特に冬場に窓ガラスにつく水滴「結露」。放置すると湿気がたまってカビが発生してアレルギーの原因になったり、壁にシミがつくなど建材を傷めたりする。「冷たいモノ」に結露が発生するイメージのとおり、空気を冷却していくとどこかで結露が現れるのであり、このときの温度を「露点」という。理科教員免許を持ったライターR175と、まずは露点にて結露が発生するメカニズムを解説した後、結露の対策について例題を通して解説していこう。

ライター/R175

とある国立大の理系出身。理科の教員免許持ち。共通テストでも重視される「日常の身近な現象との関連性」を重視した解説を強みとする。

1.結露と露点

image by iStockphoto

結露が結露は氷や外気によって冷えたグラスや窓ガラスに室内の暖かい空気が当たった時に出来ます。放置すると、窓付近がジメジメと湿度の高い状態になりカビやダニがのの原因になることもありますね。

結露と言えば、前述のとおり「冷たいモノ」につくイメージありますね。少しでも水気を含む気体中で物体を冷やしていけばどこかで結露が出始め、結露が出始めるときの温度が本記事で紹介する「露点」です。

\次のページで「結露が出来るメカニズム」を解説!/

結露が出来るメカニズム

結露の水滴はどこからやってくるのか?それは空気中の水蒸気です。水が沸騰するのは100℃ですが、100℃に到達していなくても水は少しずつ蒸発しますよね?蒸発したら気体の水、つまり「水蒸気」となります。

この水蒸気が気体の状態で居られる容積当たりの最大質量が決まっており、それが飽和水蒸気量です。飽和水蒸気量は温度と圧力で決まっているもの。高温で圧力が低いほど気体になれる量が多く、温度が低く圧力が高いほど飽和水蒸気量は少なくなります。

水分子は気体になろうとするのですが、周りの圧力によってそれが封じ込められているとイメージしましょう。温度が高いほど、水分子の運動が激しいため圧力に打ち勝って気体になりやすいわけで、液体の水が水蒸気になろうとする圧力が蒸気圧です。ちなみに、周囲の気体の圧力も影響し、圧力が高いほど飽和水蒸気量は小さくなるもの。圧力が高いほど、水蒸気が「外圧に封じ込められやすい」というイメージですね。

飽和水蒸気量と湿度

湿度とは飽和水蒸気量に対する水蒸気の割合を示すパラメータです。つまり、水蒸気が全く存在していなければ湿度0%、飽和水蒸気量の半分だけ水蒸気が存在すれば湿度50%、飽和水蒸気量と同じだけ水蒸気があれば湿度100%といった具合で気温20℃にて飽和水蒸気量はですが、水蒸気量がなら湿度%となります。

さて、ココからがポイントです。この飽和水蒸気量は温度によって変化するもの。温度が高いほど水分子の運動が活発になるから気体でいられる飽和水蒸気量が大きな値になり、温度を下げれば逆に飽和水蒸気量は少なくなります。

ということは、水蒸気量を一定にして冷却するほど高湿度になり、最終的には湿度が100%に。水蒸気として存在できなくなった「水」が結露として現れ、このときの温度が「露点」です。湿度100%になるのが露点ということですね。

2.結露ができるかどうかの判定

外気温が低いほど結露が現れやすい。それは、窓ガラスが外気で冷やされ露点を下回るからです。以下の場合、窓ガラスに結露が現れるか否か飽和水蒸気曲線から数値を読み取って計算し、判定してみましょう。

結露出現の判定例題

結露出現の判定例題

image by Study-Z編集部

問1 室温が20℃で湿度が60%のときの空気1L中の水蒸気量を求めましょう。

問2   問1において露点温度はいくらでしょうか。

問3 室内の温度を20℃に保ちつつ低湿度にすることで結露を防ぎます。外気温が5℃、室温20℃のとき、湿度を何%まで乾燥させれば結露は現れないでしょうか。ただし、窓ガラスは外気温と同じ5℃まで冷却されるものとしましょう。

問4 空調して外気温と室温の温度差を小さくすることで飽和水蒸気量の差を小さくすることで湿度が現れにくいようにする。室内空気の湿度60%を維持する場合、室温を何℃まで冷やせば結露は現れないでしょうか

例題の解説

問1解答 20℃の時の飽和水蒸気量が17g/Lであり、湿度が60%なので水蒸気量は 17×0.6=10.2 g/L  です。

問2解答 問1の水蒸気量で湿度が100%になる温度が露点で、グラフより飽和水蒸気量が約10g/Lになるときの温度は11℃となります。

問3解答 窓ガラスの温度5℃において結露が現れない、つまり5℃の飽和水蒸気量より少ない水蒸気量にすればいいわけです。5℃の飽和水蒸気量は9[g/L]であり、この水蒸気量で20℃だと湿度は 9÷17 ≒53 %となります。

