この記事では「パラドクス」について解説する。

端的に言えばパラドクスの意味は「矛盾、ジレンマ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「パラドクス」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「パラドクス」の意味や語源・使い方まとめ

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「パラドクス」という言葉を聞いたことはありますか?「パラドックス」とも言いますね。英語の「paradox」からきている言葉で、ビジネスシーンでも使われることがあります。ただ意味が難しく、今一つ正しく理解できているか自信がないという方は多いかもしれませんね。今回は「パラドクス」について詳しく解説します。

それでは早速「パラドクス」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「パラドクス」の意味は?

「パラドクス」の意味を辞書で調べてみましょう。

1.逆説,矛盾のようで実は正しい説
2.一見正しく見える矛盾した言葉、矛盾した(ところのある)人、事情

出典:新英和中辞典(研究社)「paradox」

「パラドクス」の元である英単語の「paradox」は、「逆説、矛盾しているようで実は正しい説」という意味です。世間一般的には正しいとされている説に対する、反対の説・考え・主張などを指す言葉、つまり「定説に反する」という意味を表します。

「パラドクス」がよく登場するのは数学や哲学、論理学の世界。「間違っているように見えるが、実は正しい説」や、その逆で「一見正しく見えるが、正しいとは認められない説」を指すのが「パラドクス」です。また「矛盾」という意味を含むことからわかるように、条件を加えると論理が成り立たなくなるという場合にも使われます。

のちほど例文や具体例を出しながら解説しますので、実際の使い方を見ながら理解を深めていきましょう。

「パラドクス」の語源は?

「パラドクス」の元である英語の「paradox」は古代ギリシャ語の「paradoxos」に由来します。「paradoxos」は「予想に反した」という意味ですが、元々は「para-(~に反して)」+「doxa(予想)」という言葉の組み合わから生まれました。

後に「paradoxon(信じられない意見)」という意味に発展し、この言葉がラテン語の「paradoxum(パラドックス)」、中期フランス語の「paradoxe(パラドックス)」とスペルを変えながら受け継がれ、「一般的な予想(doxa)に反した(para-)意見」という語源を持つ現代の英語に繋がっています。

\次のページで「「パラドクス」の使い方・例文」を解説!/

「パラドクス」の使い方・例文

「パラドクス」は具体的な例を見ながら考えた方が分かりやすいですよ。いくつか例文を確認してみましょう。

1.パラドクスの代表的なものは「急がば回れ」「負けるが勝ち」ということわざだ。
2.今日の上司の話は、パラドクスのようで理解できなかった。
3.パラドクスの例は非常に興味深いが、すべて理解しようとするととても頭を使う。

例文1は「パラドクス」を用いたことわざに言及しています。「急がば回れ」とは、考えてみればおかしな話ですよね。急いでいるならば、走るなりした方が良いはずです。「負けるが勝ち」も同様、負けているのに勝っていると表現するとは、逆説的ですね。このように一見矛盾しているように見えても理屈が通っているストーリーのことを「パラドクス」といいます。

例文2は上司への皮肉が込められているかもしれません。上司の話が矛盾だらけだったり、筋道が通っていなかったりして実質的にわからなかったという意味です。「お話がよくわかりません」だと角が立ちますが、「パラドクスのようだった」というと柔らかい表現に感じられますね。

例文3は「パラドクス」の奥深さに感じ入っている表現です。確かに「パラドクス」には興味深い事例があります。「パラドクス」の例を2つご紹介しましょう。

パラドクスの例(1)「アキレスとカメ」

うさぎとカメの競争を思い浮かべてください。

まずカメが出発しました。うさぎも後から追いかけます。この場合、うさぎがどんなに必死に追いつこうと頑張っても、カメとの差は縮まりはしても決して追い越すことは不可能だというパラドクスです(もちろん、現実では追い抜かせますよ)。

なぜならば、うさぎが1秒前にカメがいた地点に到達しても、カメはすでに1秒分前進していることになるからです。0.5秒前にいた地点に到達しても、カメは0.5秒分前に進んでいます。このように両者の差は0に限りなく近づくけれども、決して0にはならないという話です。

おかしな話だとは思いますが、ではおかしな点を論理的に明らかにせよといわれると難しいですよね。

パラドクスの例(2)「タイムパラドックス」

ある人が、「自分がこの世に誕生する前に母親を殺すと、どうなるか?」と考えたとします。物騒な話ですが、お話なのでお付き合いください。過去において母親の存在がなくなるということは、子ども、つまり自分が産まれないということになります。

しかしそれでは、母親も殺されることはなくなりますよね。この矛盾が「タイムパラドックス」の一例です。

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「パラドクス」の類義語は?違いは?

