この記事では「事由」について解説する。

端的に言えば「事由」の意味は「物事が起きた原因」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「事由」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「事由」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「事由」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「事由」の意味は?

「事由」には、次のような意味があります。

ある事態に至った事情や理由。

出典:新明解国語辞典第七版(三省堂)「事由」

このように「事由」は、ある事象がなぜ起こったのかその原因を表すための言葉です。「事由」は法律用語としてよく使われますが、この場合は直接的な原因それ自体を指します。法律では曖昧な解釈が許されないため、意味を誤ってとられないようにするため極めて対象を絞った使い方をするのです。そのため法廷で毎日事件を扱うような裁判では、「事由」という言葉が日常的に使われています。

一般社会で使うときも「遅延事由」や「退職事由」など、そのことが起きた原因そのものを表すときに使用することを心がけてください。

「事由」の語源は?

「事由」には故事成語に由来する語源はありません。ただ2つの漢字を分けて考えれば「事」は物事を表す「事」ですし、「由」は「よし」と読んで「原因」「それが生じるわけ」を意味します。その2つの漢字を合わせて「物事が生じる原因」と解釈できるでしょう。

\次のページで「「事由」の使い方・例文」を解説!/

「事由」の使い方・例文

「事由」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.当社に起因する事由によって損失が発生したときは損害相当額を補償する契約を結ぶ。

2.会社を辞めるなら退職事由をはっきり伝えることが大切だ。

3.民法では一定の事由があれば裁判によって離婚することが認められている。これを法定離婚事由という。

「事由」と聞くとかたぐるしいお役所言葉のように思われるかもしれませんが、案外見る機会が多いものです。とはいうものの、やはり社内規定や法律などで使われることが普通で、普段友人たちと話しているときに口にすることはあまりありません。友達との会話で「事由」などという言葉が頻発すると違和感を覚えるのではないでしょうか。「事由」は特別な場合に使われることが多く、無意識に発せられる言葉ではありません。

「事由」の類義語は?違いは?

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「事由」の類義語で真っ先に思いつくのは「理由」でしょう。文字も1字違うだけですし、発音もよく似ています。意味も似たような言葉と言えるのではないでしょうか。しかし微妙な違いがありますから、気をつけてください。

また「根拠」という言葉も「事由」の類義語と言えます。この2つの言葉を説明しましょう。

その1「理由」

「事由」がある物事が起きた原因ときっかけであるのに対し、「理由」はなぜそうなったのかという事情を指します。ここで注意しなければならないのは「事由」と「理由」が意味する範囲の広さです。「理由」はその物・人・現象がなぜ起きたのかを表すのに対し、「事由」は「事が起きたことそのもの」だけを指すという違いがあります。つまり「事由」は「理由」のなかに含まれる概念なのです。

したがって法律によって仕事をしている法曹界では、事情のいかんにかかわらず条文に従って是非を判断しますから「事由」を使うことが多くなります。

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その2「根拠」

「根拠」も「事由」の類義語です。行動・主張などのよりどころを意味しますから、法律上は「理由」よりもさらに「事由」に近いと言えますし使うケースも多いでしょう。なぜなら「根拠」にはしっかりした裏付けが必要になりますから法制上「理由」よりも事実を指摘するのに都合がいいからです。

「根拠」は上記のほか「物事を遂行するのに必要な物資を備えるための根城」という意味もあります。どちらもなんらかのよりどころになるという点では同じような意味合いを持っていると言えるでしょう。

「事由」の対義語は?

「事由」には対義語はありません。なぜなら「事由」は「ある事態に至った事情や理由」のことですから、それと反対の言葉はありようがないのです。ひょっとして「反証」という言葉が対義語ではないかと思われるかもしれませんが、これはある論証に対して否定する証拠を挙げることですから「事由」の対義語とはなりません。

「事由」の英訳は?

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最後に「事由」の英訳について考えてみましょう。

その1「reason」

「reason」はよく知られた英語ですね。一般的には「理由」という意味で多く使われる語句ですが「事由」を表す場合にも「reason」を使います。なにしろ日本語は同じような意味でも語彙が豊富な言語ですから多種多様な使い方があるので、時と場合に応じて使い分けることが必要です。

「reason」は古期フランス語の「 raisoner(議論する)」から派生しており、「論理的に考えを進めること」が語源となっています。「reasonable(理性的な)」と同一の語源です。

その2「cause」

「cause」も「事由」という意味で使われます。厳密には「原因」を表す言葉ですが「事由」や「理由」の英訳としても使われるものです。ラテン語の「causa(原因)」が語源で、「because(なぜならば)」などの派生語があります。

英会話では「事由」という言葉は「reason」か「cause」で表現することが可能です。2つの「事由」の英訳を紹介しましたので、その例文を紹介しましょう。

1.It's hard to explain the scientific reason why this happens.
「どうしてこうなるのか科学的な理由を説明するのはむずかしい」

2.The cause of this result is clear.
「こういう結果になった原因ははっきりしている」

\次のページで「「事由」を使いこなそう」を解説!/

「事由」を使いこなそう

この記事では「事由」の意味・使い方・類語などを説明しました。刑事ドラマでよく使われる言葉ですが、普段は「理由」を使ったほうが無難です。「事由」は「理由」より狭い意味の言葉ですから「その使い方は間違っている」と指摘されるかもしれません。

いずれにしても使用法を会得して、正しい使い方をマスターしてください。

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国語言葉の意味

「事由」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説!

その2「根拠」

「根拠」も「事由」の類義語です。行動・主張などのよりどころを意味しますから、法律上は「理由」よりもさらに「事由」に近いと言えますし使うケースも多いでしょう。なぜなら「根拠」にはしっかりした裏付けが必要になりますから法制上「理由」よりも事実を指摘するのに都合がいいからです。

「根拠」は上記のほか「物事を遂行するのに必要な物資を備えるための根城」という意味もあります。どちらもなんらかのよりどころになるという点では同じような意味合いを持っていると言えるでしょう。

「事由」の対義語は?

「事由」には対義語はありません。なぜなら「事由」は「ある事態に至った事情や理由」のことですから、それと反対の言葉はありようがないのです。ひょっとして「反証」という言葉が対義語ではないかと思われるかもしれませんが、これはある論証に対して否定する証拠を挙げることですから「事由」の対義語とはなりません。

「事由」の英訳は?

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最後に「事由」の英訳について考えてみましょう。

その1「reason」

「reason」はよく知られた英語ですね。一般的には「理由」という意味で多く使われる語句ですが「事由」を表す場合にも「reason」を使います。なにしろ日本語は同じような意味でも語彙が豊富な言語ですから多種多様な使い方があるので、時と場合に応じて使い分けることが必要です。

「reason」は古期フランス語の「 raisoner(議論する)」から派生しており、「論理的に考えを進めること」が語源となっています。「reasonable(理性的な)」と同一の語源です。

その2「cause」

「cause」も「事由」という意味で使われます。厳密には「原因」を表す言葉ですが「事由」や「理由」の英訳としても使われるものです。ラテン語の「causa(原因)」が語源で、「because(なぜならば)」などの派生語があります。

英会話では「事由」という言葉は「reason」か「cause」で表現することが可能です。2つの「事由」の英訳を紹介しましたので、その例文を紹介しましょう。

1.It’s hard to explain the scientific reason why this happens.
「どうしてこうなるのか科学的な理由を説明するのはむずかしい」

2.The cause of this result is clear.
「こういう結果になった原因ははっきりしている」

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