問4解答 問3同様5℃の飽和水蒸気量の同じ水蒸気量で湿度60%だと、飽和水蒸気量は9÷0.6 =15 [g/L]であり、この時の温度は17℃(18℃も可)と読み取れますね。

\次のページで「3.雨戸を断熱して結露を防ぐ」を解説!/

3.雨戸を断熱して結露を防ぐ

前項の例題より室温20℃で湿度60%を維持しようとすると、窓ガラスの温度が℃以下で結露が生じることが分かりました。繰り返しますがこの温度のことを「露点」と言います。ところで、窓ガラスが露点以下に冷えないようにすれば結露が発生することはありません。そこで、断熱性の高い雨戸で結露を防ぐことを考えます。以下の問を考えてみましょう。

熱伝導と比熱

熱伝導と比熱

image by Study-Z編集部

ある断面積S、ある厚さd、熱伝導率λ。両側の温度差ΔTの物体を通過する熱流束(単位時間、単位面積当たりの熱量)qは

q = λ ・ΔT  /  dと表されます。

雨戸の内外に温度差ΔTがあり、熱流束qによって内側の熱が徐々に逃げていくものとしましょう。

また、比熱c、質量mの物体に熱量Qを与えたときの温度上昇をΔTとすると、Q = m・c・ΔTです。

雨戸内外の熱の出入りと結露

雨戸内外の熱の出入りと結露

image by Study-Z編集部

雨戸の厚さをd , 熱伝導率λ とし、外気温T0 、雨戸の内側の初期温度をT1とし、翌朝窓を開けて喚起するときにはT2まで下がっているものとします。また雨戸から窓ガラスまでの距離をLとしましょう。

問1 初期状態にて、雨戸を通して外に逃げていく熱流束qはいくらか。前述の熱伝導の式を参考に文字式で表しましょう。

問2 雨戸内の温度が変化するとともに熱流束qも変化する。初期は外気との温度差が大きいため熱流束も大きいが、雨戸内が冷えて外気との温度差が小さくなるにつれqも小さくなる。ここで、初期状態から翌朝窓を開けるまでの熱流束の平均は、最初と最後で平均した温度差(T1-T0)/2 + (T2-T0)/2で表せるとしましょう。、雨戸から逃げていく平均の熱流束qはいくらになるでしょうか。

問3 雨戸と窓ガラスの間の空気の部分が十分に厚ければ空気は露点より下がらない。どれくらい厚くすればよいか計算してみましょう。まず、問2の熱流束で雨戸外に熱が逃げていき空気が冷やされます。初期の空気の温度をT1、空気の比熱をcとして、空気は時間的に均等に冷えていくとしましょう。

問3-1  雨戸から窓ガラスまでの距離をLとして、雨戸断面積1平方メートルに接する空気から逃げていく熱量Qを初期温度T1と冷却後の温度T2(これを露点とする)および空気の密度ρ、空気の比熱c用いてい表しましょう。

問3-2 空気から雨戸にt秒間で逃げていく熱量Qを雨戸の熱伝導の式を参考にして表しましょう。

問4 問3-1で求めた熱量と3-2で求めた熱量がしいとして、空気が露点よりも下がらないために厚さLはいくら以上にする必要があるでしょうか。既出のパラメータを用いて表しましょう。

例題の解説

問1 初期状態では外気温T0で雨戸内空気がT1でその差ΔT=T1 - T0 で、残りのパラメータは与えられた通りで、これらを熱伝導の式に代入して、q = λ  (T1 - T0) / d です。

問2 これも熱伝導の式に代入すればOKで、ΔTの部分のみ変わります。q = λ  ((T1-T0)/2 + (T2-T0)/2) / d で少しややこしく見えますが、温度差の部分が少し煩雑になっているのみで他は変わりませんね。

問3-1 比熱の式に文字を代入していきます。温度差はT1 - T2 で、質量は密度×体積 = 密度×断面積×長さ = ρ・1・L =ρLです。これらを代入してQ = ρLc ( T1 - T2 )が解答。

問3-2 問2で求めた熱流束に断面積と経過時間をかければよいので、Q =  λ  ((T1-T0)/2 + (T2-T0)/2) / dtです。断面積は1と与えられているため式の上では消滅しています。

