この記事では「五臓六腑」について解説する。

端的に言えば「五臓六腑」の意味は「体の内部全体のこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「五臓六腑」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「五臓六腑」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「五臓六腑」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「五臓六腑」の意味は?

「五臓六腑」は「ごぞうろっぷ」と読み、次のような意味があります。

1.心臓・肝臓・脾臓・肺臓・腎臓の五臓と、大腸・小腸・胃・胆・膀胱・三焦の六腑のこと。

2.からだの内部全体のこと。

出典:上級漢和辞典漢字源改訂第六版(Gakken)「五臓六腑」

このように「五臓六腑」とは内臓器官のことをいいます。転じて体全体を広く意味する言葉となりました。あまりなじみのない言葉かもしれませんね。でも宴会の席で割と年のいった人が一口お酒を飲んで、満足そうな笑顔とともにこの言葉が発せられることがたまにあります。特に最初の一杯で満足そうにひと息つきながら使うことが多いものです。

現代では酒席以外のほかでは怒りを表現する場合以外ではあまり使うことのない言葉となってしまいました。でも意味を理解すればそれ以外の場面でも案外使うことができる場面に出くわすことがある言葉ですから、この機会に覚えておいても損はありません。

「五臓六腑」の語源は?

次に「五臓六腑」の語源を確認しておきましょう。「五臓六腑」は中国漢方に語源を持つ四字熟語です。心臓・肝臓・脾臓・肺臓・腎臓の五臓と大腸・小腸・胃・胆・膀胱・三焦の六腑を指します。「腑」というのはいわゆる「はらわた」のことです。そのなかでも三焦(さんしょう)という言葉は初めて目にする人も多いのではないでしょうか。

三焦とは中国漢方独特の概念です。大まかに横隔膜と腹膜で人体を3つの部位に分け上部からそれぞれ上焦、中焦、下焦とし、合わせて三焦と言います。漢方では「気」という言葉がよく使われますが、体全体にこの気を巡らせる役割が三焦にはあると考えられているのです。

\次のページで「「五臓六腑」の使い方・例文」を解説!/

「五臓六腑」の使い方・例文

「五臓六腑」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.仕事を終えて疲れたあとの一杯は格別だ。五臓六腑に染み渡るね。

2.上司にわけもなく理不尽な怒られ方をして、五臓六腑が煮えくりかえった。

3.打ち上げ花火を見物に行ったけど、ぱっと開いたあとものすごい轟音が五臓六腑に響いてびっくりした。

「五臓六腑」は本来中国漢方で使われた用語ですが、今では体の隅々とか体全体というほどの意味に変わってきています。特にお酒を飲む場面でよく使う言葉で、空腹の時にじわっとお酒が体中に染み渡るような感覚を味わった人も多いのではないでしょうか。「五臓六腑が煮えくりかえる」という表現は、怒り心頭に発してどうしようもない憤りを表す場合に使います。「はらわたが煮えくりかえる」という表現も同じ意味です。どちらも怒りの度合いがものすごいことが強く感じられますね。いずれにしてもこの頃は、お酒の席や怒りの表現以外ではあまり使うことはないでしょう。

「五臓六腑」の類義語は?違いは?

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「五臓六腑」の類義語を考えると、あまりしっくりくるものがありません。そもそも中国漢方という医学から始まった言葉ですから無理もないことでしょう。それでも時代が下るにつれ、漢方医学以外への意味の変化も見てとれます。

その1「全身」

医学用語ではありませんが「全身」という言葉が「五臓六腑」によく似た語句と言えるでしょう。「五臓六腑」が体内の器官を具体的に指すのに対して「全身」は体全体のことを言います。厳密に心臓や胃などを意味するのでなければ「全身」を使用しても差し支えないでしょう。「五臓六腑に染み渡る」「五臓六腑に響いた」という言葉の「五臓六腑」を「全身」に置き換えてもちゃんと意味が通じますから問題ありません。

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その2「四肢五体」

「四肢五体」とは「四肢」が両手両足、「五体」が筋肉、脈、筋肉以外の肉、骨、毛髪と皮膚のことです。つまり体全体を表しています。「全身」という類義語より、さらに「五臓六腑」に近い意味を持っていると言えるでしょう。しかし普段使用することはあまりありません。使うなら「四肢」あるいは「五体」とそれぞれ別の語句として単独で使うことのほうが多いのではないでしょうか。

「五臓六腑」の対義語は?

