
端的に言えばてにをはの意味は「日本語の助詞や助動詞を表す言葉の一つ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
博士(文学)の学位を持ち、日本語を研究している船虫堂を呼んです。一緒に「てにをは」の意味や例文、類語などを見ていきます。
ライター/船虫堂
博士(文学)。日頃から日本語と日本語教育に対して幅広く興味と探究心を持って生活している。生活の中で新しい言葉や発音を収集するのが趣味。モットーは「楽しみながら詳しく、わかりやすく言葉をご紹介」。
「てにをは」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto
それでは早速「てにをは」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。「てにをは」の、現代使われている一般的な意味は日本語の助詞に相当する言葉、つまり「て」、「に」、「を」、「は」に類する言葉、もしくはもう少し広く意味をとって助詞に助動詞を加えたいわゆる「付属語」一般のことを言います。
なお、この「てにをは」という不思議な言葉(字)の並びは、平安時代以降行われるようになったといわれる「漢文訓読」の方法が由来です。
「てにをは」の意味は?
「てにをは」について、以下のような歴史的経緯の説明があります。『精選版 日本国語大辞典』を参照してみましょう。
出典:『精選版 日本国語大辞典』(小学館)「弖爾乎波・手爾遠波」より
1.で示されている意味が最も語源に近い意味合いでの用法です。漢文の訓読は、そもそも中国大陸から渡ってきた古文献を日本人が日本語の文法に置き換えて読むことで、現代人の我々は訓点、つまり返り点や送り仮名、句読点を手掛かりに読んでいます。それは何のためかというと、古代中国語と日本語(文語体)は言葉を並べる仕組みが異なるため、日本語の読み方に即して読むためには辞書の記述にあるような助詞や助動詞、活用語尾などを補って読む必要があるからです。その、漢文訓読の際に補う言葉という意味で「てにをは」と言う言葉はそもそも使われていました。
2.と3.はそこから派生した意味合いで、用法とか規範というニュアンスを含みます。2.は言葉遣いの文法的な規範の意味で使われます。これは「てにをはがおかしい」など、現代でも通用する用法なのではないでしょうか。3.となるとより大きな括りとなり、「てにおは」、つまり助詞や助動詞が繋ぐ話の関係を指す用法です。
ここまでが一般的な用法と言えるでしょう。
4.は日本語学の文法研究の専門用語です。大槻文彦(1847-1928)は日本初の近代的国語辞典『言海』の編纂者として知られる国語学者ですが、辞書『言海』の編纂と同時に日本語の文法研究にも着手しており、その功績はのちの国語学、日本語学の文法研究に多大な影響を与えました。大槻文彦が活躍した明治初期の時代は多くの学者たちが西洋の知見を採り入れながら日本語文法の整備に取り組んだ時代ですが、大槻文彦がまとめた、いわゆる「大槻文法」の中にこの用語が出てくるのです。現在一般に使用されている文法用語でいう「助詞」にあたります。
「てにをは」の語源は?
次に「てにをは」の語源を確認しましょう。これは『精選版 日本国語大辞典』の[語誌]の項目が役に立ちます。なぜ、漢文訓読で補う言葉のことを「てにをは」と呼んだのか。それは昔の日本人が開発した漢文訓読法である「ヲコト点」が由来となっているのです。
「ヲコト点」とは、平安時代中期から中世にかけておもに用いられたといわれる漢文訓読のためにほどこす補助記号で、流派によってさまざまな点の打ち方があるのですが、学術の分野で朝廷に仕えた家系である「博士家」で使用された点の並びからヲコト点と呼ばれるようになりました。そして、そのヲコト点の点の並びが「てにをは」の語源になっているのです。
ちなみに「てにをは」の由来となったヲコト点の並びは以下の通り。右上から下に読んでいくと「ヲ・コ・ト」となり、四隅を左下から右回りに読んでいくと「テ・ニ・ヲ・ハ」となりますね。
ニ ム ヲ
〇━━━〇━━━〇
┃ ┃
┃ 〇コト
カ〇 〇 ┃
┃ ノ 〇ト
┃ ┃
〇━━━〇━━━〇
テ ス ハ
\次のページで「「てにをは」の使い方・例文」を解説!/