
端的に言えば「くたびれる」の意味は「疲労する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
博士(文学)の学位を持ち、日本語を研究している船虫堂を呼んです。一緒に「くたびれる」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/船虫堂
博士(文学)。日頃から日本語と日本語教育に対して幅広く興味と探究心を持って生活している。生活の中で新しい言葉や発音を収集するのが趣味。モットーは「自分も楽しみながら詳しく、わかりやすく言葉をご紹介」。まだまだ人生には「くたびれ」ていない。
「くたびれる」の意味や語源・使い方まとめ

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「骨折り損のくたびれもうけ(ほねおりぞんのくたびれもうけ)」ということわざがあります。見合わない仕事をして疲れただけという意味で使われますね。その一方で「このシャツはそろそろくたびれてきた」などという言い方もあります。「くたびれる」とはどのような言葉なのでしょうか。それでは早速「くたびれる」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。
「くたびれる」の意味は?
まず、「くたびれる」の意味を辞書で確認しましょう。『精選版 日本国語大辞典』の「草臥」の項目を引用します。
出典:『精選版 日本国語大辞典』(小学館)「草臥」より抜粋
1.の「疲労する」という意味がおそらく「くたびれる」という言葉を聞いて第一に浮かんでくる意味なのではないでしょうか。この意味のポイントは疲れる原因で「使いすぎて」という部分が以降の意味に関わってきます。
2.で示されている意味は、主に「待ちくたびれる」の形式で使われる場合の「くたびれる」です。使用される形はほとんど「待ちくたびれる」で、日常使っている言葉では前につく動詞は「待つ」のほかには無いと思われるのですが、他の動詞にも使えるような一般的な説明が書かれています。ここで注目したいのは、前につく動作(例えば「待つ」こと)を長時間にわたって行った結果、疲れて嫌になるという、1で示した「使いすぎて」と共通するという点です。
3.で示されている意味が、先ほど挙げた「シャツがくたびれてきた」など、物の古びてきた状態・様子を表すときに使用する意味で、ここでも「みすぼらしくなる」原因は「長く使われたりしたため」とあります。この意味は物にも人間にも使えるため、人間の場合は「年老いた」、つまり長く生きたことが原因となりますが、「長きにわたって」という点がやはり共通していると言えるでしょう。
まとめると、「くたびれる」は1.疲れたり、2.いやになったり、3.みすぼらしくなったりするわけですが、それは長期間にわたって使用されることによって生じるというニュアンスを含んでいます。
「くたびれる」の語源は?
次に「くたびれる」の語源を確認しておきましょう。まずは漢字表記についてです。辞書の見出しにあるように「くたびれる」は漢字で書くと「草臥れる」と書くのですが、『精選版 日本国語大辞典』では明治期の国語辞典である『大言海』の語源説にある『詩経』(中国最古の詩篇)の記述を引用しています。ただ、この語源説には問題があり、『詩経』の中に「草臥(疲れて草に臥す)」という単語が載っていないという説がるのです。実際に『詩経』をデジタル化したWebサイトで「草臥」の文字列で簡易的に検索をかけてもヒットしません。ですから、この語源説の真偽については注意が必要です。
「くたびれる」の文語体の動詞は「くたびる」なのですが、この動詞を分析すると語の前半が「kut」という音の並びになっています。この「kut」は「朽ちる」の意味の「朽つ」と関連すると言われており、ここからも「長い時間をかけて」物が悪くなるという意味内容を読み取れるでしょう。
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