なのです。

「忖度」が流行語大賞に選ばれた時には「空気を読む」というニュアンスで捉えられていましたが、実際には「推し量る」の範疇を出ない言葉なのでした。

\次のページで「その2「酌量」」を解説!/

その2「酌量」

「酌量」は「しゃくりょう」と読みます。「事情をくみとって、手加減すること」という意味がありますので、「斟酌」とよく似ていますね。「酌量」の方がより事情をくみ取って同情のある扱いをすることという意味の方が強いようです。

その3「勘定」

「勘定」は「かんじょう」と読みます。「勘定」というと「物の数量や金銭を数えること」という意味が思い浮かぶと思いますが、「いろいろ考え合わせて出た結論」という意味も持っているのですよ。「他から受ける作用や、先々生じるかもしれない事態などを、あらかじめ見積もっておくこと」という意味もありますから「推し量る」にも通ずるところがあります。とはいえ「計算する」というニュアンスの方が強いので、「斟酌」を言い換える言葉としてはやや不適切かもしれません。

「斟酌」の対義語は?

「斟酌」の反対の意味を持つ言葉を見てみましょう。

「無遠慮」

「斟酌」の対義語や反対語を調べても該当するものはほぼ出てきません。強いてあげるなら「無遠慮」ということになるでしょうか。「無遠慮」は「遠慮せずに図々しく振舞うさま、好き勝手にふるまうさま」という意味です。

他にも「思慮に欠ける(物事を注意深く考えないさま)」「独善的(他人のことを考慮せず自分ひとりの考えをよしとし貫こうとするさま)」「なおざり(いいかげんにしておくさま)」なども反対の意味をもつ言葉として挙げられるでしょう。

「斟酌」の英訳は?

image by PIXTA / 53909062

「斟酌」の英訳を見てみましょう。

「consideration」

「斟酌」を英語で表現するなら「consideration」となります。「consideration」は「よく考えること、熟慮、考慮」という意味ですが、「思いやり」も含んでいるのです。

「斟酌する」と表現したい場合には、「consider something」と表すことができます。

\次のページで「「斟酌」を使いこなそう」を解説!/

You don't need to give any consideration to your decision to change jobs.(転職を決める際に何も斟酌する必要はありません。)

You have to consider the fact that this is his first job.(これが彼にとって最初の就職であることを斟酌しなければならない。)

 

「斟酌」を使いこなそう

この記事では「斟酌」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「斟酌」は「相手の事情や心情をくみ取って手加減すること」という意味の言葉でしたね。「お酒を酌み交わす」の意味から変化してこのような意味になったわけですが、さらに変化を続けていて、「程よく取りはかる」「控えめにする」「遠慮する」と意味を広げていっています。もしかしたら、この先もっと変化していくのかもしれませんね。

少し堅苦しい場面で使われる言葉かもしれませんが、「忖度」との違いもふまえて、程よく使えるようになるといいですね。

" /> 「斟酌」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学科卒Webライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「斟酌」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学科卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「斟酌」について解説する。

端的に言えば斟酌の意味は「手加減すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語が好きで日本文学科を卒業したハルを呼んです。一緒に「斟酌」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ハル

日本語が大好きで日本文学科を卒業。現在はアメリカで子育て中につきさらに日本語の奥深さを実感中。多くの人にそのよいところを紹介したいとの思いを込めて丁寧に解説する。

「斟酌」の意味や語源・使い方まとめ

image by PIXTA / 39029343

「斟酌」は「しんしゃく」と読みます。読み方もわからない。お酒を飲むことなの?などと思う方もあるかもしれません。実際はどんな意味を持った言葉なのでしょう。それでは早速「斟酌」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「斟酌」の意味は?

まず初めに「斟酌」の意味を辞書で確認してみましょう。「斟酌」には、次のような意味があります。

《水や酒をくみ分ける意から》

1.相手の事情や心情をくみとること。また、くみとって手加減すること。
2.あれこれ照らし合わせて取捨すること。
3.言動を控えめにすること。遠慮すること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「斟酌」

「斟酌」とは、相手の状況や事情を察し、相手の気持ちになって推し量らうことを指します。相手を推察し、程よく手加減をすることを指す言葉なのです。また、相手の状況を色々と照らし合わせ、良いものと悪いものを振り分けるという意味も持っています。程よく手加減するということから、気をつかうこと、控えめにすること、遠慮することという意味も持ち合わせる言葉となりました。

「斟酌」の語源は?

次に「斟酌」の語源を確認しておきましょう。

「斟酌」の「斟」は「分量を探りながら汲む」という意味を持っており、「酌」は「ひしゃくで汲み出す」という意味を持っています。どちらも「くむ」と読み、何かを「くむ」という同じ意味を持っているのです。この二文字を合わせて「杯の分量をはかって酒や水を酌みわける」という意味の言葉となりました。当初は「お酒などを酌み交わす」という意味ももっていたのですよ。お酒に関わる言葉かな?と思った方、間違いではありませんでしたね。

分量をはかってくみ分けるというところから、程よく行うという意味になり、相手の意をくんで物事を行うと転じ、さらに控えめにすること遠慮することという意味でも用いられるようになりました。

\次のページで「「斟酌」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: