この記事では、「拘泥」について解説する。
「拘泥」って言葉はどこか身近に見たことがあるけど、漢字の読み方からして難しいよな。「拘る」って書かれるとある程度意味をつかめるかもしれないが、この記事では読み方から解説してもらうことにしよう。ほかにも「拘泥」は、ある心理状態を示すのにも使われるぞ。このあたりも説明してもらおうか。
今回は執着心が強くてしばしば周りがみえなくなるライターのぷーやんを呼んです。「拘泥」の意味と使われ方について、説明してもらう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。ひとつのことに捉われて周囲が見えなくなる性格。意識して「拘泥」をやめることで頭がすっきりすることを体感したものの、油断すると度々「拘泥」に陥っている。

まずは「拘泥」の意味から解説!

image by iStockphoto

小説のタイトルにもなっている「拘泥」。かなり難しそうな印象の言葉ですよね。使いこなせるのか心配になってしまいますが、まずは「拘泥」の意味と例文をご紹介していきます。

辞書にみる「拘泥」

まず「拘泥」の読み方は、「こうでい」です。それでは「拘泥」を辞書で引いてみましょう。

[名](スル)こだわること。必要以上に気にすること。「勝ち負けに―する」
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「拘泥」

「拘泥」の「拘」は訓読みすると、「拘る(こだわ-る)」です。したがって「拘泥」は、拘りが泥沼にはまるような意味合いの言葉と言えそうですね。

例文を参考に「拘泥」を使ってみよう!

次に「拘泥」の使い方を例文で確認してみましょう。

1.うちのチームのコーチは勝敗に拘泥しすぎているために、内容の反省がおろそかになっている。
2.彼は卒論に載せる参考文献の数に拘泥している。多数の論文を読むことを知的だと思っているようだが、論旨に直接絡まないものまで掲載するのは、いかがなものかと思う。
3.過去の出来事に拘泥するより、あなたの目前の状況をどうするか考えたほうが建設的ではないか。

いずれの例文の「拘泥」も、ネガティブな意味合いと捉えられますね。なにかを成し遂げるために一意専心になることも重要ですが、必要のないことやよくない影響を与えるものについては、早めに切り捨てることも大切です。

\次のページで「「拘泥」の類義語4選!」を解説!/

「拘泥」の類義語4選!

桜木先生のおっしゃる通り、言葉の意味を精確につかむには、類義語や対義語も知っておいたほうがいいでしょう。そこで次に、「拘泥」の類義語を4つご紹介します。

「執着(しゅうちゃく)」:こころを捉われて離れられない

「執着」は日常会話でも使うことのある言葉でしょうが、実は仏教用語です。あることや物に捉われて、修行の障害になる心の動きと定義されます。

「狷介(けんかい)」:人と和合しない

「狷」は考えを曲げないこと、「介」はかたいという意味です。これらが組み合わさって、「自分の意思を曲げずに他人に合わせない」という意味に。

「頑固」:かたくなで意地を張ること

言わずと知れた言葉ですね。意地を張って譲らないところが、「拘泥」のこだわりから抜け出さないところと共通しています。

「固陋(ころう)」:がんこで見聞が狭いこと

「固」はかたい、「陋」は狭いことを意味する漢字です。これらが足されると「頑固で見識が狭い」という意味になります。さらに「固陋蠢愚(ころうしゅんぐ)」という四字熟語になると、「他人の意見を聞かず視野が狭いため、柔軟な考えができない」という意味に。

「拘泥」の対義語はなにがある?

image by iStockphoto

類義語の次は、「拘泥」の対義語をみていきましょう。

「無頓着」:全く気にかけないこと

気にかけることを意味する「頓着」が「無い」ということで、なにかを気にかけすぎる「拘泥」の対義語で言えます。ちなみに「頓着」の読み方は、「とんちゃく」と「とんじゃく」の2通りです。

\次のページで「「諦念(ていねん)」:あきらめの気持ち」を解説!/

「諦念(ていねん)」:あきらめの気持ち

まさに「拘泥」の対義語と言える「諦念」ですが、実は「あきらめる気持ち」のほかに「悟りに至った状態」という仏教上の意味も。この場合は「たいねん」と読みます。ネガティブな印象のある「諦念」ですが、「迷いが晴れてあきらめの境地に至る」という側面もあわせ持つ言葉です。

「磊落(らいらく)」:大らかで小さいことにこだわらない

「磊落」は「高く険しい山」や「石が多く大きい様子」表し、度量が大きく些事にこだわらないさまも意味します。さらに似た意味の「豪放」と合わさって、意味が強調された「豪放磊落」という四字熟語にも。

「拘泥」は英語だとどうなる?

