この記事では「取り急ぎ」について解説する。

端的に言えば取り急ぎの意味は「大変急いでいる様子」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「取り急ぎ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「取り急ぎ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「取り急ぎ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「取り急ぎ」の意味は?

「取り急ぎ」には、次のような意味があります。

たいへんに急いでいるさまを表わす語。主に手紙などで用いられる。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「とり‐いそぎ」

「取り急ぎ」は、「大変に急いでいる様子」を意味します。ビジネスの場においてはメールなどで用いられることが多い言葉です。今は急いでいて十分に対応することができないものの、用件だけ伝えたいといった局面で使われます。メールの最後につけるとそれらしいように感じることができ、便利に思われる言葉ですが、使う際には注意が必要な言葉です。そのことについては後述します。

「取り急ぎ」の語源は?

次に「取り急ぎ」の語源を確認しておきましょう。「取り急ぎ」は動詞「取り急ぐ」がもとの形です。「取り急ぐ」の「取り」は語調を強めるための接頭語で、「手に取る」などの「取る」という意味は果たしていません。「大変に急ぐ」という意味を持つ「取り急ぐ」を副詞形にしたものが「取り急ぎ」です。

「取り急ぎ」の日本文学における用例は江戸時代から見ることができ、井原西鶴の『西鶴諸国はなし』など、井原西鶴の作品を中心に用例が発見されています。

\次のページで「「取り急ぎ」の使い方・例文」を解説!/

「取り急ぎ」の使い方・例文

「取り急ぎ」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.取り急ぎメールにてご報告させていただきます。

2.取り急ぎ見積書をお送りいたします。

3.取り急ぎ、お知らせまで。

4.ご用件が取り急ぎでしたら、解決にはこちらの方法がございます。

「取り急ぎ」は、現代においてはメールや手紙に使うことが多いです。先ほども述べましたが、急いでいて用件だけ伝えたいときに使う言葉として適切でしょう。一つ目から三つ目の例文のような形で使います。三つ目の「取り急ぎ、お知らせまで。」という例は「取り急ぎお知らせいたします。」という言葉を省略した形です。

このように、一見すると使うだけで様になるような言葉、「取り急ぎ」ですが、使う際には場面を選ばなければ大変失礼になってしまいます。

まず、「取り急ぎ」という言葉は上司や取引先などの目上の人に使うのは好ましくありません。「取り急ぎ」は「十分な対応ができない」という意味も内包しているので、この言葉を使うだけで真摯さがないように思われます。どうしても使う際には、言葉を変えるか、敬語を使い、またお詫びの言葉も添えましょう。また、「取り急ぎ」はお礼の連絡にも使えません。先ほどと同じく、失礼に当たります。

また、四つ目の例文のように、急いでいる場面に何かをすすめる際にも「取り急ぎ」は使うことが可能です。

「取り急ぎ」の類義語は?違いは?

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ここでは、「取り急ぎ」の類義語について見ていきましょう。それぞれの類義語と「取り急ぎ」がどのような点で異なるかについても紹介していきます。

その1「一旦」

「一旦」は「本格的でなく、かりそめであるさま。また、持続的でなく一時的であるさま。しばらくの間。一時的に。ちょっと。」という意味を持ちます。「取り急ぎ」と同じく「本格的ではない」という意味を含んでいて、「取り急ぎ」よりもやわらかい表現であるので「取り急ぎ」という言葉を使うのに躊躇する場面では「一旦」を使うと良いでしょう。

「一旦」と「取り急ぎ」との違いは、「取り急ぎ」には急いでいる、という意味合いが含まれているものの「一旦」にはそれがないという点です。

\次のページで「その2「可及的速やかに」」を解説!/

その2「可及的速やかに」

「可及的速やかに」は「かきゅうてきすみやかに」と読みます。意味は「及ぶかぎり速く。できるだけ速く。」です。「取り急ぎ」と同じように、はやくしたい、はやく伝えたいというニュアンスが含まれています。

「可及的速やかに」と「取り急ぎ」で異なる点は、「可及的速やかに」はあくまで自分が行動を起こしていることへの言葉であるということです。相手からの依頼に対する返答で使うと失礼に当たります。また、「取り急ぎ」が相手にくだけた印象を与えるのに対し、「可及的速やかに」は相手に堅苦しい印象を与えることが多いです。

その3「至急」

「至急」は「非常に急ぐこと。大急ぎ。また、事態が非常にさし迫っているさま。」という意味です。「大変急いでいる様子」という意味を持つ点で、「取り急ぎ」と類似していると言うことができるでしょう。

「至急」と「取り急ぎ」で異なる点は、「取り急ぎ」は「急いでいるので十分な対応ができませんが」という意味を含んでいるのに対し「至急」はただ単に「急いで」という意味であるということです。また、「至急行います」は「最大限のパフォーマンスをする」というニュアンスを持つことが多いと言えるでしょう。

「取り急ぎ」の対義語は?

ここでは、「取り急ぎ」の対義語を紹介していきます。「取り急ぎ」は「大変急いでいる様子。とりあえず。」という意味を持っているため、その反対の言葉には「ゆっくりとしている」という意味を持つものが適しているでしょう。

その1「おもむろに」

「おもむろに」は「徐に」と書き、「落ち着いて、ゆっくりと行動するさま。」という意味を持ちます。たまに「おもむろに」の意味を「突然。急に。」という意味で解釈する人がいますが、それは誤りです。

その2「遅ればせながら」

「遅ればせながら」は、「遅れてしまいましたが」の意味を持ちます。

ビジネスでも使うことができるため、「取り急ぎ」と対の意味で使うことができる言葉だと言うことができるでしょう。

「取り急ぎ」の英訳は?

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ここでは、「取り急ぎ」の英訳について見ていきましょう。

\次のページで「その1「hurry」」を解説!/

その1「hurry」

「hurry」は「急いで。大急ぎ。」という意味です。「取り急ぎ」のもともとの意味に即した英語と言うことができるでしょう。

ビジネスにおける「取り急ぎ」として使う場合にも「hurry」をそのまま使うことができます。

その2「in haste」

「in haste」は「取り急ぎ」という意味です。ビジネスにおける「取り急ぎ」と全く同じように使うことができ、手紙やメールに使うこともできます。使う際には文頭や文末に置きましょう。

その3「just a quick note 〜」

「just a quick note」も「取り急ぎ」という意味で、「a quick note」は「簡単なメモ」という意味です。「取り急ぎ」にかなり近い表現で使うことができますが、失礼に当たることもあるので使う時には注意が必要でしょう。

「取り急ぎ」を使いこなそう

この記事では「取り急ぎ」の意味・使い方・類語などを説明しました。「取り急ぎ」は便利な言葉ですが、使い方には気を付けなければなりません。また、なるべく「取り急ぎ」という言葉を使わないような在り方を目指したいですね。

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国語言葉の意味

「取り急ぎ」の意味や使い方は?例文や類語を文学院生がわかりやすく解説!

この記事では「取り急ぎ」について解説する。

端的に言えば取り急ぎの意味は「大変急いでいる様子」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「取り急ぎ」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「取り急ぎ」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「取り急ぎ」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「取り急ぎ」の意味は?

「取り急ぎ」には、次のような意味があります。

たいへんに急いでいるさまを表わす語。主に手紙などで用いられる。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「とり‐いそぎ」

「取り急ぎ」は、「大変に急いでいる様子」を意味します。ビジネスの場においてはメールなどで用いられることが多い言葉です。今は急いでいて十分に対応することができないものの、用件だけ伝えたいといった局面で使われます。メールの最後につけるとそれらしいように感じることができ、便利に思われる言葉ですが、使う際には注意が必要な言葉です。そのことについては後述します。

「取り急ぎ」の語源は?

次に「取り急ぎ」の語源を確認しておきましょう。「取り急ぎ」は動詞「取り急ぐ」がもとの形です。「取り急ぐ」の「取り」は語調を強めるための接頭語で、「手に取る」などの「取る」という意味は果たしていません。「大変に急ぐ」という意味を持つ「取り急ぐ」を副詞形にしたものが「取り急ぎ」です。

「取り急ぎ」の日本文学における用例は江戸時代から見ることができ、井原西鶴の『西鶴諸国はなし』など、井原西鶴の作品を中心に用例が発見されています。

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