この記事では「痛み入ります」について解説する。

端的に言えば痛み入りますの意味は「恐縮する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「痛み入ります」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「痛み入ります」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「痛み入ります」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「痛み入ります」の意味は?

「痛み入ります」は「痛み入る」に丁寧語の「ます」がついた形です。そのため、ことばの意味を知るには「痛み入る」の意味を調べましょう。「痛み入る」には、次のような意味があります。

1.他人から寄せられた親切、好意、手厚い待遇などを、自分にはもったいないこととして心に深くすまないと思う。恐縮する。恐れ入る。

2.うまく意表をつかれて、やられたと心に強く感じる。また、あつかましい態度などにあきれる。恐れ入る。

3.苦痛に思う。弱る。困る。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「いたみ‐い・る」

「痛み入る」は、「恐縮する。恐れ入る。弱い。」という意味を持ちます。実際に使う際は、他者からの厚意に対する感謝を伝える場面に用い、敬語表現として「ます」を付けるのが一般的です。

「痛み入ります」の語源は?

次に「痛み入ります」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、「痛む」「~入る」「ます」がつながってできたという成り立ちがあります。

「痛む」は古語において「苦痛に感じる」「深く感じる」という意味です。鎌倉時代に成立した『松浦宮物語』において、「いみじういたみ思ふべき。」という一節があります。その他、『徒然草』などにも子の用例を確認することが可能です。「~入る」は「泣き入りて」「寝いり給ひにけり」のように、多く動詞の連用形に接続して「すっかり~する」という意味を持ちます。

「痛み入ります」はこれらがつながってできたと考えることが可能です。

\次のページで「「痛み入ります」の使い方・例文」を解説!/

「痛み入ります」の使い方・例文

「痛み入ります」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.ご厚情痛み入ります。

2.本日は、我々のためにご足労賜りまして、まことに痛み入ります。

3.真心のこもったそのお言葉、痛み入ります。

4.じきじきのお出迎え、痛み入ります。

「痛み入ります」は同僚や後輩など、自分より目下のものや同じ程度の立場の人には使いません。また、家族などの距離の近い人に使うことも一般的ではないでしょう。「痛み入ります」は、上司や取引先など、自分より目上の人に対して使うのが適切です。申し訳なさと感謝が入り混じった際に使うことが多いと言えるでしょう。

また、「痛み入ります」という言葉を使う時、注意しなければならないこととして、「嫌味」に取られやすいということがあります。特に、対面で直接話す場面などは、相手に強い印象を与えてしまいかねません。「痛み入ります」という言葉は、「痛む」の意味が元々「苦痛に感じる」であるため、相当な感謝の意を伝えたい場面ではないと言葉を皮肉のために使ったと捉えられてしまうことがあります。メールなどの文面においては、相手に丁寧な印象を与え、「痛み入ります」という言葉が適切である場合が多いです。

「痛み入ります」の類義語は?違いは?

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ここでは、「痛み入ります」の類義語について見ていきましょう。それぞれの類義語と「痛み入ります」がどのような点で異なるかについても紹介していきます。

その1「恐れ入ります」

「恐れ入ります」は、「相手の好意に対し、かたじけなく思う。」という意味です。「痛み入ります」の意味に「恐れ入ります」という意味も含まれるため、二つの言葉はかなり近い意味を持っていると言えるでしょう。

「痛み入ります」と「恐れ入ります」という言葉で異なる点は、「恐れ入ります」の方には謝罪や申し訳ないという感情が多いというところです。何かお願い事をするとき、「恐れ入りますが~」と切り出すことができますが、「痛み入ります」にはそれができません。また、「恐れ入る」の意味に「あやまちを悟って詫びる。」という意味があるので、「恐れ入ります」にはお詫びのニュアンスが強いと言えます。

\次のページで「その2「恐縮です」」を解説!/

その2「恐縮です」

「恐縮です」の意味は、「相手に迷惑をかけたり、相手から厚意を受けたりして申訳なく思うこと。」です。「恐縮です」も「痛み入ります」も、厚意に対し申し訳なく思うという点で類似しています。

「恐縮です」と「痛み入ります」との間で異なる点は、「恐縮です」の方が口語的で、かつフランクな印象を与えやすいというところです。「痛み入ります」はビジネスメールなどのかしこまった場面でも使うことができますが、「恐縮です」ではそれは一般的ではありません。

