この記事では「器用貧乏」について解説する。

端的に言えば器用貧乏の意味は「何でもできるが、突出した点がない」ですが、語源やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「器用貧乏」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「器用貧乏」の意味や語源・使い方まとめ

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「器用貧乏」とは興味深い四字熟語です。「器用」なのに「貧乏」とは、どういうことでしょうか。実は「器用ですね」と褒める言葉ではなく、どちらかというとネガティブなイメージを持っている表現です。使い方によっては相手の気分を害してしまいかねません。意味をしっかり理解し、正しい使い方をマスターしましょう。

それでは早速「器用貧乏」の意味や語源・使い方を例文も交えながら見ていきますね。

「器用貧乏」の意味は?

「器用貧乏」には、次のような意味があります。

なまじ器用であるために、あちこちに手を出し、どれも中途半端となって大成しないこと。また、器用なために他人から便利がられてこき使われ、自分ではいっこうに大成しないこと。

出典:新明解四字熟語辞典(三省堂)「器用貧乏」

器用貧乏」とは器用なので何でもそつなくこなせるけれど、その分ひとつのことを集中して極めることがない。そのためどれもズバ抜けたレベルに達することができず、全てが中途半端であるという意味です。どんなことでもこなせるのは優れた特徴ともいえますが、「器用貧乏」は「結局、秀でるものがない」という側面に注目した言葉のため、褒める表現としては使えません。

「器用貧乏」の語源は?

次に「器用貧乏」の語源を確認しておきましょう。

「器用」は物事をうまくやってのけること、要領がよいことを表します。「貧乏」は財産や収入が少なくて生活が苦しいことを意味しますが、転じて「何も持っていない」状態をもさす言葉です。この2つの熟語が組み合わさり、「器用貧乏」は「物事をうまくこなせるけれども、結局何も持っていない」という様子を表すようになりました。

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「器用貧乏」の使い方・例文

「器用貧乏」のような四字熟語は実際の例文を使って使って解釈していくと分かりやすいですね。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.彼は配属された部署の仕事は一通りすぐできようになるが、数字で成果を出したことがない。そのため上司からは「あいつは器用貧乏だ」という評価を受けている。

2.彼女は習い事マニアで、これまでに手芸やお菓子作り、ピアノにヨガと沢山受けてきた。しかし飽き性で長続きしないため、どれも大成しなかった。まさに器用貧乏の典型だ。

3.あなたは器用貧乏なところがある。今取り組んでいることを真剣に極めて見ると、才覚が見いだせるかもしれないよ。

例文1と2は「器用貧乏」を相手に対する批判として使った用例になります。「器用貧乏」はこのように、何でもこなせるけれど秀でたものがない人、極めたことがない人をネガティブに表現する時に使われるのが一般的です。

ところが例文3は様子が違いますね。例文3は「器用貧乏」を相手へのアドバイスとして使っている場面です。相手の能力やポテンシャルを認めつつ、もっと集中して取り組めばもっと才能が花開くよと伝えたい心情を想定しました。このように逆説的に「器用貧乏」を使うと言いたいことがより効果的に伝えることができますね。

「器用貧乏」の類義語は?違いは?

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「器用貧乏」という言葉には、同じ意味を持つ表現はあるのでしょうか?類義語を見てみましょう。

その1「多芸は無芸」

「器用貧乏」の類語表現の1つ目は「多芸は無芸」ということわざです。

「芸」は技能や技芸を指します。「多くの芸を持っている者は、かえって一つの芸に精通しにくく、これといったすぐれた芸をもっていないことが多い」という意味です。まさに「器用貧乏」ですね。「器用貧乏」と同じように、良い意味で使われることはありません

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その2「鼯鼠五技」

2つ目は「鼯鼠五技」、難しい漢字が並びましたが読み方は「ごそごぎ」です。さまざまな技能を持っているが、突出して秀でている者が特にないさまを表します。

「鼯鼠(ごそ)」はムササビ。ムササビは「木登り」「空中滑空」「穴掘り」「泳ぎ」「走る」と多くのことができますが、 「猿、鳥、モグラ、魚、人間」といったそれぞれの技能を専門とする動物にはかないません。このことから、どんなに多くの技能を持っていてもスバ抜けて優れたものは1つもない、という意味になります。面白い表現ですね。

「器用貧乏」の対義語は?

