この記事では「御中様」について解説する。
端的に言えば「御中様」の意味は「郵便物の宛先が団体・会社などの場合、宛名の下につける敬称」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「御中様」の意味や例文、類語などを見ていきます。

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仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「御中様」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「御中様」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「御中様」の意味は?

「御中様」には、次のような意味があります。

1 (「お腹」とも書く)腹を丁寧にいう語。もと女性語。「お中が痛い」「お中がすいた」

2 飯・食事をいう女房詞。

3 綿(わた)・真綿をいう女房詞。

4 室町時代、武家の奥向きに仕えた女中の役名。中﨟(ちゅうろう)。

郵便物などで、個人名でなく、官庁・会社・団体などの宛名の下に書き添える語。

出典:コトバンク

「御中」は会社・官庁・団体など、個人宛でない郵便物や手紙の宛名の下に添える脇付けの語であり、書簡用語です。また「御中」という語そのものは、既に室町時代の往来物に「人々御中」という形でその例が見られますよ。

「御中様」の語源は?

次に「御中様」の語源を確認しておきましょう。

まずは、接頭語「御」の漢字の成り立ちについて解説します。「御」は道を行く意味を表す文字と、馬を養う意味の音を示す文字とを合わせた字。飼いならされた馬が道を行く意味を表しています。また「御」の古い形は「おほみ」で、これから「おほむ」を経て「おん」になりました

「おん」があらわれるのは平安末期ごろからで、それ以前の「御」の字の訓は「おん」ではなく「おほむ」です。鎌倉時代にはこの「おん」が盛んに用いられるようになりましたが、室町時代初期頃からはさらに簡略な形「お」が次第に優勢になり、「おん」は使用範囲が狭まって主として改まった場合に用いられるようになりました。このことから「おん」は「お」より丁重な趣の言い方として意識されていたようです。

\次のページで「「御中様」の使い方・例文」を解説!/

「御中様」の使い方・例文

「御中様」の使い方について例文を挙げて解説していきます。この言葉は、たとえば以下のように用いられますよ。

1.メールの冒頭には「株式会社○○工業 販売部御中」などと書きましょう。

2.宛名には「JP株式会社 営業本部 サポートチーム御中」と書いてあった。

3.「株式会社ミラクル管理本部人事部 行」の「行」を二重線で消し「御中」と書き添えた。

「御中様」の「様」は人を表す言葉につけ、その人を高めていう尊敬の接尾語です。話し言葉や書き言葉にも用います。また「さま」には古くから色々な用法がありますよ。その一つとして方角・方面を表す用法があり、この用法の「さま」が室町時代ごろから尊敬の接尾語に転用されました。高めるべき人を直接いうのをはばかってそのいる方向という意で「さま」を付けていうようになったものと推測されます。当初から「さま」は「殿」より丁重な表現でした。

そして「さま」はその後、江戸時代、一部で二人称あるいは三人称の代名詞としても使われたことがありますが、現代ではこの用法はありません。また現代では、人を表す言葉に広く付ける接尾語としては「さま」と、これから転じた「さん」がありますが、「さま」の方がはるかに敬意が高いです。つまり、付く語句も使われる頻度も「さま」は「さん」に比べれば少ないと言えるでしょう。

「御中様」の類義語は?違いは?

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「御中様」と似たような意味をもつ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「御許」

「御許」は「おんもと」と読みます。「御許」は手紙の脇付けに書く書簡用語。もともとは貴人のおそば近くの意でしたが、明治時代あたりから書簡に用いられて形式化しました。相手に直接手渡すことを避け、相手のおそば近くに置くことの意から敬意が生じました。「おんもとに」もしくは「おんもとへ」の形で用いることが多いです。「御中」との違いは主に女性が用いる書簡用語だという点でしょう。

\次のページで「その2「各位」」を解説!/

その2「各位」

「各位」は「かくい」と読みます。「各位」は複数の人たちの集団の中のそれぞれ一人一人を指す敬称。「皆様方」「おのおのがた」「諸氏」「お客様各位」など、改まった口上や書簡などで用いられます。「御中」との違いは宛名には用いられないという点です。

「御中様」の対義語は?

「御中様」と反対の意味を持つ言葉をご紹介します。さっそく見ていきましょう。

その1「方々」

「方々」は「かたがた」と読みます。「方々」は「人々」の敬称ですよ。大人数の人を前にして呼びかけるような場合には、相手方を指す対称の代名詞になります。本来は複数を表しますが、中世・近世ごろは単数にも用いられましたよ。しかし現代では対称の単独用法はあまり用いられていません。

その2「学兄」

「学兄」は「がっけい」と読みます。学友に対する敬称であり学問上の先輩の意味がありますよ。男同士が手紙などで相手の宛名の下につけて用いるほか、単独でも使われますが、文章語として用いられるだけではなし言葉では使われません。注意しましょう。

「御中様」の英訳は?

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「御中様」の英訳にはどのようなものがあるのでしょうか。英語で「御中様」と言い表す時の例をさっそく見ていきましょう。

「messrs」

「messrs」はMr.の複数形で主に書き言葉で用いる名詞です。「諸君、各位、御中」という意味があり、主に人名のついた社名の前に用いられることが多いです。「Messrs. kurihara & Co」で「クリハラ商会御中」となります。

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「御中様」を使いこなそう

この記事では「御中様」の意味・使い方・類語などを説明しました。

ここではまとめとして「御中」に付随した「様」が使われる代表的な場合を整理して解説します。まず「様」は改まった公的な場面で、目上やその席の中心人物などに付けますよ。そして私的な場面でも、目上などに対して改まって話す場合、その相手や相手方の人物に対して「様」を付けますね。

また、手紙の場合はさしたる目上に対するものでなくとも、本文中で相手や相手方の人物、あるいは高めるべき第三者に対して「様」を付けることが多いです。手紙やハガキの宛名に関しては目上にはもちろん、同輩や目下に対しても「様」を付ける習慣がありますね。しかし恩師に対しては「様」よりも「先生」の方が望ましいでしょう。

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国語言葉の意味

「御中様」の意味や使い方は?例文や類語をプロダクション編集者がわかりやすく解説!

この記事では「御中様」について解説する。
端的に言えば「御中様」の意味は「郵便物の宛先が団体・会社などの場合、宛名の下につける敬称」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
ライターのflickerを呼んです。一緒に「御中様」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/flicker

仕事柄、言葉からひらめきをもらうことがよくある。「なるほど。そういうことか!」と言葉への知識・関心がさらに一層広がるように、さらに編プロでの編集経験を活かし理解しやすい精確な解説を心掛ける。

「御中様」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「御中様」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「御中様」の意味は?

「御中様」には、次のような意味があります。

1 (「お腹」とも書く)腹を丁寧にいう語。もと女性語。「お中が痛い」「お中がすいた」

2 飯・食事をいう女房詞。

3 綿(わた)・真綿をいう女房詞。

4 室町時代、武家の奥向きに仕えた女中の役名。中﨟(ちゅうろう)。

郵便物などで、個人名でなく、官庁・会社・団体などの宛名の下に書き添える語。

出典:コトバンク

「御中」は会社・官庁・団体など、個人宛でない郵便物や手紙の宛名の下に添える脇付けの語であり、書簡用語です。また「御中」という語そのものは、既に室町時代の往来物に「人々御中」という形でその例が見られますよ。

「御中様」の語源は?

次に「御中様」の語源を確認しておきましょう。

まずは、接頭語「御」の漢字の成り立ちについて解説します。「御」は道を行く意味を表す文字と、馬を養う意味の音を示す文字とを合わせた字。飼いならされた馬が道を行く意味を表しています。また「御」の古い形は「おほみ」で、これから「おほむ」を経て「おん」になりました

「おん」があらわれるのは平安末期ごろからで、それ以前の「御」の字の訓は「おん」ではなく「おほむ」です。鎌倉時代にはこの「おん」が盛んに用いられるようになりましたが、室町時代初期頃からはさらに簡略な形「お」が次第に優勢になり、「おん」は使用範囲が狭まって主として改まった場合に用いられるようになりました。このことから「おん」は「お」より丁重な趣の言い方として意識されていたようです。

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