今回学ぶのは「アクチノイド」です。

元素にはその特徴ごとにまとめたグループの呼び方がある。アルカリ金属、アルカリ土類金属、ハロゲン、希ガスなどのことです。アクチノイドも元素を仲間分けした時の呼び名の一種です。元素番号89番から103番の15元素がこのアクチノイドとなる。第3族に属し、ランタノイドは第6周期なのに対してアクチノイドは第7周期に属している。ランタノイドとアクチノイドは周期表の下にまとめられているちょっと変わった仲間たちです。

今回のテーマはアクチノイドです。そもそもアクチノイドとは何か、アクチノイドと呼ばれる元素はどんなものかについて学ぶ。解説は元素周期表が好きな科学館職員のたかはしふみかです。

ライター/たかはし ふみか

高校、大学で化学漬けの日々を送っていた化学系出身の周期表が好きな科学館職員。最近の趣味は科学工作と家庭でも安全に簡単にできる実験を探すこと。

そもそもアクチノイドとは?

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そもそもアクチノイドとはどんな元素の仲間でしょうか。高校化学でよく登場する元素といえば元素番号1から20の

H、He、Li、Be、B、C、N、O、F、Ne、Na、Mg、Al、Si、P、S、Cl、Ar、K、Ca

とCuやZnなどの一部の金属元素、そして17族のハロゲン、18族の希ガスくらいでしょう。

アクチノイドActinoid)とは原子番号89番のアクチニウムと、アクチニウムに特徴が似た元素のことを指します。第7周期の第3族に属し、元素番号89番から103番の間にある15個の元素がアクチノイドです。ちなみにランタノイドをコトバンクで調べると「原子番号89のアクチニウムから103のローレンシウムまでの15の元素の総称。いずれも放射性元素で、物理的、化学的に極めてよく似た性質をもつ。」と書かれています。

ランタノイドに関してはこちらの記事をどうぞ。

アルカリ金属についてはこちら。

アルカリ土類金属についてはこちら。

18族の希ガスについてはこちら。

アクチノイドの特徴・電子配置

アクチノイドの特徴・電子配置

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周期表を見てみましょう。元素は18族まであります。通常、同じ周期には同じ族の元素はありません。しかし、その例外がランタノイドとアクチノイドです。第6周期3族のランタノイドと第7周期3族のアクチノイドは周期表の下にまとめられていて、ちょっと特別感があります。

アクチノイドは第6周期の希ガスであるRn(ラドン)の電子は位置をベースに、内側にある電子殻に電子が入っていくのです。ちょっと複雑な電子の配置についてはこちらの記事の「軌道」「電子が入るルール」を確認してくださいね。

アクチノイドの仲間たち

それではアクチノイドの仲間たちを確認していきましょう。

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1.癌の治療に役立つ、アクチノイドAc

1899年にフランスの化学者によって発見された放射性元素の一種、アクチノイド。銀白色の金属であり、ギリシャ語の放射線(aktis)にちなんで名づけられましたちなみに発見者のアンドレ=ルイ・ドビエルヌはあの有名な学者夫婦、キュリー夫妻と親交があったそうです。

アクチニウムの出すアルファ線が癌細胞を破壊するとして、難治性すい臓がんの研究に用いられています。

2.神話にちなんだ名前、トリウムTh

スウェーデンの化学者がトール石から発見した天然放射性元素であるトリウム。トリウム、トール石という名前は北欧神話の雷神トールにちなんで付けられました。すべての同位体が放射性となっています。

トリウムは比較的豊富に存在する元素です。そのため核燃料として活用されている他、ガス灯や光電管、放電管、熱陰極材料、合金材料としても活用されています。

3.変わった名前のプロトアクチニウムPa

プロトアクチニウムは元素周期表を生み出したメンデレーエフが1871年に存在を予言し、1917年に発見されました。なぜこのような長く変わった名前を付けられたのかと言うと、プロトアクチニウムが崩壊するとアクチニウムになるからです。

プロトアクチニウムはウラン鉱に微量存在しています。毒性があり、希少なことからあまり活用されていない元素です。研究以外の活用としては海底沈積層の年代測定があげられます。

4.もっとも有名なアクチノイド、ウランU

もっとも有名なアクチノイド、といえばウランでしょう。地球上に天然で大量に存在する原子のうち、最も原子量が大きいのがこのウランです。地殻や海水中に存在し、その多くがオーストラリアに埋蔵されています。1789年に発見され、その数年前に発見された天王星(Uranus)にちなんでウランと名付けられました。

