この記事では「垂涎(すいぜん)」について解説する。

端的に言えば垂涎の意味は「熱望すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「垂涎」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

垂涎という言葉で思い浮かぶのは、大好きなウィスキー(とある銘柄の1975年のもの)だとか。香りと味の記憶をたどるだけでよだれがこみあげるほどで、もう入手困難な一瓶に偶然出会ったら財布の中身を気にせず飲んでしまいそうなため、バーでその話題になると期待と不安が入り混じるらしい。垂涎とはどんなときに使う言葉なのか、解説してもらう。

「垂涎」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「垂涎」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「垂涎」の意味は?

「垂涎」には、次のような意味があります。

1.食べたくてよだれを垂らすこと。

2.ある物を手に入れたいと熱望すること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

大好きな食べ物を想像して、思わずタラーッとよだれがたれそうになったことはありませんか。空腹時にテレビ番組やSNSでふいに美味しそうなものを目にしたときも、食べたくてたまらない気分になりますね。これがまさに「垂涎」の1つ目の意味です。文字もそのまま「涎(よだれ)」を「垂らす」で「垂涎」となっていますね。

そして、食べ物に限らずとても価値を認めて欲しくてたまらないものがある場合、「喉から手が出る」とか「舌なめずりをする」という表現をすることもありますね。この熱望している状態が、「垂涎」の意味の2つ目です。

なお、「すいぜん」のほかに「すいえん」と読むこともあります。辞書にも「慣用読みですいえん・すいせんとも」と書かれていますよ。

ちなみにこの「垂涎」は、「垂涎する」のように動詞で使っても間違いではありませんが、使用例は昨今の文章ではあまり見かけません。

「垂涎」の使い方・例文

「垂涎」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「垂涎」の類義語は?違いは?」を解説!/

・朝から何も食べていないところに美味しそうなカレーの香りがして、垂涎を抑えられなかった。

・この限定モデルは、マニアならずともファンたちの垂涎の的だ。

・長年憧れていた垂涎ものの名品をやっとの思いで入手しました。

1つ目の例文は、1つ目に紹介した「実際にヨダレを垂らす(垂らしそうになる)」の意味で「垂涎」が使われています。

2つ目、3つ目の例文は、意味の2つ目「熱望する」の例ですね。単に「垂涎」の単語だけで使うこともあれば、この例文のように「垂涎の的(まと)」「垂涎もの」という形で使われることもよく目にしますよ。

なお、先ほどから「熱望」と書いているとおり、単なる願望程度で「垂涎」を使うのはふさわしくありません。あまりにも魅力的で何がなんでも手に入れたいと渇望するような状況に限って使うと効果的なのが「垂涎」といえます。

「垂涎」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

では、「垂涎」と同じように使える言葉にはどのようなものがあるか、見ていきましょう。

その1「舌なめずり」

美味しそうな食べ物を目の前に置かれ、思わず舌で唇をなめまわしてしまう様子をいいます。転じて、大好きなものや求めているものを待ち望むさまをいうことも。

食欲からくる体の反応と、転じて熱望する様子を表すようになったところまで、「垂涎」とそっくりですね。

同様に、「喉が鳴る(喉を鳴らす)」という表現も「食べたくてたまらない」様子を表しますが、こちらは物全般を熱望するというよりは、食べ物の場合に使うことがほとんどです。

 

その2「渇望(かつぼう)」

渇望の「渇」は「喉が渇く(かわく)」というときに使う字ですね。そのとおり、喉が渇いたときに水を欲しがるように、心から望むことをいいます。炎天下で運動した後を思い浮かべると、「渇望」という言葉の切実さもイメージしやすいのではないでしょうか。

「垂涎」が2つ目の意味で使われている場合には、「渇望」と置き換えられることも多いですよ。

\次のページで「「垂涎」の対義語は?」を解説!/

・有名シェフが作った豪華な料理を前に、舌なめずりする心境です。

・飲まず食わずで歩いていたので、おにぎりを見せられて喉が鳴った。

・日照りが続いて作物が育たなくなったので、困った農民たちはみな雨を渇望していた。

「垂涎」の対義語は?

