この記事では「よしなに」について解説する。

端的に言えばよしなにの意味は「よろしく」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「よしなに」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「よしなに」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「よしなに」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「よしなに」の意味は?

「よしなに」には、次のような意味があります。

よいように。不都合が生じないように。よろしく。適当に。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「よしな‐に」

「よしなに」は「不都合がないように。よろしく。」という意味です。この言葉は、受け取り手に奥ゆかしく柔らかな印象を与えます。漢字で「良しなに」「宜しなに」と書くこともあるそうですが、ひらがなで書くことが一般的でしょう。

「よしなに」の語源は?

次に「よしなに」の語源を確認しておきましょう。「よしなに」という言葉の語源は様々な説があります。『古事記』を語源とする説もありますが、明確な由来は定かではありません。ただ、「よしなに」はひろく大和言葉の一つと理解され、使う人を奥ゆかしく見せます。その他の大和言葉で代表的なものは「もちづき」「きよらか」です。

「よしなに」は分解すると「良し+な+に」とすることができ、「な」は「~のように」、「に」は断定の助動詞とする論もあります。

また、「よしなに」は方言の一つと思われがちですが、先ほども述べた通り、「よしなに」は古語をもとにした大和言葉であるため、方言ではありません。

\次のページで「「よしなに」の使い方・例文」を解説!/

「よしなに」の使い方・例文

「よしなに」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.後はよしなにしてください。

2.これから出かけますので、よしなに頼みますよ。

3.どうぞよしなによろしくお願いします。

4.ひとつよしなによろしくお願いいたします。

「よしなに」は、何かお願いをする際に使われることが多いです。一つ目と二つ目の例文は「不都合のないよう、各々のことをしておいてください。」という意味として使われています。三つ目の例文では、初対面の挨拶などで使われることが多いです。四つ目の例文は、何か商談などでお願い事をしたいときや付き合いをしたいときに使います。

「よしなに」と言われたら了承する、もしくは了承できないという旨の言葉で返答しましょう。了承できるときは「かしこまりました。」や「こちらこそよろしくお願いします。」など、了承できない時はそれに即した返答をしましょう。

また、「よしなに」を使う際に気を付けたいことは、ビジネスにおける指示を出すとき、「よしなに」を使ってしまうと指示内容の具体性に欠け曖昧な印象を与えてしまうということです。仕事の指図は具体的でないと指示された側は困ってしまいます。具体的な指示が求められる場面ではそれに合った言葉で相手に伝えましょう。

さらに、「よしなに」は上司や取引先などの目上の人に使うのは控えた方がいい言葉です。「よしなに」は決してくだけた言葉ではありませんが、「いい具合に」という意味の言葉を目上の人に使うと不快に思われることがあります。

「よしなに」の類義語は?違いは?

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ここでは、「よしなに」の類義語について見ていきましょう。それぞれの類義語と「よしなに」とがどのような点で異なるかについても紹介していきます。

その1「適宜」

「適宜」は「便宜に従うこと。その時々に応じて、各自がよいと思うようにすること。随意。」という意味を持ちます。「よしなに」が「不都合のないようにすること。」という意味なのと類似していると言うことができるでしょう。

「適宜」と「よしなに」の違いは、「適宜」には「臨機応変にする」という意味が含まれているというところです。そのため、「適宜報告します。」などの形での使用が可能です。

\次のページで「その2「然るべき」」を解説!/

その2「然るべき」

「然るべき」は「しかるべき」と読みます。意味は、「適当な。ふさわしい。そうあるべき。相当な。」です。「適当な」という意味を有しているので、「よしなに」と近しい意味を持っていると言えるでしょう。

「然るべき」と「よしなに」で異なる点は、「然るべき」には「そうあって当然だ」という意味合いが含まれるという点にあります。「よしなに」は「不都合のないようにする」という意味ですが、「然るべき」は「そうあるべき。そうあるのが当たり前」という意味ですので、ややニュアンスが異なる面がありますね。