「五臓六腑」は単に体内の内臓器官ひとつひとつを指す言葉です。胃は胃であり、心臓は心臓ですから反対の意味を持つ対義語というものはおのずと発生しなかったのでしょう。

「五臓六腑」の英訳は?

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「五臓六腑」の英訳として適当なものはありません。「五臓六腑」が抽象的な概念であり、英語にはなじまないのです。しかし「五臓六腑」を本来の体内器官の意味で具体的に表現するのであれば英訳は見つかります。

その1「viscera」

「viscera」とは内臓のことです。したがって日本語で使用する「五臓六腑に染み渡る」とか「五臓六腑が煮えくりかえる」というような意味では使うことができません。どちらかといえば発祥の中国漢方の語源に近い意味合いを持つ言葉と言えるでしょう。

その2「the internal organs」

「the internal organs」を直訳すれば「内部の臓器」つまり内臓のことです。意味は「viscera」と同じになり、やはり日本語のように広い意味では使うことはありません。「五臓六腑が煮えくりかえる」ように実際に内臓がぐつぐつと煮えくりかえってしまっては大変なことになりますからね。

\次のページで「「五臓六腑」を使いこなそう」を解説!/

「五臓六腑」を使いこなそう

この記事では「五臓六腑」の意味・使い方・類語などを説明しました。頻繁に使う言葉ではありませんが、ここぞというときに使うと効果的な言葉と言えます。英語はもっと即物的で日本語で使用する「五臓六腑に染み渡る」とか「五臓六腑が煮えくりかえる」といった微妙な意味を持つ言葉はありません。だから「日本語はむずかしい」と言われるのかもしれませんが。

この頃では日本人でも「五臓六腑」という言葉の意味を正確に知らない人も増えているのではないでしょうか。だからこそ「五臓六腑」の本当の意味を知り、使い方を覚えるとみんなのあなたを見る目が変わってくるかもしれませんよ。

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国語言葉の意味

「五臓六腑」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説!

この記事では「五臓六腑」について解説する。

端的に言えば「五臓六腑」の意味は「体の内部全体のこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「五臓六腑」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「五臓六腑」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「五臓六腑」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「五臓六腑」の意味は?

「五臓六腑」は「ごぞうろっぷ」と読み、次のような意味があります。

1.心臓・肝臓・脾臓・肺臓・腎臓の五臓と、大腸・小腸・胃・胆・膀胱・三焦の六腑のこと。

2.からだの内部全体のこと。

出典:上級漢和辞典漢字源改訂第六版(Gakken)「五臓六腑」

このように「五臓六腑」とは内臓器官のことをいいます。転じて体全体を広く意味する言葉となりました。あまりなじみのない言葉かもしれませんね。でも宴会の席で割と年のいった人が一口お酒を飲んで、満足そうな笑顔とともにこの言葉が発せられることがたまにあります。特に最初の一杯で満足そうにひと息つきながら使うことが多いものです。

現代では酒席以外のほかでは怒りを表現する場合以外ではあまり使うことのない言葉となってしまいました。でも意味を理解すればそれ以外の場面でも案外使うことができる場面に出くわすことがある言葉ですから、この機会に覚えておいても損はありません。

「五臓六腑」の語源は?

次に「五臓六腑」の語源を確認しておきましょう。「五臓六腑」は中国漢方に語源を持つ四字熟語です。心臓・肝臓・脾臓・肺臓・腎臓の五臓と大腸・小腸・胃・胆・膀胱・三焦の六腑を指します。「腑」というのはいわゆる「はらわた」のことです。そのなかでも三焦(さんしょう)という言葉は初めて目にする人も多いのではないでしょうか。

三焦とは中国漢方独特の概念です。大まかに横隔膜と腹膜で人体を3つの部位に分け上部からそれぞれ上焦、中焦、下焦とし、合わせて三焦と言います。漢方では「気」という言葉がよく使われますが、体全体にこの気を巡らせる役割が三焦にはあると考えられているのです。

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