この記事では「天衣無縫」について解説する。

端的に言えば天衣無縫の意味は「飾ることなく自然なさま」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は日本文学部卒の現役WEBライター、ヒマワリを呼んです。一緒に「天衣無縫」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「天衣無縫」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「天衣無縫」の意味や語源・使い方まとめ

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天衣無縫」は「てんいむほう」と読みます。伝記などでも人物を紹介する時などにしばしば使われる言葉ですね。有名な四字熟語ですから耳にしたことがある人が多いでしょう。それでは早速「天衣無縫」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「天衣無縫」の意味は?

まず初めに「天衣無縫」の正確な意味を辞書からの引用で確かめてみましょう。「天衣無縫」には、次のような意味があります。

1.天人の衣服には縫い目のあとがないこと。転じて、詩や文章などに、技巧のあとが見えず自然であって、しかも完全無欠で美しいこと。また、そのさま。
2.天真爛漫 (てんしんらんまん) なこと。また、そのさま。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「天衣無縫」

上記のように、「天衣無縫」には二つの意味があります。

一つめは、詩歌や文章が余分な技巧がなく、完全であることです。

二つめの使い方は、人物に対して用いられ、飾らずに自由にふるまっていることを意味します。

一つめの意味は、詩歌に、二つめは人物に用いられますが、どちらも、わざとらしさがない、飾らない、と言う意味合いを持っていますね。

「天衣無縫」の語源は?

次に「天衣無縫」の語源を確認しておきましょう。まず、「天衣」とは天人の着る衣服の事です。そして「無縫」とは、縫い目がない、と言う意味ですね。つまり「天衣無縫」は、天人の服には縫い目がないと言うことなのです。これは中国の古い短編怪奇集『霊怪録』に由来しています。

昔、郭翰と言う人が庭で寝ていると、空から天女の織女が降りてきました。織女の着ている服には縫い目が全くないので、郭翰が尋ねると、織女は「天人の服は針や糸で作るものではない」と言ったそうです。

このことから、「天衣無縫」は、何も手を加えずとも完璧である、と言う意味で使われるようになりました。そして、これが転じて、飾り気がなく自由で好ましい性格を「天衣無縫」と一般的に使うようになったのです。

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「天衣無縫」の使い方・例文

それでは「天衣無縫」の使い方を、実際の例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.その作品は、自然の美しさを綴る天衣無縫な文章が美しく、心にしみ入る作品だった。
2.祖父は、歳をとっても純粋さを忘れない天衣無縫な人だった。
3.子供は神様に近いと言うのは全くその通りで、その天衣無縫なふるまいには感心させられる。

例文1の「天衣無縫」は、詩歌や文章が、無駄に飾り立てず完璧な美しさである、と言う意味で用いられています。

例文2と3の「天衣無縫」は、飾り気がなく自由であることが好ましい、と言う意味合いです。どちらも人物に対して用いられていることからわかるように、この場合は、人物の性格や、ふるまいについて形容します

このように「天衣無縫」は、文章や詩歌に用いた場合と、人物に対して用いられた場合とで意味が変わりますので覚えておいてくださいね。

「天衣無縫」の類義語は?違いは?

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「天衣無縫」の類義語は、「天真爛漫」や「純真無垢」が挙げられます。

その1「天真爛漫」

天真爛漫」は「てんしんらんまん」と読みます。こちらも有名な四字熟語ですから、聞いたことがある人が多いでしょう。

「天真」とは、生まれ持ったそのままで、と言う意味です。「爛漫」とは、明るい光が輝いている様子を表します。つまり「天真爛漫」は、飾らず純粋に、心に思うそのままであることです。

「天衣無縫」を人物に用いた場合、ありのままで思うままにふるまうと言う意味になりますから、「天真爛漫」は類義語としてふさわしいでしょう。

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その2「純真無垢」

純真無垢(じゅんしんむく)」も良く使われる四字熟語ですね。こちらも人物に対して用いられる言葉です。

「純真」とは、邪念がなく、心が綺麗だと言う意味ですね。また、「垢」は仏教用語では、欲望や執着を表すことですので、「無垢」と言うのは、汚れなく清らかである、と言う意味を持ちます。このように「純真無垢」は、似た意味の「純真」と「無垢」を合わせて、意味を強調している四字熟語です。そして意味は、素のままで汚れなく、純粋で清らかだと言うことですから、「天衣無縫」の類義語と言えるでしょう。

「天衣無縫」の対義語は?