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「パラドクス」に似た意味を持つ言葉にはどのようなものがあるでしょうか。類義語を見ていきましょう。

その1「逆説」

逆説」は「パラドクス」の意味説明でも登場しましたね。改めて意味を見てみましょう。

「逆説」とは「一見、真理にそむいているようにみえて、実は一面の真理を言い表している表現」、あるいは「ある命題から正しい推論によって導き出されているようにみえながら、結論で矛盾をはらむ命題」という意味です。言い回しが難解な部分もありますが、つまり「一見正しそうに見えるけれども、矛盾があったり正しくなかったりする説」ということですね。まさに「パラドックス」と同じ意味になります。

その2「逆理」

逆理」はあまり耳馴染みのない言葉です。意味は「逆説」と全く同じなので、多彩な表現の一つとして覚えておきましょう。「逆理」の「理」は「理屈、理論」の「理」です。

「パラドクス」の対義語は?

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英語の「paradox」には対義語はありません。

日本語の意味である「逆説」の対義語は「真説」です。「真説」とは文字通り「正しい説」という意味になります。

「パラドクス」を使いこなそう

この記事では「パラドクス」の意味・使い方・類語などを説明しました。

「パラドクス」の意味は奥深く全てを解説するのは難しいのですが、およその意味と使い方は分かっていただけたかと思います。ビジネスにおいても、パラドックスではないか?と感じる説に出会うことはよくあるもの。そんなときは矛盾点を見出し、論理的な説明を試みてみると、周囲から一目置かれる存在になれますよ。

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「パラドクス」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

この記事では「パラドクス」について解説する。

端的に言えばパラドクスの意味は「矛盾、ジレンマ」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「パラドクス」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「パラドクス」の意味や語源・使い方まとめ

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「パラドクス」という言葉を聞いたことはありますか?「パラドックス」とも言いますね。英語の「paradox」からきている言葉で、ビジネスシーンでも使われることがあります。ただ意味が難しく、今一つ正しく理解できているか自信がないという方は多いかもしれませんね。今回は「パラドクス」について詳しく解説します。

それでは早速「パラドクス」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「パラドクス」の意味は?

「パラドクス」の意味を辞書で調べてみましょう。

1.逆説,矛盾のようで実は正しい説
2.一見正しく見える矛盾した言葉、矛盾した(ところのある)人、事情

出典:新英和中辞典(研究社)「paradox」

「パラドクス」の元である英単語の「paradox」は、「逆説、矛盾しているようで実は正しい説」という意味です。世間一般的には正しいとされている説に対する、反対の説・考え・主張などを指す言葉、つまり「定説に反する」という意味を表します。

「パラドクス」がよく登場するのは数学や哲学、論理学の世界。「間違っているように見えるが、実は正しい説」や、その逆で「一見正しく見えるが、正しいとは認められない説」を指すのが「パラドクス」です。また「矛盾」という意味を含むことからわかるように、条件を加えると論理が成り立たなくなるという場合にも使われます。

のちほど例文や具体例を出しながら解説しますので、実際の使い方を見ながら理解を深めていきましょう。

「パラドクス」の語源は?

「パラドクス」の元である英語の「paradox」は古代ギリシャ語の「paradoxos」に由来します。「paradoxos」は「予想に反した」という意味ですが、元々は「para-(~に反して)」+「doxa(予想)」という言葉の組み合わから生まれました。

後に「paradoxon(信じられない意見)」という意味に発展し、この言葉がラテン語の「paradoxum(パラドックス)」、中期フランス語の「paradoxe(パラドックス)」とスペルを変えながら受け継がれ、「一般的な予想(doxa)に反した(para-)意見」という語源を持つ現代の英語に繋がっています。

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