この記事では、「睥睨」について解説する。
「睥睨」…これはいったいなんて読むんだ?『睨む』って字が入っているから、あまりポジティブな意味の言葉ではなさそうです。それだけに読み方もわからない状態で『いまあそこの人に「睥睨」されてたよ』なんて言われたら、たまったもんじゃないぜ。どう対応すればいいかも判断できないからな。
今回は目つきの悪さが誤解を招くことの多いライターである、ぷーやんを呼んです。「睥睨」の意味と使い方について、そのするどい眼差しで得た知見を説明してもらおう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。細目で視力が悪いため目つきが悪いようで、普通にしていても『機嫌が悪そう』と周囲の人に避けられがち。

「睥睨」の意味とは?

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さっそく「睥睨」の意味をみていきたいところですが、読み方がわからなければ辞書引きもできませんよね。「睥睨」は「へいげい」と読みます。いったいどんな意味の言葉なのでしょうか?

「睥睨」を辞書でみてみよう!

「睥睨」を辞書で調べると、以下のように書かれています。

[名](スル)
1 にらみつけて勢いを示すこと。「天下を―する」
2 横目でじろりとにらみつけること。
「眼は限られたる暗き壁を―し」〈透谷・楚囚之詩〉
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「睥睨」

「睥睨」の『睥』の字には、「にらむ・流し目でみる」という意味があります。『睨』の字も、桜木先生の言う通り「にらむ」という意味ですね。したがって「睥睨」は同じ意味の漢字が重ねられて、意味合いが強調された言葉と言えそうです。一つのポイントは、上記辞書引き結果の意味1にある通り、『勢いを示す』というところ。ここから『相手を威圧する』というニュアンスも含みます。

例文で「睥睨」の使い方を確認!

辞書で意味を調べたあとは、例文で「睥睨」の使い方を確認してみましょう。

1.彼は学歴の高さを鼻にかけてほかの人を睥睨の眼差しでみることが多いが、実際は頭でっかちでセンスが悪いので碌に仕事ができない。
2.かくも立派な城郭に住んでいた殿様は、日々天下を睥睨して過ごしたのだろう。
3.理不尽に虐げられて育った人は、とかく周囲を睥睨し、センシティブな攻撃性を持っていることが多い。

「睥睨」は先述の通り、「にらむ」という意味の漢字を重ねてできている言葉ですが、ニュアンスとしてはただ単ににらみつけるだけにとどまりません。相手を格下にみたり自分を大きく見せようとしたりする、という姿勢を暗に含意します。

「睥睨」の類義語にはなにがある?

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ここでは「睥睨」の類義語を3つご紹介します。

幅を利かせる:権力などを振るうさま

いばりちらしてふんぞり返っているような人を指して、『幅を利かせている人』などと言いますね。ちなみに『幅を効かせる』は誤字ですので、ご注意を。

肩で風を切る:肩を高く上げて威張って歩く

「肩で風を切る」と聞くと、胸を張って肩幅を広げて上げ、ゆったりと闊歩している姿を思い浮かべます。肩幅を広げている様子は、先に類義語として挙げた「幅を利かせる」と、物理的に通ずる姿を想像するのは筆者だけではないでしょう。余計なスペースを取っていそうで、すこし邪魔ですね。

尊大に構える:いかにも偉そうに振る舞う

「尊大」は、人を見下して偉そうにしている様子を表した言葉です。

「睥睨」に対義語はある?

「睥睨」と正確に対義的な言葉はありません。この記事では「睥睨」の持つ『にらむ』と『威張る』という意味の、それぞれに対義する言葉を組み合わせて、「睥睨」の対義表現をご提案します。

\次のページで「微笑んで遜(へりくだ)る」を解説!/

微笑んで遜(へりくだ)る

『にらむ』と『威張る』の対義語をそれぞれ、「微笑む」「遜る」としてつなげてみました。一見下手に出ているようですが、微笑の裏では虎視眈々と相手を出し抜く方法を考えている…とひねくれものの筆者は想像してしまいます。

目を細めて労(ねぎら)う

「目を細める」とは比喩的な表現で、愛しいものを目にして優しく笑うことを示します。長渕剛の名曲『乾杯』の歌詞にもありますね。一方「労う」は、感謝の気持ちを表現すること。一つ注意点として、「労う」は立場が同等か下の人に対して使う表現です。したがって『目を細めて労う』は「睥睨」と対象が同じ(下の立場の人)ですが、感情が正反対ということですね。

「睥睨」は英語ではなんという?

国際化により日本国内でも外国の方の姿を見ることが当たり前の昨今においては、言葉の意味を調べたら英語訳も気になってくるところです。「睥睨」は英語でどのように表現されるのでしょうか。

look contemptuously at:軽蔑の目で見る

「contemptuously」は「人をばかにする」という意味の単語。したがってこの表現を和訳すると、「軽蔑の目で見る」となり、「睥睨」とほぼ同義になります。

glare at:にらみつける

「glare」は「ギラギラと光る」という意味と、「にらみつける」という意味のある単語。「威張る」というよりも「怒りを表す」というニュアンスの表現方法です。

「睥睨」と臆病は表裏一体?

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にらみを利かせて威勢を誇示する「睥睨」。『余計な争いを発生させずに場をとりなす』などの目的のため、強引ながら1つの方法として理性的に「睥睨」を使う分には大きな問題はないでしょう。しかし「睥睨」が自分を大きく見せるための行為として、慢性化しているようなら要注意です。この記事の最後に、過度な「睥睨」について考察してみましょう。

\次のページで「恐怖に対するヒトの『防衛機制』」を解説!/

恐怖に対するヒトの『防衛機制』

人は受け入れたくない状況や危険にさらされたとき、適応しようと無意識のうちにいろいろなことを試みます。こころを守るためのこうした心理的なはたらきが、『防衛機制』と呼ばれるものです。無意識に「睥睨」するような場合は、以下のようなこころの動きが考えられます。

・○○するべき(なのに誰もしてくれない)。
・認めたくない自分の悪い部分を相手に見出す。
・倫理的/強制的に抑圧していた欲望が限界を超えてあふれる。

これらは心理学で、『認知のゆがみ』『投影』『行動化』と呼ばれるものです。これらは不安や恐怖の感情を駆り立てるでしょう。そしてそれらが怒りをともなって言動に現れるとき、「睥睨」という形をとることがあるのではないでしょうか。

「睥睨」は『弱い犬ほどよく吠える』と同義?

欲求不満が人を攻撃的にすることは、よく言われていることですね。上記の認知のゆがみや投影が欲求不満の源泉となる場合、相手を攻撃したところで自分の中にある根本的な原因は解決しません。自分と向き合わなければ、いつでもどこでも攻撃的になることをやめられません。そしてそういう人は、周囲を「睥睨」し続けることになってしまうでしょう。

まさに『弱い犬ほどよく吠える』状態のできあがり、というわけです。

「睥睨」する前に自分と向き合うことが大切

この記事では「睥睨」について、様々な角度から言葉の意味を解説しました。

一昔前に、『キレる若者が増えている』などと話題になっていました。昨今は『アンガーマネジメント』など、怒りのコントロール方法が注目されています。そうした対症療法的な方法論に加えて、自分を見つめ直す機会を作ることが余計な「睥睨」を減らすために必要ではないでしょうか。

この記事が「睥睨」の理解と、穏やかな生活を得るために役立ちましたら幸いです。

英語の勉強には洋楽の和訳サイトもおすすめです。
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国語言葉の意味

「睥睨」の眼差しとはどんな視線?読み方・意味・例文・類語・英語訳をwebライターがわかりやすく解説!

この記事では、「睥睨」について解説する。
「睥睨」…これはいったいなんて読むんだ?『睨む』って字が入っているから、あまりポジティブな意味の言葉ではなさそうです。それだけに読み方もわからない状態で『いまあそこの人に「睥睨」されてたよ』なんて言われたら、たまったもんじゃないぜ。どう対応すればいいかも判断できないからな。
今回は目つきの悪さが誤解を招くことの多いライターである、ぷーやんを呼んです。「睥睨」の意味と使い方について、そのするどい眼差しで得た知見を説明してもらおう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。細目で視力が悪いため目つきが悪いようで、普通にしていても『機嫌が悪そう』と周囲の人に避けられがち。

「睥睨」の意味とは?

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さっそく「睥睨」の意味をみていきたいところですが、読み方がわからなければ辞書引きもできませんよね。「睥睨」は「へいげい」と読みます。いったいどんな意味の言葉なのでしょうか?

「睥睨」を辞書でみてみよう!

「睥睨」を辞書で調べると、以下のように書かれています。

[名](スル)
1 にらみつけて勢いを示すこと。「天下を―する」
2 横目でじろりとにらみつけること。
「眼は限られたる暗き壁を―し」〈透谷・楚囚之詩〉
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「睥睨」

「睥睨」の『睥』の字には、「にらむ・流し目でみる」という意味があります。『睨』の字も、桜木先生の言う通り「にらむ」という意味ですね。したがって「睥睨」は同じ意味の漢字が重ねられて、意味合いが強調された言葉と言えそうです。一つのポイントは、上記辞書引き結果の意味1にある通り、『勢いを示す』というところ。ここから『相手を威圧する』というニュアンスも含みます。

例文で「睥睨」の使い方を確認!

辞書で意味を調べたあとは、例文で「睥睨」の使い方を確認してみましょう。

1.彼は学歴の高さを鼻にかけてほかの人を睥睨の眼差しでみることが多いが、実際は頭でっかちでセンスが悪いので碌に仕事ができない。
2.かくも立派な城郭に住んでいた殿様は、日々天下を睥睨して過ごしたのだろう。
3.理不尽に虐げられて育った人は、とかく周囲を睥睨し、センシティブな攻撃性を持っていることが多い。

「睥睨」は先述の通り、「にらむ」という意味の漢字を重ねてできている言葉ですが、ニュアンスとしてはただ単ににらみつけるだけにとどまりません。相手を格下にみたり自分を大きく見せようとしたりする、という姿勢を暗に含意します。

「睥睨」の類義語にはなにがある?

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ここでは「睥睨」の類義語を3つご紹介します。

幅を利かせる:権力などを振るうさま

いばりちらしてふんぞり返っているような人を指して、『幅を利かせている人』などと言いますね。ちなみに『幅を効かせる』は誤字ですので、ご注意を。

肩で風を切る:肩を高く上げて威張って歩く

「肩で風を切る」と聞くと、胸を張って肩幅を広げて上げ、ゆったりと闊歩している姿を思い浮かべます。肩幅を広げている様子は、先に類義語として挙げた「幅を利かせる」と、物理的に通ずる姿を想像するのは筆者だけではないでしょう。余計なスペースを取っていそうで、すこし邪魔ですね。

尊大に構える:いかにも偉そうに振る舞う

「尊大」は、人を見下して偉そうにしている様子を表した言葉です。

「睥睨」に対義語はある?

「睥睨」と正確に対義的な言葉はありません。この記事では「睥睨」の持つ『にらむ』と『威張る』という意味の、それぞれに対義する言葉を組み合わせて、「睥睨」の対義表現をご提案します。

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