次に「垂涎」の対義語を考えてみましょう。

「よだれを垂らす」「熱望する」の逆なので、「欲しいと思わない」状態を指す言葉を選んでみました。

「満足」

望みが満たされて不満のない状態をいいます。「申し分がない」「十分」と言い換えることもできますね。

また、「堪能(たんのう)」という言葉も「満足」と同様に使えます。ごちそうを勧められてこれ以上食べられない場合に「十分堪能しました」と言うように、満ち足りて十分な様子を表すことがあります。ただ、「堪能」は「語学に堪能な人」のように「その道に秀でている様子」を表すこともあるので注意しましょう。

・その世界の権威がサインした著書を見せれば、さすがの愛好家たちも満足するのではないか。

・秋になったので、美術館巡りをして芸術を堪能したいと思います。

「垂涎」の英訳は?

image by iStockphoto

では英語で「垂涎」を表すにはどうしたらいいのでしょうか。

「aspire」

「熱望する、志す」といった意味の動詞です。「aspire to global leadership(世界の指導的立場を志す)」など、比較的大きな夢や理想について用いられることが多い単語といえます。

物について「魅力的でどうしても欲しい」と言うなら、「covetousness(熱望)」を使えるシーンもあるかもしれません。ただこの単語は、「他人のもの」を強く欲する場合に使われることも多く、そのためか単に願望が強いというよりは「強欲」「貪欲」といったマイナスイメージが含まれることも。使い方には少し注意した方がよさそうです。

\次のページで「「垂涎」を使いこなそう」を解説!/

「垂涎」を使いこなそう

この記事では「垂涎」の意味・使い方・類語などを説明しました。単に美味しそうなものによだれを垂らすなら他愛ない話ですが、収集欲が高じて夢中になりすぎるのも考え物かもしれませんね。

「垂涎」はビジネスシーンでも使われるかもしれない言葉です。自ら使わないまでも、聞いたら意味は分かるように覚えておきましょう。

" /> 「垂涎」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「垂涎」の意味や使い方は?例文や類語をWebライターがわかりやすく解説!

この記事では「垂涎(すいぜん)」について解説する。

端的に言えば垂涎の意味は「熱望すること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

国語力だけでこれまでの社会人生活を乗り切ってきたライター、ヤザワナオコに、「垂涎」の意味や例文、類語などを説明してもらおう。

ライター/ヤザワナオコ

コールセンターの電話応対指導やマナー講師、テレビ番組の字幕製作経験もあるライター、ヤザワナオコ。

垂涎という言葉で思い浮かぶのは、大好きなウィスキー(とある銘柄の1975年のもの)だとか。香りと味の記憶をたどるだけでよだれがこみあげるほどで、もう入手困難な一瓶に偶然出会ったら財布の中身を気にせず飲んでしまいそうなため、バーでその話題になると期待と不安が入り混じるらしい。垂涎とはどんなときに使う言葉なのか、解説してもらう。

「垂涎」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

それでは早速「垂涎」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「垂涎」の意味は?

「垂涎」には、次のような意味があります。

1.食べたくてよだれを垂らすこと。

2.ある物を手に入れたいと熱望すること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)

大好きな食べ物を想像して、思わずタラーッとよだれがたれそうになったことはありませんか。空腹時にテレビ番組やSNSでふいに美味しそうなものを目にしたときも、食べたくてたまらない気分になりますね。これがまさに「垂涎」の1つ目の意味です。文字もそのまま「涎(よだれ)」を「垂らす」で「垂涎」となっていますね。

そして、食べ物に限らずとても価値を認めて欲しくてたまらないものがある場合、「喉から手が出る」とか「舌なめずりをする」という表現をすることもありますね。この熱望している状態が、「垂涎」の意味の2つ目です。

なお、「すいぜん」のほかに「すいえん」と読むこともあります。辞書にも「慣用読みですいえん・すいせんとも」と書かれていますよ。

ちなみにこの「垂涎」は、「垂涎する」のように動詞で使っても間違いではありませんが、使用例は昨今の文章ではあまり見かけません。

「垂涎」の使い方・例文

「垂涎」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「垂涎」の類義語は?違いは?」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: