今回は「結合組織」という用語について学んでいこう。

生物のからだは様々に分化した細胞から構成されている。細胞を「組織」というグループにまとめて考えることがありますが、組織の中でも特に多様でわかりにくいのが「結合組織」です。どんなグループなのかを知り、具体例などを頭に入れていこう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

1.まずは”組織”について知る

結合組織(けつごうそしき)とは、動物のからだを構成する”組織”を4つのグループに分けたうちの一つです。結合組織について知るには、まず”組織”というものについて基礎知識を得ておく必要があるでしょう。

組織とは?

あらゆる生物は細胞からなります。単細胞生物であればたった一つの細胞で、多細胞生物であればいくつかの細胞が集まってそのからだを構成していますね。

多細胞生物では、同じ形態、同じ機能をもった細胞がある程度集まり、協調してはたらいています。そのような、「同じ形態、同じ機能の細胞のあつまり」組織とよぶのです。

生物のからだにみられる組織は一種類ではありません。動物の場合、各組織を大きく4つのグループに分けることができます。

image by Study-Z編集部

結合組織以外の3つの組織について簡単にご紹介します。

結合組織以外の組織

上皮組織は、動物の個体や臓器の表面を覆っている組織です。

例えば、皮膚の一番外側を覆う表皮。表皮は細菌の侵入を防ぎ、紫外線から体の内部を守るなど、からだを守るための重要な機能をもっています。また、ホルモンや酵素、粘液などを分泌する細胞や、栄養を吸収する機能のある細胞なども上皮組織に含まれるのです。

筋組織は、筋細胞(筋繊維)からなる組織です。私たちのからだを支え、動かす筋肉は筋組織などが集まってできた器官ですね。筋肉は構成する細胞のタイプによって、横紋筋と平滑筋の2種類に分けることができます。

神経組織は神経系を構成する組織です。刺激(興奮)を伝える神経細胞と、神経細胞の周りでその構造およびはたらきを維持する神経膠細胞(グリア細胞)がふくまれます。

私たちが外界の刺激を認識したり、思うように体を動かせるのはこれらの神経組織のおかげですね。

ではいよいよ、今回の本題である結合組織のお話にうつりましょう。

2.結合組織とは?

結合組織は「上皮組織や筋組織、神経組織の間をつなぐ(結合する)組織」です。

もう少しかみ砕いた言い方をすれば「上皮組織、筋組織、神経組織以外の組織」だといってしまうこともできます。

\次のページで「狭義の結合組織(固有結合組織)」を解説!/

大ざっぱですが、こう説明するのが一番だとおもいます。結合組織に含まれる細胞はとても多様なんです。結合組織全体に共通することといえば、「中胚葉から生じた間充織(かんじゅうしき)という組織に由来する」という点でしょうか。

この結合組織は、一般的に大きく2つのグループに分けることができます。狭義の結合組織(固有結合組織)と特殊結合組織です。結合組織のなかでも特殊結合組織に分類されるものは、やや特別な存在。狭義の結合組織(固有結合組織)に当てはまるものが、”結合組織らしい結合組織”だと考えてください。

狭義の結合組織(固有結合組織)

狭義の結合組織(固有結合組織)は、細胞外基質(細胞外マトリックス)とよばれる物質を生み出す細胞によって構成されます。細胞そのものだけでなく、細胞外基質も結合組織に含めて考えていきましょう。

Illu connective tissues 1.jpg
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細胞外基質は、流動性のある成分や繊維状のものなどがあり、細胞と細胞の間を埋めるように存在している成分。繊維状の細胞外基質には、膠原繊維(こうげんせんい)、弾性繊維(だんせいせんい)、細網繊維(さいもうせんい)があります。

これらの繊維性成分のうち、最もよくみられるのは膠原繊維です。膠原繊維はタンパク質の一種であるコラーゲンからなります。

弾性線維はエラスチンというタンパク質を主成分とした繊維です。名前の通り弾性が強く、ゴムのように伸ばしたり縮めたりすることができます。

細網繊維はコラーゲン(Ⅲ型コラーゲン)が網目上になった構造の繊維です。

これらの繊維をふくんだ結合組織は、繊維(とくにコラーゲン)がどれくらい含まれているかによって、疎性結合組織密性結合組織に分類されます。

疎性結合組織は、ふくむ繊維の量が少なめの結合組織です。肌(表皮)のさらに内側でその構造を支える皮下組織のほか、消化管の粘膜、骨髄など、全身のあらゆる場所で見られます。

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結合組織は前述の通り、「繊維などの細胞外基質と、それを産生する細胞」からなるのでしたよね。その細胞要素として脂肪細胞がたくさん含まれている組織は、とくに脂肪組織とよび分けられたりもするんです。

\次のページで「特殊結合組織」を解説!/

一方で、繊維を多めに含んでいるものは密性結合組織に分類されます。コラーゲンやエラスチンを多く含み、非常に強靭。力のかかるような場所に使われることが多いです。表皮直下にある真皮靭帯、骨膜などがこの密性結合組織からなります。どれも強さが必要な部分です。

なお、細網線維が多く含まれる細網組織というものもあります。リンパ節やひ臓、骨髄などの造血器官などに存在している、網状の組織です。

特殊結合組織

典型的な結合組織に含めるのは難しい、少し特別なものを特殊結合組織というグループでまとめます。代表的なものは血液、そして軟骨です。

Illu connective tissues 2.jpg
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私たちのからだの構成要素として、よく知られている血液。結合組織に含まれるのですが、”結合”のイメージが薄いためか、高校生物を学習する生徒さんには忘れられがちです。

血液は細胞として血球(赤血球・白血球・血小板)が存在し、液体成分である血しょうは、それらの細胞外基質とみなすこともできます。

からだを支持するも、結合組織の仲間です。脊椎動物の成体では、骨格のほぼすべてを構成します。骨と、後述する軟骨をまとめて「支持組織」とよぶこともあるんです。

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軟骨は、軟骨細胞とその周りの細胞外基質(軟骨基質)からなります。軟骨の細胞外基質の主成分は、糖とタンパク質の複合体であるプロテオグリカン。サプリメントでも販売されているコンドロイチン硫酸という成分は、このプロテオグリカンの一種です。

軟骨基質の成分によって、軟骨はさらに細かく分類されます。関節や肋骨に多い硝子軟骨、椎間板などにみられ、コラーゲンも多く含む繊維軟骨、耳介などにみられる弾性軟骨あたりが代表的でしょう。

多様すぎる「結合組織」というグループ

「組織のうち、上皮組織でも筋組織でも神経組織でもないもの」。あまりに漠然とした説明のようでしたが、具体例を見てみると、そうまとめるのが一番だということがお分かりいただけたかと思います。かなり専門的な内容にも踏み込んでみましたが、高校生物レベルであれば、具体的な結合組織の例をいくつか挙げられるようになればOKです。

今回の内容に関連して、他の結合組織についての解説記事も見ておくのをオススメします。他の組織をよく知ることで、結合組織というものが、よりはっきりと浮かび上がってくるでしょう。

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理科生物細胞・生殖・遺伝

「結合組織」って何?上皮組織や筋組織などにも触れながら現役講師が簡単にわかりやすく解説します

今回は「結合組織」という用語について学んでいこう。

生物のからだは様々に分化した細胞から構成されている。細胞を「組織」というグループにまとめて考えることがありますが、組織の中でも特に多様でわかりにくいのが「結合組織」です。どんなグループなのかを知り、具体例などを頭に入れていこう。

大学で生物学を学び、現在は講師としても活動しているオノヅカユウに解説してもらうぞ。

ライター/小野塚ユウ

生物学を中心に幅広く講義をする理系現役講師。大学時代の長い研究生活で得た知識をもとに日々奮闘中。「楽しくわかりやすい科学の授業」が目標。

1.まずは”組織”について知る

結合組織(けつごうそしき)とは、動物のからだを構成する”組織”を4つのグループに分けたうちの一つです。結合組織について知るには、まず”組織”というものについて基礎知識を得ておく必要があるでしょう。

組織とは?

あらゆる生物は細胞からなります。単細胞生物であればたった一つの細胞で、多細胞生物であればいくつかの細胞が集まってそのからだを構成していますね。

多細胞生物では、同じ形態、同じ機能をもった細胞がある程度集まり、協調してはたらいています。そのような、「同じ形態、同じ機能の細胞のあつまり」組織とよぶのです。

生物のからだにみられる組織は一種類ではありません。動物の場合、各組織を大きく4つのグループに分けることができます。

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結合組織以外の3つの組織について簡単にご紹介します。

結合組織以外の組織

上皮組織は、動物の個体や臓器の表面を覆っている組織です。

例えば、皮膚の一番外側を覆う表皮。表皮は細菌の侵入を防ぎ、紫外線から体の内部を守るなど、からだを守るための重要な機能をもっています。また、ホルモンや酵素、粘液などを分泌する細胞や、栄養を吸収する機能のある細胞なども上皮組織に含まれるのです。

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