この記事では「あしらう」について解説する。

端的に言えばあしらうの意味は「応対する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は難関私大の文学部を卒業し、表現技法にも造詣が深い十木陽来を呼んです。一緒に「あしらう」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/十木陽来

難関私大の文学部卒ライター。現代文芸の表現技法を学びながら趣味で小説を書いたりもしてきた。今回は表情を表す言葉の一つである「あしらう」の意味をわかりやすく丁寧に解説していく。

「あしらう」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「あしらう」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「あしらう」の意味は?

「あしらう」には、次のような意味があります。

1.応対する。応答する。
2.相手を軽んじた扱いをする。みくびって適当に応対する。
3.素材や色などをうまく取り合わせる。配合する。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「あしらう」

単純に「あしらう」と聞いて思い浮かべるのは、上記2の「軽んじた扱いをする」意味でしょう。一般的には誠実さに欠ける態度といったイメージが強いと思いますが、必ずしもネガティブな場面ばかりに用いられるわけではありません。上記1の意味にある通り、単純に「応対する」という意味もあるためです。そのため前後の文脈を上手く使えば、ポジティブな褒め言葉としても用いることができるでしょう。

また上記1や2とは全く異なる意味として「取り合わせる」という意味もあります。ファッションなどでワンポイント付け加える際に「あしらう」という言葉を耳にしたことがあるでしょう。主により良くするための創意工夫に使われる言葉なので、上記2の意味とは対照的にプラスのイメージで用いられることが多いです。また「あしらう」時には得てしてメインの物へサブの物が取り合わせられます。メイン同士を組み合わせるような時にはあまり使われません。

「あしらう」の語源は?

次に「あしらう」の語源を確認しておきましょう。あしらうは歴史的仮名遣いで書くと「あしらふ」となり、これは古語の「あへしらふ」や「あひしらふ」が変化したものとなります。

「あへしらふ」には「応対する」や「適当に取り合わせる」といった意味があり、現代とは違って相手を軽んじる場面に限らず広く応対の場面で使われました。また「あひしらう」には「程よく受け答えをする」という意味があり、むしろ現代とは逆にポジティブな印象を感じます。このつながりからか古語の「あしらふ」には「もてなす」という意味もありました。今のイメージからは想像もつきませんね。

現代へ時が下るにあたって「あしらう」の好意的な意味は薄まり、軽んじたりみくびったりといったネガティブな印象が強くなりました。時代の移り変わりによって日本語の意味が変わったり、逆転したりした一例ともいえるでしょう。

\次のページで「「あしらう」の使い方・例文」を解説!/

「あしらう」の使い方・例文

「あしらう」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.会社の同僚は社長のわがままを上手にあしらっている。
2.上司は新入社員の鼻であしらうような対応を注意した。
3.子供の学芸会の衣装に金色の装飾をあしらった。

例文1は単に社長を軽んじているとも取れますが、前後の文脈によっては「巧みに対応している」とも捉えることができます。あしらうを単純に「応対する」という意味で用いた場合、称賛する言葉としても用いることができるのです。この言葉をかけられた同僚は、決して嫌な気分にはならないでしょう。

例文2は一般的なイメージにある通り「相手を軽んじた扱いをする」の意味で使われています。日常的な場面で「あしらう」と言った場合、ネガティブな意味を感じ取る人が多いので使用には注意が必要です。

例文3はメインとなる衣装にサブの装飾を「うまく取り合わせ」ています。何かを添えることでより良くしたい時に使われる言葉なので、完全に混ぜ合わせたり、メインと同じようなものを並べるだけでは「あしらう」ことにはなりません。

「あしらう」の類義語は?違いは?

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「あしらう」には複数の意味がありましたが、ここからはそれぞれの類義語を見ていきましょう。

その1「いなす」

「いなす」には「簡単にあしらう」や「言葉巧みにかわす」といった意味があります。「あしらう」は一般的な応対で広く使えるのに対し、「いなす」は主に自らに対する攻撃的・敵対的な言動への対応で使われることが多いです。

また敵の攻撃をいなす姿はかっこいいことからもわかる通り、「いなす」にはポジティブな意味合いの方が強く表れています。一方で「適当にいなす」などの書き方で、ネガティブな意味合いを表現することも可能です。

\次のページで「その2「配合する」」を解説!/

その2「配合する」

「あしらう」の意味の一つでもありますが、「配合する」には「混ぜ合わせる」という意味もあります。たとえば絵具を混ぜ合わせる時に「配合する」という表現が使われますが、「あしらう」といった表現は不自然に感じられるでしょう。つまり「配合する」と「あしらう」は全く同じ意味ではありません。ニュアンス的には「配合する」が「混ぜ合わせる」、「あしらう」が「付け加える」といった印象が強いです。

言葉を選択する際には、どういった意味合いで使うのかを十分に検討しなければなりません。辞書の意味として書かれているから、という理由で何も考えずに単語を入れ替えてしまうと、読み手側の受け取り方が大きく変わってしまう可能性があります。

「あしらう」の対義語は?

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「あしらう」の対義語には「もてなす」という言葉があります。

「もてなす」

「もてなす」には「心を込めて対応する」という意味があります。単純に「もてなす」と聞くと多くの人は歓迎しているという印象を抱くでしょう。対して「あしらう」ではいい加減に扱われているような印象を受けます。対応される側が快く感じるか不快に感じるかで、この二つの言葉は対極的な位置にあるのです。

ですが先に「あしらう」の語源で述べた通り、もともと「あしらう」には「もてなす」という意味もありました。「あしらう」の意味が変化していくにつれ「もてなす」の意味が離れていき、ついには対義語として扱われるようになったのです。

「あしらう」を使いこなそう

この記事では「あしらう」の意味・使い方・類語などを説明しました。「あしらう」はネガティブなイメージが強いですが、かつては対応が丁寧かどうかは関係なく使用され、現代でも書き方によってはポジティブな褒め言葉として使えます。「あしらう」以外にも気になる言葉がありましたら、遠慮なくお尋ねください。Study-zは皆様の知的探求心を、悪い意味で「あしらう」ことは決してありません。

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「あしらう」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

「あしらう」の使い方・例文

「あしらう」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.会社の同僚は社長のわがままを上手にあしらっている。
2.上司は新入社員の鼻であしらうような対応を注意した。
3.子供の学芸会の衣装に金色の装飾をあしらった。

例文1は単に社長を軽んじているとも取れますが、前後の文脈によっては「巧みに対応している」とも捉えることができます。あしらうを単純に「応対する」という意味で用いた場合、称賛する言葉としても用いることができるのです。この言葉をかけられた同僚は、決して嫌な気分にはならないでしょう。

例文2は一般的なイメージにある通り「相手を軽んじた扱いをする」の意味で使われています。日常的な場面で「あしらう」と言った場合、ネガティブな意味を感じ取る人が多いので使用には注意が必要です。

例文3はメインとなる衣装にサブの装飾を「うまく取り合わせ」ています。何かを添えることでより良くしたい時に使われる言葉なので、完全に混ぜ合わせたり、メインと同じようなものを並べるだけでは「あしらう」ことにはなりません。

「あしらう」の類義語は?違いは?

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「あしらう」には複数の意味がありましたが、ここからはそれぞれの類義語を見ていきましょう。

その1「いなす」

「いなす」には「簡単にあしらう」や「言葉巧みにかわす」といった意味があります。「あしらう」は一般的な応対で広く使えるのに対し、「いなす」は主に自らに対する攻撃的・敵対的な言動への対応で使われることが多いです。

また敵の攻撃をいなす姿はかっこいいことからもわかる通り、「いなす」にはポジティブな意味合いの方が強く表れています。一方で「適当にいなす」などの書き方で、ネガティブな意味合いを表現することも可能です。

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