「拘泥」の意味・類義語・対義語とみてきましたが、この難しい言葉が英語でどのように言われるのかも気になるところ。ここでは、「拘泥」の英語訳を2つ挙げます。

adhering to:拘泥

「付着する」を意味する「adhere」の現在分詞+toで、日本語訳はぴったり「拘泥」となります。

sticking to:踏襲・吸着

「突き刺す」の英語「stick」のやはり現在分詞+toで、「踏襲」や「吸着」を意味する言葉に。「踏襲」の意味は「既存のやり方の通りにやること」であり、今あるものにこだわる「拘泥」も「sticking to」の和訳として適当と言えるでしょう。

「拘泥」は心理学にも登場!「心理的拘泥現象」とは?

image by iStockphoto

集団があることに「拘泥」してしまう、「心理的拘泥現象」とよばれる心理状態があります。下手をすると取り返しのつかない事態を招いてしまうこの現象は、いったいどのようにして起こるのでしょうか。

誤りだと認められない!「心理的拘泥現象」

「三人寄れば文殊の知恵」と言うように、一人よりも仲間たちと考えたほうが、いい案が出てくることも多いでしょう。しかし同調圧力がはたらくなどして合理的な判断能力が失われると、「集団的浅慮」が起こります。こうした浅慮により決定された事項は多くの場合、次のような理由で間違っていても覆されません。

\次のページで「「心理的拘泥現象」が起こりやすい環境とは」を解説!/

・これまでにかかった時間や労力を無駄にしたくない
・間違いだったと認めたくない
・リーダーが裸の王様(強力なリーダーとイエスマンばかりの組織)

このように『(間違っているとわかっていても)一度決定したことにこだわり続けてしまう』ことを、「心理的拘泥現象」と呼びます。

「心理的拘泥現象」が起こりやすい環境とは

「心理的拘泥現象」は、間違いを間違いだと『理解できない/認められない/指摘できない』組織で起こりやすいものです。一般的には、固定された人間関係の中で、外部とのやり取りがあまりなく、風通しの悪い組織がこれにあたるでしょう。

救世主は悪魔?「心理的拘泥現象」への対策方法

「心理的拘泥現象」のもととなる「集団的浅慮」を避けるための方法として、「悪魔の擁護者」を設定することが広く知られています。「悪魔の擁護者」とは、集団の意思決定の場において、常に反対の立場を取る役割のこと。

「悪魔の擁護者」を設定することで、反対意見が出ることが当たり前になり、ほかの人も意見を言いやすくなるのだとか。このように組織の決定事項を見直すチャンスを作り、一度決まってしまったことでも即座に変更できるようなフットワークの軽さが大切ですね。

「拘泥」対策には客観的・機械的な視点を

この記事では「拘泥」について、意味・類義語・対義語・英語と、包括的に解説しました。また「心理的拘泥現象」を例に、「拘泥」の負の影響にも触れています。

「拘泥」は拘り過ぎて泥沼にはまった状態です。ひとつのことに集中してこだわることが、その道で大成するのに重要であるとは、誰しも実感することでしょう。しかし一方で、自分の行いを省みて必要であれば変えていくことも、目標を成就するのに大切なこと。これは個人でも集団でも同じように言えることです。「心理的拘泥」に引っかからないためには、冷静に事実を認めて、情にほだされず機械的に対策を練ることが肝心。

この記事が「拘泥」を避けるため、あるいは抜け出すための参考になれば幸いです。

" /> 人の心理にも現れる?「拘泥」の意味や読み方・例文・類義語もwebライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

人の心理にも現れる?「拘泥」の意味や読み方・例文・類義語もwebライターがわかりやすく解説!

この記事では、「拘泥」について解説する。
「拘泥」って言葉はどこか身近に見たことがあるけど、漢字の読み方からして難しいよな。「拘る」って書かれるとある程度意味をつかめるかもしれないが、この記事では読み方から解説してもらうことにしよう。ほかにも「拘泥」は、ある心理状態を示すのにも使われるぞ。このあたりも説明してもらおうか。
今回は執着心が強くてしばしば周りがみえなくなるライターのぷーやんを呼んです。「拘泥」の意味と使われ方について、説明してもらう。

ライター/ぷーやん

webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。ひとつのことに捉われて周囲が見えなくなる性格。意識して「拘泥」をやめることで頭がすっきりすることを体感したものの、油断すると度々「拘泥」に陥っている。

まずは「拘泥」の意味から解説!

image by iStockphoto

小説のタイトルにもなっている「拘泥」。かなり難しそうな印象の言葉ですよね。使いこなせるのか心配になってしまいますが、まずは「拘泥」の意味と例文をご紹介していきます。

辞書にみる「拘泥」

まず「拘泥」の読み方は、「こうでい」です。それでは「拘泥」を辞書で引いてみましょう。

[名](スル)こだわること。必要以上に気にすること。「勝ち負けに―する」
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「拘泥」

「拘泥」の「拘」は訓読みすると、「拘る(こだわ-る)」です。したがって「拘泥」は、拘りが泥沼にはまるような意味合いの言葉と言えそうですね。

例文を参考に「拘泥」を使ってみよう!

次に「拘泥」の使い方を例文で確認してみましょう。

1.うちのチームのコーチは勝敗に拘泥しすぎているために、内容の反省がおろそかになっている。
2.彼は卒論に載せる参考文献の数に拘泥している。多数の論文を読むことを知的だと思っているようだが、論旨に直接絡まないものまで掲載するのは、いかがなものかと思う。
3.過去の出来事に拘泥するより、あなたの目前の状況をどうするか考えたほうが建設的ではないか。

いずれの例文の「拘泥」も、ネガティブな意味合いと捉えられますね。なにかを成し遂げるために一意専心になることも重要ですが、必要のないことやよくない影響を与えるものについては、早めに切り捨てることも大切です。

\次のページで「「拘泥」の類義語4選!」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: