端的に言えば「無為」の意味は「自然のままにゆだねる」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
今回は哲学書好きライターTakk1976を呼んです。一緒に「無為」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/Takk1976
学生時代から読書の虫。特に東洋、西洋の哲学書に親しみ、日々新しい言葉に出会うことが喜び。田舎に住み、米作りに励みながら晴耕雨読の日々を暮らす異色のライターが「無為」について解説していく。
「無為」の意味は?
「無為」は多くの場合「むい」と読みます。ごくたまに「ぶい」という読み方もありますが、あまり見かけない読み方です。
それでは、「無為」の意味を見ていきます。
1.自然のままで、作為的でないこと。
2.(仏教用語として)消滅・変化しないもの。自然、絶対。
3.ぶらぶらと何もしないでいること
出典:国語辞典(岩波書店)
まず1の意味ですが、これは人間の行為や態度が自然のままにゆだねられているという意味です。つまり、ああしたい、こうしたいと意図したり計画せず、その場の流れにまかせている状態を指します。
次に2ですが、これは仏教用語で、若干難しいかも知れませんので少し説明しましょう。仏教では人間という存在はあれこれ欲や感情で生きていて、やがては死んでしまう諸行無常、つまり永続しない存在です。それとは逆にどこから生まれてくるわけでもなく、また消えていくわけでもない、例えば天体の運行や季節の移り変わりなど、ただそれ自身で永続している理法。仏教ではそれを「無為」と呼び、真理と考えます。
最後に、3の意味は特にあてもなく何もしないで、時間を無駄に過ごす時に少し否定的な意味で使わることが多いです。「無為に過ごす」などのように使われます。
「無為」の語源は?
次に「無為」の語源を確認しておきましょう。「無為」という言葉は古くから使われていますが、今から2500年以上前に中国にいた道教の始祖とも言われる老子が自分の思想を説明するのに好んで使用したことで知られています。
老子は「無為自然」が人として最良のあり方だと説いたのですが、それはどういうことかというと、知識や情報、意図といったものにとらわれず、その人が持つあるがままの心で生きることが最も良い、と考えたのです。
少し極端な例ですが、人間は赤ん坊の時はまっさらな心で生活していますね。まさに「無為」の状態ですが、人間は成長するにつれていろいろなことを覚えていくと、悩みや問題も増えて生きにくくなっていくと老子は考えたのです。老子の「無為」の思想はその後の道家たちにも大きな影響を与えました。
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