ウランには核分裂しやすいウラン235(0.7%)と核分裂しづらいウラン238(99.3%)があります。235、237とは質量数のことです。

ウラン235の原子の中心にある原子核に、中性子があたると、原子核がふたつに分裂します。この時に熱エネルギーと中性子が発生するのです。この中性子が別のウラン235を、さらにそのウラン235から発生した中性子が、別のウラン235を核分裂させる、というように核分裂の連鎖反応が起こります。

5.プルトニウムの製造に使用、ネプツニウムNp

海王星のNeptuneが由来のネプツニウムは1940年に発見されました。ネプツニウム以降の元素は人工的に合成されたもので、超ウラン元素と呼ばれています。

ネプツニウムは銀のような外見で、他の元素と化学反応を起こしやすい元素です。ウラン鉱からわずかに採取することができます。

6.核兵器にもなる、プルトニウムPu

ウラン同様に有名なアクチノイドと言えばプルトニウムです。プルトニウムといえば原子力発電の燃料を思い浮かべる人が多いでしょう。ウラン、ネプツニウムに続く惑星(準惑星)が名前の由来となった元素で、冥王星(Pluto)が由来となっています。

以前プルトニウムは人工的に作らなければ得られないと考えられていました。しかし実際にはウラン鉱石からもわずかながら採ることができます。他の多くのアクチノイドと同様に銀白色の金属です。

プルトニウムは原子力発電の燃料であるウランが燃焼した際に生成されます。核分裂を起こしやすいことから、核兵器にも使われている元素です。

核分裂についてはこちらを参考にしてください。

7.大陸が名前の由来、アメリシウムAm

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プルトニウムに中性子を照射して作られた人工放射性元素、アメリシウム。この名前は周期表でユウロピウムの下に来ることから名づけられました。1944年にカリフォルニア大学バークレー校のシーボーグが単離に成功した元素です。煙探知機やガスクロマトグラフィーの検知器に使われています。

\次のページで「8.あの化学者夫婦が由来、キュリウムCm」を解説!/

8.あの化学者夫婦が由来、キュリウムCm

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Nobel foundation - http://nobelprize.org/nobel_prizes/physics/laureates/1903/marie-curie-bio.html, パブリック・ドメイン, リンクによる

1944年にシーボーグによって発見されたキュリウム。プルトニウムにヘリウムイオン(アルファ粒子、高い運動エネルギーを持つヘリウム4の原子核)、またはアメリシウムに中性子を照射することで作られます。キュリウムは原子力電池や、惑星探査機のαプロトンX線分光計、実験用のアルファ線源に使われている元素です。ただし、最近は研究以外にあまり使われていません。

9.アクチノイドを生み出した地にちなむ、バークリウムBk

バークリウムは先ほどから登場しているシーボーグがカルフォルニア大学バークレー校で発見したことから名づけられました。アメリシウムにヘリウムイオンを照射することで生成された元素です。

放射能が協力で非常に危険な元素であることから、基礎研究くらいにしか使われていません。

10.大学名にちなんだカリホルニウムCf

カリフォルニア大学が名前の由来となったカリホルニウム。キュリウムにヘリウムイオンを照射して生成された元素です。

中性子線源や、非破壊検査、その他研究用に使用されています。

11.偉大な物理学者にちなんだアインスタイニウムEs

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Ferdinand Schmutzer - http://www.bhm.ch/de/news_04a.cfm?bid=4&jahr=2006, パブリック・ドメイン, リンクによる

アインシュタインが由来となった元素、アインスタイニウム。1952年に発見されたのですがそれが水爆実験中だったため、1955年に発表されました。高い反応性を持った元素です。アインスタイニウムも研究以外にはほとんど利用されていません。

12.水爆実験から生まれたフェルミウムFm

原子核物理学の分野でで活躍したエンリコ・フェルミに因んで名付けられフェルミウム。アインスタイニウム同様に水爆実験をしているときに発見されました。

すぐに壊れてしまい、研究以外にはほとんど用いらえていない元素です。

13.まだまだ謎が多い、メンデレビウムMd

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кабинет академика Михаила Михайловича Шульца - фото любезно передано мне в собственность вдовой М.М.Шульца Ниной Дмитриевной Шульц., パブリック・ドメイン, リンクによる

メンデレビウムの由来は周期表の父、メンデレーエフです。半減期が短く、詳しい性質はまだわかっていません。

14.その名の由来は科学者憧れの賞、ノーベリウムNo

AlfredNobel2.jpg
不明 - [1][2], パブリック・ドメイン, リンクによる

102番の元素は科学者の憧れの賞を作った人物の名前が付けられています。 ノーベル賞を作ったノーベルにちなんだノーベリウムです。ノーベリウムは軽い元素に荷電粒子(電荷を帯びた粒子)を衝突させて生成します。