次に「器用貧乏」と反対の意味を持つ言葉を見てみます。「何でもできるけれど、秀でた点がない」という意味の「器用貧乏」には、反対言葉はあるのでしょうか。

その1「一芸に秀でる」

「なんでもできるが、突出したものがない」の反対の意味をかんがえると「一つのことしかできないが、それが大変優れている」となりますね。この意味を表すことわざが「一芸に秀でる」です。文字通り、一つの芸事に非常に精通し極めた人に対して使われます。何でも器用にこなせるわけではないけれど、ひとつでも秀でていることがあるというのは素晴らしいこと。褒め言葉としても使える表現です。

その2「オールラウンダー」

オールラウンダー」は野球などのスポーツの世界でよく使われますね。あるいはビジネスシーンでも登場する言葉です。

多領域に有能な人、万能選手」という意味を表します。どんなことをやらせても何でも優れている、よくできるさまを指すため、褒め表現になる言葉です。「器用貧乏」は「何をやっても大成しない」という意味でしたら、「何をやってもよくできる」という意味の「オールラウンダー」は反対表現になるといえます。

その3「八面六臂」

八面六臂」は「はちめんろっぴ」と読みます。元々は仏教で「仏像などが八つの顔と六つの腕をもつこと」を指す言葉でしたが、転じてあらゆる方面にめざましい働きを示すことを指すようになりました。「器用貧乏」はいろいろできるけれど、秀でたものはないという意味ですが「八面六臂」は多方面で活躍してくれる、何人分もの役に立ってくれるのでとても助かるという意味になります。

「器用貧乏」の英訳は?

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「器用貧乏」は日本語らしいニュアンスの言葉である気もしますね。英語ではどのように言うのでしょうか?

\次のページで「「Jack of all trades and master of none.」」を解説!/

「Jack of all trades and master of none.」

「器用貧乏」のニュアンスを英語で表現すると「 Jack of all trades and master of none.」ということわざが当てはまります。

「Jack」は一般的な男性の名前(日本語で言う「太郎」です)、「of all trades」は「どんな商売もできる」、「master of none」 は「何も修得していない」という意味です。直訳すると「ジャックは何でもできるヤツだが、何もモノになっていない」となり、「器用貧乏」と同じ意味を表すことが分かりますね。

He is a jack‐of‐all‐trades and master of none.
「彼は器用貧乏だ」

「器用貧乏」を使いこなそう

この記事では「器用貧乏」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「器用貧乏」は何でもできる故に、突出した点がないという意味ですが、しかしそれでも「何でもできる」ということを羨ましく感じる人もいると思います。もしあなたが誰かから「器用貧乏」と言われたとしたら、もしかしたら相手はあなたの「何でもできる」という点を褒めてくれていたのかもしれません。あまり考え過ぎず、プラスに捉えていきましょう。

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国語言葉の意味

「器用貧乏」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

その2「鼯鼠五技」

2つ目は「鼯鼠五技」、難しい漢字が並びましたが読み方は「ごそごぎ」です。さまざまな技能を持っているが、突出して秀でている者が特にないさまを表します。

「鼯鼠(ごそ)」はムササビ。ムササビは「木登り」「空中滑空」「穴掘り」「泳ぎ」「走る」と多くのことができますが、 「猿、鳥、モグラ、魚、人間」といったそれぞれの技能を専門とする動物にはかないません。このことから、どんなに多くの技能を持っていてもスバ抜けて優れたものは1つもない、という意味になります。面白い表現ですね。

「器用貧乏」の対義語は?

次に「器用貧乏」と反対の意味を持つ言葉を見てみます。「何でもできるけれど、秀でた点がない」という意味の「器用貧乏」には、反対言葉はあるのでしょうか。

その1「一芸に秀でる」

「なんでもできるが、突出したものがない」の反対の意味をかんがえると「一つのことしかできないが、それが大変優れている」となりますね。この意味を表すことわざが「一芸に秀でる」です。文字通り、一つの芸事に非常に精通し極めた人に対して使われます。何でも器用にこなせるわけではないけれど、ひとつでも秀でていることがあるというのは素晴らしいこと。褒め言葉としても使える表現です。

その2「オールラウンダー」

オールラウンダー」は野球などのスポーツの世界でよく使われますね。あるいはビジネスシーンでも登場する言葉です。

多領域に有能な人、万能選手」という意味を表します。どんなことをやらせても何でも優れている、よくできるさまを指すため、褒め表現になる言葉です。「器用貧乏」は「何をやっても大成しない」という意味でしたら、「何をやってもよくできる」という意味の「オールラウンダー」は反対表現になるといえます。

その3「八面六臂」

八面六臂」は「はちめんろっぴ」と読みます。元々は仏教で「仏像などが八つの顔と六つの腕をもつこと」を指す言葉でしたが、転じてあらゆる方面にめざましい働きを示すことを指すようになりました。「器用貧乏」はいろいろできるけれど、秀でたものはないという意味ですが「八面六臂」は多方面で活躍してくれる、何人分もの役に立ってくれるのでとても助かるという意味になります。

「器用貧乏」の英訳は?

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「器用貧乏」は日本語らしいニュアンスの言葉である気もしますね。英語ではどのように言うのでしょうか?

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