この記事では「やかましい」について解説する。
「やかましい」といえば「うるさい」という意味の関西弁で、芸人の漫才のツッコミで使われるイメージがあるかもしれないが、実は標準語で関西以外でも使われている言葉です。さらに「うるさい」という意味以外にもいくつか意味を持っているぞ。
今回はそんな「やかましい」の意味や語源、類語と比較した使い方の違いなどを文学部卒webライターのリカと一緒に見ていきます。

ライター/リカ

文学部卒のwebライター。在学中、様々な言葉について論文を執筆し、卒業後も日常で疑問を持った言葉についてすぐに調べることを習慣付けている。

「やかましい」の意味・語源・使い方は?

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それでは早速「やかましい」の意味や語源、使い方を確認してみましょう。

「やかましい」の意味は「声や物音の大きさや指摘を煩わしく感じること」

「やかましい」を辞書で調べてみると次のように記載されています。

1. 声や物音などが騒がしい。うるさく、不快である。「工事現場の―・い音」
2. いろいろの人が話題にして騒がしい。また、評判が高い。「世間が―・い」
3.こまごまとしていて、めんどうくさい。また、小言が多くてわずらわしい。「何事にも―・い人」「書類の手続きが―・い」
4.きびしい。「しつけに―・い家庭」「規則が―・い」
5.好みなどが気むずかしい。「食べ物に―・い人」

出典 デジタル大辞泉(小学館) 「やかましい」

上記のように「やかましい」には5つもの意味がある言葉です。

1・2で言うような声や物音が大きいことを不快に感じることという意味と、3・4・5で言うようなこまごまと決まりや好みについて指摘されることを煩わしく感じることという意味で大きく2つに分けられ、主に前者の意味で使用されることが多い言葉ですね。

また2に記載されている「評判高い」という意味は古い文学作品でよく見られる表現で現在ではあまり使用されません。現代では基本的にうるさい・煩わしいといった否定的な表現として使用されることが多い言葉です。

実は関西弁じゃない?「やかましい」の用例

「やかましい」は簡単にまとめると「声や物音の大きさや指摘を煩わしく感じること」という意味の単語で、同じ意味の「うるさい」の関西弁である思われがちですが、古い書物では現在の関西圏以外でも使用が確認され、近代文学では現在の東京都出身の夏目漱石の作品でも使用されていることから標準語であることがわかります。

関西圏、特に大阪でよく使用される言葉のため勘違いされがちですが、関西の方言ではなく標準語であることを覚えておきましょう。

\次のページで「「やかましい」の語源は?」を解説!/

「やかましい」の語源は?

「やかましい」の語源には諸説あります。

はじめに「やかましい」は漢字表記では「喧しい」になるということを把握しておきましょう。

1つ目は古語の「アナカマシ(噫喧)」から変化したという説です。「噫」には物事に感じ入ったり、驚いた様を表しており、「喧」は「やかましい(喧しい)」という意味を表しており、この2つの漢字を組み合わせた「アナカマシ(噫喧)」から変化したのではないかと考えられています。

2つ目は「イヤカマシキ(弥彌)」を簡約したとする説です。「弥」にはますますという意味があり、「彌」は「喧」と同じように「やかましい」という意味を表しており、この2つの漢字を組み合わせた「イヤカマシキ(弥彌)」を簡約した言葉であると考えられています。

他にもいくつかの説がありますが、はっきりとしたことはわかっていません。

「やかましい」の使い方・例文

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次に「やかましい」の使い方を例文と一緒に確認しましょう。

1.この辺り一帯は夕方はカラスの鳴き声がやかましい。
2.新発売の商品に世間がやかましい。
3.職場の先輩は仕事の進め方にやかましい。
4.校長先生は規則にやかましいことで有名だ。
5.祖父は料理の味付けにやかましい。

1の例文では「声や物音などが騒がしい」という意味で使用されています。カラスの鳴き声がうるさく不快に感じているんですね。

2の例文では「いろいろの人が話題にして騒がしい」という意味で使用されています。多くの人が1つの話題で騒然としている様子を表しているんですね。

3の例文では「こまごまとしていて、めんどうくさい」という意味で使用されています。仕事の進め方が細かすぎると煩わしく感じることがありますね。

4の例文では「きびしい」という意味で使用されています。3の例文での意味に近く、規則に厳しく細かく指摘されるという様子を表していますね。

5の例文では「好みなどが気むずかしい」という意味で使用されています。好き嫌いや好みにうるさいことが煩わしく感じるられる様子が表れていますね。

「やかましい」の類義語は?違いは?

