この記事では「がむしゃら」の意味や使い方・類義語などについて解説する。

「がむしゃら」は漢字で書くと「我武者羅」です。「武者」という言葉が入っているため、武士と関係のある言葉なのかと考えている人もいるでしょう。「強気」や「血気盛ん」なイメージにも合っている気がするな。しかし調べていくと、もっと有力な語源となる説が存在することがわかったぞ。

元塾講師で普段から気になった言葉の意味については必ず調べるというカワナミを呼んです。一緒に詳しく見ていこう。

ライター/カワナミ

国語を愛する元塾講師。少しでも意味の分からない言葉は普段から調べるクセを持っている。モットーは「読む人にわかりやすく伝えること」。

「がむしゃら」の意味と語源

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「がむしゃら」は漢字で「我武者羅」と書きます。まずは辞書を使って正しい意味を見ていきましょう。

「がむしゃら」の意味は「向こう見ずなこと」

一つの目的に向かい、血気にはやって向こう見ずになること。また、他のことはまったく無視して、ひたすらあることをすること。

出典:四字熟語辞典(学研)「我武者羅」

「がむしゃら」目的に対してひたすらに突き進む様子や、そういった人のことです。目的以外のことを無視し、勢いに任せて行動します。強引でやや乱暴なイメージですね。本来はこうしたネガティブなイメージのある言葉ですが、現在では「必死に努力する」「根性がある」「一生懸命に行う」などポジティブなイメージで使われる場面が多くあります。

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「がむしゃら」の語源・武士に関係ある?

「がむしゃら」同じ意味を持つ「がむしゃ」という言葉に接尾語の「ら」をつけて出来ました。漢字の「羅」に意味はなく、当て字です。明確にコレと決まった語源はありません。ただ、有力な説が4つあります。

1「我武者」という字から「我の強いわがままな武士」を由来とする説
2「我」に「むしゃくしゃする」の「むしゃ」を由来とする説
3「我無性」(がむしょう)が転じた説
4「我貪」(がむさぼり)が転じた説

1は「がむしゃら」が武士に関係するという説です。しかし、江戸時代の文献には「がむしゃ者」と平仮名を用いて書かれているため「武者」は武士ではなく後から当てた字である可能性があります。

2は「むしゃくしゃする」ことから、向こう見ずな行動を取ると考えれば有りそうな説です。

3の「我無性」(がむしょう)には、「我」と「我を忘れる」という意味の「無性」がくっついています。しかし、「我」が重複するため、今一つの説です。

4「我貪」(がむさぼり)が転じたとする説で、この説が最も有力と言われています。「貪る」は「飽きることなく欲しいものを求める」という意味です。勢い任せの勝手な振る舞いは「がむしゃら」とも合っていますね。

「がむしゃら」の使い方・例文

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「がむしゃら」ポジティブにもネガティブにも使える言葉です。「がむしゃらに突き進む」「がむしゃらに抵抗する」「がむしゃらに頑張る」などと使います。

「がむしゃら」の例文

では、実際に例文を見ていきましょう。

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1最後にあと1点入れるために、がむしゃらにボールを追いかけた。
2仕事でとにかく結果を残そうと、がむしゃらに働いた。
3一生懸命なことは素晴らしいけれど、彼はそのがむしゃらな性格ゆえに人の話を聞かない。

1の「がむしゃら」は、ゴールを決めるために「なりふり構わずに」ボールを追いかけた、という意味です。
2は、仕事で結果を出すために「必死に努力した」という意味で使用しています。
3は、「強引である」という意味です。

1、2はポジティブに、3はネガティブなニュアンスになります。

「がむしゃら」の類義語

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「がむしゃら」の類義語をいくつかご紹介していきます。共通した意味としては、どれも「周囲や後先のことを気にせず、ある物事に熱中している」という点です。特に「無我夢中」「無鉄砲」については「がむしゃら」との細かなニュアンスの違いについても解説していますので、ぜひご覧ください。

「遮二無二」:何も気にせず物事に向かうさま

「遮二無二」の読み方は「しゃにむに」です。一つのことを、やたらと、無性に行うことを指します。「遮二無二」の「遮二」は二を断ち切るという意味、「無二」は二が無いという意味です。これは、一の次がない、つまり最初の一手の次を考えていないということになります。「がむしゃら」の向こう見ずであるという部分と非常に似通っていますね。

また、辞書によっては「遮二無二」を「がむしゃらであること」と説明しているものもあります。そのため、「がむしゃら」と「遮二無二」はどちらも同じニュアンスで使うことが出来る言葉です。