その3「よろしく」

「よろしく」は「その場の成り行きや雰囲気に適合するようにするさまを表わす語。よいほどに。ほどよく。適当に。」という意味です。「よしなに」も「よろしく」も漢字表記では「宜」という字が使われること、また意味合いなどからも二つの字は非常に類似していると言うことができるでしょう。ビジネスなどで使う「よしなに」と「よろしく」はほぼ同じ意味として使えます。「よしなに」という言葉を理解できない方には「よろしく」という言葉を使うのが良いでしょう。

「よろしく」と「よしなに」で異なる点は、「よろしく」には「上に記述された内容を受け、いかにもそれに似て、いかにもそれらしくの意を表わす語。」という意味があるということです。「やんちゃな彼は、急にまじめな表情で先生よろしく教壇に立った。」など、「それっぽくふるまう」というニュアンスがあります。

「よしなに」の対義語は?

ここでは、「よしなに」の対義語について見ていきましょう。「よしなに」は「不都合がないように。よろしく。」という意味があります。そのため対義語は「都合が悪い」「適切でない」という意味を持つ言葉が適当でしょう。

その1「不都合」

「不都合」は「ぐあいがわるいこと。便利がわるいこと。また、そのさま。」という意味です。「よしなに」が「不都合のないさま」という意味なので、その真反対と言うことができるでしょう。

その2「不適切」

「不適切」は、「その場の状況や話題となっている事柄に対する配慮を欠いていること。また、そのさま。」という意味です。「よしなに」が「よろしく」という意味を持つのに対して反対の意味であると言うことができるでしょう。

「よしなに」の英訳は?

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ここでは、「よしなに」の英訳について見ていきましょう。

\次のページで「その1「fittingly」」を解説!/

その1「fittingly」

「fittingly」は「ふさわしく。ふさわしい。」という意味を持ちます。「fit」が「適している」という意味で、その変化したものです。

「fittingly」は、部品の組み立ての説明書などで使われる場合が多く、「正しくする」というニュアンスが強いと言えるでしょう。

その2「suitably」

「suitably」は、「適当に。ふさわしく。」という意味です。「suit」が「都合が良い」という意味なので「よしなに」の「不都合のない様子」という意味とやや似ているでしょう。

「suitably」も厳密さを大切にする場面で使われることが多い言葉です。

その3「appropriately」

「appropriately」は「適切に」という意味を持ちます。「~らしくする」という意味合いも持っており、「よしなに」に似た意味で使うことが可能です。

「よしなに」を使いこなそう

この記事では「よしなに」の意味・使い方・類語などを説明しました。「よしなに」は日本語の中でも歴史のある言葉です。日常生活でもぜひ使っていきたい言葉ですね。

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国語言葉の意味

「よしなに」の意味や使い方は?例文や類語を文学院生がわかりやすく解説!

この記事では「よしなに」について解説する。

端的に言えばよしなにの意味は「よろしく」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「よしなに」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「よしなに」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「よしなに」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「よしなに」の意味は?

「よしなに」には、次のような意味があります。

よいように。不都合が生じないように。よろしく。適当に。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「よしな‐に」

「よしなに」は「不都合がないように。よろしく。」という意味です。この言葉は、受け取り手に奥ゆかしく柔らかな印象を与えます。漢字で「良しなに」「宜しなに」と書くこともあるそうですが、ひらがなで書くことが一般的でしょう。

「よしなに」の語源は?

次に「よしなに」の語源を確認しておきましょう。「よしなに」という言葉の語源は様々な説があります。『古事記』を語源とする説もありますが、明確な由来は定かではありません。ただ、「よしなに」はひろく大和言葉の一つと理解され、使う人を奥ゆかしく見せます。その他の大和言葉で代表的なものは「もちづき」「きよらか」です。

「よしなに」は分解すると「良し+な+に」とすることができ、「な」は「~のように」、「に」は断定の助動詞とする論もあります。

また、「よしなに」は方言の一つと思われがちですが、先ほども述べた通り、「よしなに」は古語をもとにした大和言葉であるため、方言ではありません。

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