「天衣無縫」の対義語には、「狡猾老獪」が挙げられます。

「狡猾老獪」

狡猾老獪」は「こうかつろうかい」と読みます。「狡猾」と「老獪」と言う言葉を聞いたことがあるでしょう。「狡猾老獪」はこの二つを組み合わせた四字熟語です。

狡猾」とは、ずる賢い、と言う悪い意味の熟語ですね。そして「老獪」は、経験豊富な年かさの人間でずる賢いこと、を表します。つまり「狡猾老獪」は、経験が豊富でずる賢い、と言う意味なのです。もちろん悪い意味で用いられます。

「天衣無縫」は、飾り気がなく素のままのと言う「老獪」とは反対の意味合いがありますから、対義語としてふさわしいでしょう。

「天衣無縫」の英訳は?

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「天衣無縫」を表現する英単語は、「innocent」「harmless」「 flawless」がふさわしいでしょう。

「innocent」「harmless」「 flawless」

「天衣無縫」を表現するには三つの英単語が挙げられます。

一つめは「innocent」です。「innocent」にはいくつか意味がありますが、その中でも、無垢な、無邪気な、と言う意味を持っています。

二つめは、「harmless」です。こちらは、無邪気な、邪気がない、と言う意味で用いる事ができる英単語ですね。

最後に「 flawless」ですが、こちらは、完璧な、傷がない、と言う意味です。「天衣無縫」を、詩歌に用いた場合は、完璧な、と言う意味がありますから、その場合は「 flawless」を使うと良いでしょう。

「天衣無縫」は意味が二つある言葉ですので、英訳する場合には気をつけましょう。

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「天衣無縫」を使いこなそう

この記事では「天衣無縫」の意味・使い方・類語などを説明しました。「天衣無縫」は、元々は完璧な詩歌に対しての賛辞として用いられていましたが、現在では無邪気で飾らないふるまいに対して使われるのが一般的になりました。しかし、あくまでも好ましい人物やそのふるまいに対して用いられる四字熟語です。しばしば、自分勝手に思うままにふるまうこと、と意味を間違えて誤用される場合もみられますので、注意してくださいね。

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国語言葉の意味

「天衣無縫」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

その2「純真無垢」

純真無垢(じゅんしんむく)」も良く使われる四字熟語ですね。こちらも人物に対して用いられる言葉です。

「純真」とは、邪念がなく、心が綺麗だと言う意味ですね。また、「垢」は仏教用語では、欲望や執着を表すことですので、「無垢」と言うのは、汚れなく清らかである、と言う意味を持ちます。このように「純真無垢」は、似た意味の「純真」と「無垢」を合わせて、意味を強調している四字熟語です。そして意味は、素のままで汚れなく、純粋で清らかだと言うことですから、「天衣無縫」の類義語と言えるでしょう。

「天衣無縫」の対義語は?

「天衣無縫」の対義語には、「狡猾老獪」が挙げられます。

「狡猾老獪」

狡猾老獪」は「こうかつろうかい」と読みます。「狡猾」と「老獪」と言う言葉を聞いたことがあるでしょう。「狡猾老獪」はこの二つを組み合わせた四字熟語です。

狡猾」とは、ずる賢い、と言う悪い意味の熟語ですね。そして「老獪」は、経験豊富な年かさの人間でずる賢いこと、を表します。つまり「狡猾老獪」は、経験が豊富でずる賢い、と言う意味なのです。もちろん悪い意味で用いられます。

「天衣無縫」は、飾り気がなく素のままのと言う「老獪」とは反対の意味合いがありますから、対義語としてふさわしいでしょう。

「天衣無縫」の英訳は?

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「天衣無縫」を表現する英単語は、「innocent」「harmless」「 flawless」がふさわしいでしょう。

「innocent」「harmless」「 flawless」

「天衣無縫」を表現するには三つの英単語が挙げられます。

一つめは「innocent」です。「innocent」にはいくつか意味がありますが、その中でも、無垢な、無邪気な、と言う意味を持っています。

二つめは、「harmless」です。こちらは、無邪気な、邪気がない、と言う意味で用いる事ができる英単語ですね。

最後に「 flawless」ですが、こちらは、完璧な、傷がない、と言う意味です。「天衣無縫」を、詩歌に用いた場合は、完璧な、と言う意味がありますから、その場合は「 flawless」を使うと良いでしょう。

「天衣無縫」は意味が二つある言葉ですので、英訳する場合には気をつけましょう。

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