その3「忝うございます」

「忝うございます」は「かたじけのうございます」と読みます。「忝い」の第一義は「高貴なものが、いやしいものに接していることがもったいない。おそれ多い。恐縮だ。申しわけない。」です。「恐れ多い」という意味が含まれているというところが「痛み入ります」と類似しています。

「痛み入ります」と「忝うございます」で異なる点は、「忝うございます」の方が丁寧であるというところです。「忝い」という言葉が、下賤のものが高貴なものに対して使う言葉なので、「痛み入ります」よりも自分を下げて相手を立てる役目が強いと言うことができるでしょう。ただ、その分使う場面に気を付けないと皮肉にとられてしまいます。

「痛み入ります」の対義語は?

ここでは、「痛み入ります」の対義語を見ていきましょう。「痛み入ります」は「恐縮する」という意味の言葉なので、対義語としては「申し訳なく思わない」「何も感じない」といったニュアンスのものが適切でしょう。

その1「無関心」

「無関心」は「気にかけないこと。興味がないこと。」という意味です。「痛み入ります」が相手の厚意に感じ入っているのに対し、「無関心」は相手の行動そのものに興味を示さないため、相手のすることに何かを感じるということがありません。

「無感動」もそういった意味では「無関心」と類似していますね。

その2「当然」

「当然」は、「その事柄が、どう考えてもそうあるべきであること。そうであることが、なんら疑問の余地のないこと。あたりまえであること。また、そのさま。」という意味です。「痛み入ります」が、相手の行動に感謝の意を示し、また申し訳ないとさえ感じるのに対し、「当然」は相手の行動が当たり前とするため、感謝も申し訳なさもないと言えるでしょう。

「痛み入ります」の英訳は?

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ここでは、「痛み入りますの英訳について見ていきましょう。

\次のページで「「be greatly obliged」」を解説!/

「be greatly obliged」

「be gratly obliged」はまさに「痛み入ります」という意味の言葉です。「greatly」は「非常に」、「obliged」は「ありがたく思う」という意味を持ちます。この連語でそのまま「痛み入ります」という言葉が表現できますね。

「痛み入ります」を使いこなそう

この記事では「痛み入ります」の意味・使い方・類語などを説明しました。この言葉を、誰かから使われた時には「お力になれて何よりです」など返すようにしましょう。

「痛み入ります」は非常に丁寧な言葉なので、場面を選びつつ使っていきたいですね。

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国語言葉の意味

「痛み入ります」の意味や使い方は?例文や類語を文学院生がわかりやすく解説!

この記事では「痛み入ります」について解説する。

端的に言えば痛み入りますの意味は「恐縮する」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「痛み入ります」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「痛み入ります」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「痛み入ります」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「痛み入ります」の意味は?

「痛み入ります」は「痛み入る」に丁寧語の「ます」がついた形です。そのため、ことばの意味を知るには「痛み入る」の意味を調べましょう。「痛み入る」には、次のような意味があります。

1.他人から寄せられた親切、好意、手厚い待遇などを、自分にはもったいないこととして心に深くすまないと思う。恐縮する。恐れ入る。

2.うまく意表をつかれて、やられたと心に強く感じる。また、あつかましい態度などにあきれる。恐れ入る。

3.苦痛に思う。弱る。困る。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「いたみ‐い・る」

「痛み入る」は、「恐縮する。恐れ入る。弱い。」という意味を持ちます。実際に使う際は、他者からの厚意に対する感謝を伝える場面に用い、敬語表現として「ます」を付けるのが一般的です。

「痛み入ります」の語源は?

次に「痛み入ります」の語源を確認しておきましょう。この言葉は、「痛む」「~入る」「ます」がつながってできたという成り立ちがあります。

「痛む」は古語において「苦痛に感じる」「深く感じる」という意味です。鎌倉時代に成立した『松浦宮物語』において、「いみじういたみ思ふべき。」という一節があります。その他、『徒然草』などにも子の用例を確認することが可能です。「~入る」は「泣き入りて」「寝いり給ひにけり」のように、多く動詞の連用形に接続して「すっかり~する」という意味を持ちます。

「痛み入ります」はこれらがつながってできたと考えることが可能です。

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