次に「やかましい」の類義語にはどんなものがあるか、「やかましい」との違いはあるか確認してみましょう。

\次のページで「「騒然」:騒がしく、不穏な様子」を解説!/

「騒然」:騒がしく、不穏な様子

「騒然」は人の声や物音が騒がしく、それが不穏に感じられる様子を意味する言葉です。「然」には他の漢字につけて状態を表す語であり、「騒」につけることによって、辺りが騒がしい状態を表しています。

「やかましい」の1・2の意味に加えて、不穏さを感じることを表現できる言葉なんですね。

「かしましい」:人の話す声が騒がしい様子

「かしましい」は漢字では「姦しい」と書き、主に人の声が騒がしく、耳障りであるという意味の言葉です。

「姦」という字の通り、1人では静かな女性も3人集まれば騒がしいという、女性が集まった際の話し声の騒々しさが由来となった言葉で「やかましい」は人だけでなく動物の鳴き声や、物音にも使用できますが、「かしましい」は基本的に人の話し声に対して使用されます。

また、女性に対する蔑視的なニュアンスがとられることもある言葉のため注意が必要です。

「やかましい」の対義語は?

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続いて「やかましい」の反対の意味である対義語も確認してみましょう。

「閑静」:物静かで、落ち着いている様子

「閑静」は物静かで落ち着いている様子を表す言葉です。

「閑」と「静」はともに「耳障りな音や声がしない様子」という意味をもっており、まさに「やかましい」とは正反対の騒々しさのない、静かな様子を表しています。

「閑静な住宅街」「閑静な庭」というように特定の場所につけて表現する際に使用できる言葉です。

「おとなしい」:静かな様子、穏やかで従順な様子

「おとなしい」にはいくつか意味がありますが、その中に騒いだりせず、物静かな様子という意味や性格が穏やかで従順な様子という意味があります。「大人らしい」が語源とされる言葉で、大人らしい人というのは物静かで落ち着いているということなんですね。

上記の「閑静」は特定の場所に対して使用する言葉でしたが、「おとなしい」は人や動物に対して使用できる「やかましい」の対義語です。

「うるさい」という意味の方言は?

今回「やかましい」の意味や語源について学んだことで「やかましい」が関西の方言ではなく、標準語であることがわかりましたね。

「やかましい」は方言ではありませんでしたが、「うるさい・やかましい」という意味の方言は日本全国でたくさん存在します。今回はその中から「さしね」と「せからしか」を確認してみましょう。

\次のページで「「さしね」」を解説!/

「さしね」

まずは、北の東北地方の方言を見てみましょう。

「さしね」は青森県の方言で、実際に発音すると「さしね」というより「すぃね」に近い発音になります。「うるさい・やかましい」という意味以外に「うっとうしい」「しつこい」という意味も含んでいる言葉です。

「せからしか」

次に、南の九州地方の方言を見てみましょう。

「せからしか」は九州地方全般で使用される方言「うるさい・やかましい」の他に「煩わしい」「面倒くさい」という意味を持つ言葉です。

場所によっては「せからしか」ではなく「しぇからしか」と言ったり微妙に違いがあります。

「やかましい」の意味を正しく把握しよう!

この記事では「やかましい」の意味や語源等について解説しました。

「やかましい」は端的に言うと「声や物音の大きさや指摘を煩わしく感じること」でしたが、1つの言葉で5つもの意味があるため使用される状況等から相手の伝えたい意味を正しく把握しましょう。

また、今回は割愛しましたが「やかましい」は標準語ですが、土地によってはその他のさらに異なる意味で使用されることがあるため、調べてみると面白いかもしれませんね。

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国語言葉の意味

実は関西弁じゃない?「やかましい」の意味って?語源・類義語・対義語など文学部卒webライターがわかりやすく解説

「さしね」

まずは、北の東北地方の方言を見てみましょう。

「さしね」は青森県の方言で、実際に発音すると「さしね」というより「すぃね」に近い発音になります。「うるさい・やかましい」という意味以外に「うっとうしい」「しつこい」という意味も含んでいる言葉です。

「せからしか」

次に、南の九州地方の方言を見てみましょう。

「せからしか」は九州地方全般で使用される方言「うるさい・やかましい」の他に「煩わしい」「面倒くさい」という意味を持つ言葉です。

場所によっては「せからしか」ではなく「しぇからしか」と言ったり微妙に違いがあります。

「やかましい」の意味を正しく把握しよう!

この記事では「やかましい」の意味や語源等について解説しました。

「やかましい」は端的に言うと「声や物音の大きさや指摘を煩わしく感じること」でしたが、1つの言葉で5つもの意味があるため使用される状況等から相手の伝えたい意味を正しく把握しましょう。

また、今回は割愛しましたが「やかましい」は標準語ですが、土地によってはその他のさらに異なる意味で使用されることがあるため、調べてみると面白いかもしれませんね。

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