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15.半減期が短いローレンシウムLr

米国の物理学者アーネスト・ローレンスが由来となった元素。研究以外には用いられていなません。カリホルニウムの同位体の混合物にホウ素イオンを照射して作られます。長くても3時間半程度と半減期が短く、まだまだ研究が進んでいない元素です。

放射能について

今回は核分裂や放射性廃棄物など聞いたことはあるけどよくわからない、という用語がいろいろでてきました。これを機にこちらの記事も読んでみて下さいね。

アクチノイドの仲間たち

原子番号89から103番までの間の原子、アクチノイド。原子力発電、原爆に用いられたウランはこの仲間となっています。

研究にしか用いられていない元素も多く、銅や亜鉛などに比べるとなじみのない元素ばかりです。その名前は科学者や惑星が由来となっていて名前を調べても楽しいですね。

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化学原子・元素理科

アクチノイドって何?ランタノイドとの違いは?元素の仲間たちを科学館職員がわかりやすく解説

1.癌の治療に役立つ、アクチノイドAc

1899年にフランスの化学者によって発見された放射性元素の一種、アクチノイド。銀白色の金属であり、ギリシャ語の放射線(aktis)にちなんで名づけられましたちなみに発見者のアンドレ=ルイ・ドビエルヌはあの有名な学者夫婦、キュリー夫妻と親交があったそうです。

アクチニウムの出すアルファ線が癌細胞を破壊するとして、難治性すい臓がんの研究に用いられています。

2.神話にちなんだ名前、トリウムTh

スウェーデンの化学者がトール石から発見した天然放射性元素であるトリウム。トリウム、トール石という名前は北欧神話の雷神トールにちなんで付けられました。すべての同位体が放射性となっています。

トリウムは比較的豊富に存在する元素です。そのため核燃料として活用されている他、ガス灯や光電管、放電管、熱陰極材料、合金材料としても活用されています。

3.変わった名前のプロトアクチニウムPa

プロトアクチニウムは元素周期表を生み出したメンデレーエフが1871年に存在を予言し、1917年に発見されました。なぜこのような長く変わった名前を付けられたのかと言うと、プロトアクチニウムが崩壊するとアクチニウムになるからです。

プロトアクチニウムはウラン鉱に微量存在しています。毒性があり、希少なことからあまり活用されていない元素です。研究以外の活用としては海底沈積層の年代測定があげられます。

4.もっとも有名なアクチノイド、ウランU

もっとも有名なアクチノイド、といえばウランでしょう。地球上に天然で大量に存在する原子のうち、最も原子量が大きいのがこのウランです。地殻や海水中に存在し、その多くがオーストラリアに埋蔵されています。1789年に発見され、その数年前に発見された天王星(Uranus)にちなんでウランと名付けられました。

ウランには核分裂しやすいウラン235(0.7%)と核分裂しづらいウラン238(99.3%)があります。235、237とは質量数のことです。

ウラン235の原子の中心にある原子核に、中性子があたると、原子核がふたつに分裂します。この時に熱エネルギーと中性子が発生するのです。この中性子が別のウラン235を、さらにそのウラン235から発生した中性子が、別のウラン235を核分裂させる、というように核分裂の連鎖反応が起こります。

5.プルトニウムの製造に使用、ネプツニウムNp

海王星のNeptuneが由来のネプツニウムは1940年に発見されました。ネプツニウム以降の元素は人工的に合成されたもので、超ウラン元素と呼ばれています。

ネプツニウムは銀のような外見で、他の元素と化学反応を起こしやすい元素です。ウラン鉱からわずかに採取することができます。

6.核兵器にもなる、プルトニウムPu

ウラン同様に有名なアクチノイドと言えばプルトニウムです。プルトニウムといえば原子力発電の燃料を思い浮かべる人が多いでしょう。ウラン、ネプツニウムに続く惑星(準惑星)が名前の由来となった元素で、冥王星(Pluto)が由来となっています。

以前プルトニウムは人工的に作らなければ得られないと考えられていました。しかし実際にはウラン鉱石からもわずかながら採ることができます。他の多くのアクチノイドと同様に銀白色の金属です。

プルトニウムは原子力発電の燃料であるウランが燃焼した際に生成されます。核分裂を起こしやすいことから、核兵器にも使われている元素です。

核分裂についてはこちらを参考にしてください。

7.大陸が名前の由来、アメリシウムAm

image by PIXTA / 69107875

プルトニウムに中性子を照射して作られた人工放射性元素、アメリシウム。この名前は周期表でユウロピウムの下に来ることから名づけられました。1944年にカリフォルニア大学バークレー校のシーボーグが単離に成功した元素です。煙探知機やガスクロマトグラフィーの検知器に使われています。

\次のページで「8.あの化学者夫婦が由来、キュリウムCm」を解説!/

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