

端的に言えば「未曾有」の意味は「未経験の物事」だが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
現役学生ライターのタビビトを呼んだ。一緒に「未曾有」の意味や例文、類語などを見ていくぞ。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。
ライター/タビビト
現役の文学部学生ライター。学生生活の中で数多くの芸術関係の執筆を行い、小学生の頃から多種多様な書籍を読破してきた生粋の文化系。読書量に比例する文章力で日本語をわかりやすく解説していく。
「未曾有」の意味は?
「未曾有」には、次のような意味があります。
今までに一度もないこと。
出典:デジタル大辞泉(小学館)「未曾有」

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「未曾有(みぞう)」とは、今までに一度も経験したことがないこと、予測できなかった物事を指す言葉です。「未曾有」の出来事と言ってまず思い浮かぶのは、新型コロナウイルスでしょう。
世界中の誰もが予想できなかった未知のウイルスは、まさに「未曾有」のものです。「未曾有」はこのように日常的に起こるものではないが故に、日常会話で用いることはあまりなく、ニュースや文面などの形式的な場面で多く用いられます。一度は目にしたことがあるけど、なんとなくでしか意味は分かっていなかったというイメージがあるのではないでしょうか。
この機会に「未曾有」の意味を改めて詳しく理解してみましょう!
「未曾有」の語源は?
「未曾有(みぞう)」は、かつてある首相が「みぞうゆう」と読み間違えた事例もあるほどなかなか難しい漢字ですよね。そんな「未曾有」ですが、実は語源を辿ると意外と意味そのままの漢字だということをご存じでしょうか?
それでは早速、「未曾有」の語源を見ていきましょう。
「未曾有」の語源は、古代インドの梵語で「奇跡」という意味を表す「adbhuta」(アデュブタ)にあります。仏教が中国に伝わった際に、中国の唐の時代の僧侶として有名な三蔵法師がこの「adbhuta」を「未曾有」と訳したことが始まりです。この漢文を日本で更に「未だ曾て有らず(いまだかつてあらず)」と訓読したことで、現在の「今までに経験したことがない物事」という意味で用いられるようになったということがわかります。
「未曾有」という三つの漢字だけではなかなか「難しい」という印象が先行してしまいますが、「未だ曾て有らず」と聞くとなんだか親しみが湧きますよね。訓読を授業で習う、日本人特有の感覚なのではないでしょうか。