「無我夢中」:物事に熱中して我を忘れること

「無我夢中」の読み方は「むがむちゅう」です。一つのことに心を奪われて、我を忘れてしまうという意味になります。「がむしゃら」との違いは、自分の意思によるものかどうかという点です。「がむしゃら」は自分の意思によって向こう見ずな振る舞いをしますが、「無我夢中」はいつの間にか夢中になっていて、自分の意思とは無関係にその状態に陥っています。

「無鉄砲」:結果や良し悪しを考えず行動すること

「無鉄砲」の読み方は「むてっぽう」です。結果や、その行動の良し悪しを考えず行動することを指します。向こう見ずであるという点は共通していますが、違いはそれが強引であるかどうかです。「がむしゃら」が「強引に」目的に向かって行動することを指す一方で、「無鉄砲」はただ何も考えずに行動を起こすというイメージになります。「がむしゃら」なときは熱くなっていて、「無鉄砲」なときは冷静だとも言えますね。

本来は「無手法」(むてほう)と表記され、「無鉄砲」は当て字です。手段を持っていないところが「無手法」という字とも繋がります。

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「がむしゃら」の対義語

対義語についてもご紹介します。正確に反対の意味を持つ言葉はありませんが、「がむしゃら」の「向こう見ず」や「必死」という意味合いから、「よく考える」「余裕のある」というニュアンスの言葉を選びました。

「熟慮断行」:よく考えて行動すること

「熟慮断行」「じゅくりょだんこう」と読みます。よくよく検討した上で、行動を決断することです。「熟慮」は十分に考えをめぐらせること、「断行」は思い切って行動することを指します。「がむしゃら」が目的以外のことをいっさい無視するのに対し、「熟慮断行」はありとあらゆることに考えを巡らせるところから、対義語といえるでしょう。

「余裕綽綽」:とても余裕のある様子

「余裕綽々」とも書きます。読み方は「よゆうしゃくしゃく」です。ゆったりと焦らず、落ち着き払った様子を指します。また、「綽綽」とは聞きなれない言葉ですが、「ゆったりと落ち着いている様子」を表す言葉です。必死さとは程遠いイメージですね。

「がむしゃら」の英訳

最後に英訳についても見ておきましょう。

「reckless」:向こう見ずな

「がむしゃら」「向こう見ずな」を意味する英語は「reckless」「daredevil」となります。またニュアンスから、「必死に」「死に物狂いで」という意味の「frantically」を使用しても良いでしょう。「I studied frantically.」(私は必死に勉強した)と表現することが出来ます。

がむしゃらは武士とは関係なかった!

ここまで「がむしゃら」の意味・語源・例文・類義語などを解説してきました。「武者」の字から武士と関係があるのかと思いやすいのですが、当て字の可能性が高かったというのは驚きです。またお店の名前やスポーツの解説など「必死に頑張っている」ことを肯定する場面で使われていることも多くポジティブなイメージを持っていました。ですが、本来は「強引」であったりやや乱暴であったりといったニュアンスがメインであったことも特筆すべきことですね。

ときには「熟慮」を必要とすることもあるでしょう。しかし、ここぞという場面で「がむしゃら」になれると、ただ頑張るよりも一層効果が発揮できそうな気がします。

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「がむしゃら」は武士に関係ある?意味・使い方・類語を元塾講師ライターが丁寧にわかりやすく解説!

この記事では「がむしゃら」の意味や使い方・類義語などについて解説する。

「がむしゃら」は漢字で書くと「我武者羅」です。「武者」という言葉が入っているため、武士と関係のある言葉なのかと考えている人もいるでしょう。「強気」や「血気盛ん」なイメージにも合っている気がするな。しかし調べていくと、もっと有力な語源となる説が存在することがわかったぞ。

元塾講師で普段から気になった言葉の意味については必ず調べるというカワナミを呼んです。一緒に詳しく見ていこう。

ライター/カワナミ

国語を愛する元塾講師。少しでも意味の分からない言葉は普段から調べるクセを持っている。モットーは「読む人にわかりやすく伝えること」。

「がむしゃら」の意味と語源

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「がむしゃら」は漢字で「我武者羅」と書きます。まずは辞書を使って正しい意味を見ていきましょう。

一つの目的に向かい、血気にはやって向こう見ずになること。また、他のことはまったく無視して、ひたすらあることをすること。

出典:四字熟語辞典(学研)「我武者羅」

「がむしゃら」目的に対してひたすらに突き進む様子や、そういった人のことです。目的以外のことを無視し、勢いに任せて行動します。強引でやや乱暴なイメージですね。本来はこうしたネガティブなイメージのある言葉ですが、現在では「必死に努力する」「根性がある」「一生懸命に行う」などポジティブなイメージで使われる場面が多くあります。

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