問4 問3-1, 3-2の答えをそのまま使って、Q = ρLc ( T1 - T2 ) = λ  ((T1-T0)/2 + (T2-T0)/2) / dからLについて解くと、以下のようになりますね。

image by Study-Z編集部

当然ですが必要厚さLは温度差が大きく、経過時間が長いほど、雨戸の熱伝導率λが大きい(熱を伝えやすい)ほど、大きくなることが分かります。

\次のページで「冷やすと結露が現れる」を解説!/

冷やすと結露が現れる

いろいろ解説しましたが、ざっくりと「冷やすと結露が現れる」ということと、その時の温度が「露点」というところをおさえておきましょう。冷やすと、気体で存在できる「水」の最大量である飽和水蒸気量が小さくなるので、気体として存在できなくなった水が液体として現れ、これが結露の正体です。

" /> 結露が出来始める温度「露点」日常でよく見る環境の事象について理科​教員免許持ちのライターがわかりやすく解説 – ページ 2 – Study-Z
地学物質の状態・構成・変化理科生活と物質

結露が出来始める温度「露点」日常でよく見る環境の事象について理科​教員免許持ちのライターがわかりやすく解説

結露が出来るメカニズム

結露の水滴はどこからやってくるのか?それは空気中の水蒸気です。水が沸騰するのは100℃ですが、100℃に到達していなくても水は少しずつ蒸発しますよね?蒸発したら気体の水、つまり「水蒸気」となります。

この水蒸気が気体の状態で居られる容積当たりの最大質量が決まっており、それが飽和水蒸気量です。飽和水蒸気量は温度と圧力で決まっているもの。高温で圧力が低いほど気体になれる量が多く、温度が低く圧力が高いほど飽和水蒸気量は少なくなります。

水分子は気体になろうとするのですが、周りの圧力によってそれが封じ込められているとイメージしましょう。温度が高いほど、水分子の運動が激しいため圧力に打ち勝って気体になりやすいわけで、液体の水が水蒸気になろうとする圧力が蒸気圧です。ちなみに、周囲の気体の圧力も影響し、圧力が高いほど飽和水蒸気量は小さくなるもの。圧力が高いほど、水蒸気が「外圧に封じ込められやすい」というイメージですね。

飽和水蒸気量と湿度

湿度とは飽和水蒸気量に対する水蒸気の割合を示すパラメータです。つまり、水蒸気が全く存在していなければ湿度0%、飽和水蒸気量の半分だけ水蒸気が存在すれば湿度50%、飽和水蒸気量と同じだけ水蒸気があれば湿度100%といった具合で気温20℃にて飽和水蒸気量はですが、水蒸気量がなら湿度%となります。

さて、ココからがポイントです。この飽和水蒸気量は温度によって変化するもの。温度が高いほど水分子の運動が活発になるから気体でいられる飽和水蒸気量が大きな値になり、温度を下げれば逆に飽和水蒸気量は少なくなります。

ということは、水蒸気量を一定にして冷却するほど高湿度になり、最終的には湿度が100%に。水蒸気として存在できなくなった「水」が結露として現れ、このときの温度が「露点」です。湿度100%になるのが露点ということですね。

2.結露ができるかどうかの判定

外気温が低いほど結露が現れやすい。それは、窓ガラスが外気で冷やされ露点を下回るからです。以下の場合、窓ガラスに結露が現れるか否か飽和水蒸気曲線から数値を読み取って計算し、判定してみましょう。

結露出現の判定例題

結露出現の判定例題

image by Study-Z編集部

問1 室温が20℃で湿度が60%のときの空気1L中の水蒸気量を求めましょう。

問2   問1において露点温度はいくらでしょうか。

問3 室内の温度を20℃に保ちつつ低湿度にすることで結露を防ぎます。外気温が5℃、室温20℃のとき、湿度を何%まで乾燥させれば結露は現れないでしょうか。ただし、窓ガラスは外気温と同じ5℃まで冷却されるものとしましょう。

問4 空調して外気温と室温の温度差を小さくすることで飽和水蒸気量の差を小さくすることで湿度が現れにくいようにする。室内空気の湿度60%を維持する場合、室温を何℃まで冷やせば結露は現れないでしょうか

例題の解説

問1解答 20℃の時の飽和水蒸気量が17g/Lであり、湿度が60%なので水蒸気量は 17×0.6=10.2 g/L  です。

問2解答 問1の水蒸気量で湿度が100%になる温度が露点で、グラフより飽和水蒸気量が約10g/Lになるときの温度は11℃となります。

問3解答 窓ガラスの温度5℃において結露が現れない、つまり5℃の飽和水蒸気量より少ない水蒸気量にすればいいわけです。5℃の飽和水蒸気量は9[g/L]であり、この水蒸気量で20℃だと湿度は 9÷17 ≒53 %となります。

問4解答 問3同様5℃の飽和水蒸気量の同じ水蒸気量で湿度60%だと、飽和水蒸気量は9÷0.6 =15 [g/L]であり、この時の温度は17℃(18℃も可)と読み取れますね。

\次のページで「3.雨戸を断熱して結露を防ぐ」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: