この記事では「所以」について解説する。

端的に言えば所以の意味は「いわれ。やり方。」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「所以」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「所以」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「所以」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「所以」の意味は?

「所以」には、次のような意味があります。

1.(─する)あることがらの理由になること。あることがらによっていること。また、その、よってきたるところ。理由。わけ。いわれ。

2.あることを行なうやり方。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「ゆえん」

「所以」は「ゆえん」と読みましょう。「いえん」「しょい」と読むこともありますが、現在、多くは「ゆえん」と読むことで定着しています。意味は「わけ。いわれ。」が第一義です。

「所以」は同じ読み方をする「由縁」と混同されてしまいがちですが、両者は全く異なります。「由縁」は一言でいえば「関係、ゆかり」という意味を持っていますが「所以」とは違いますね。ただ、「由縁」にも「所以」のように「わけ。いわれ。」という意味を持って使われることがあります。これは「所以」と「由縁」が混同してしまったことで「由縁」の意味が異なって伝わったためです。

「所以」の語源は?

次に「所以」の語源を確認しておきましょう。「所以」の語源は明確な一つのものがあるわけではありません。主に二つの説があります。

一つは漢文訓読語の「ゆえになり」が撥音便化して「ゆえんなり」となったところから生じたとする説です。もう一つは「ゆえなり」が撥音を加えて「ゆえんなり」となったところから生じたとする説があります。

漢文が文字表記に大きく関与した日本では「所以」という言葉が使われるようになった歴史は古く、『古事記』からも用例を確認することが可能です。

\次のページで「「所以」の使い方・例文」を解説!/

「所以」の使い方・例文

「所以」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.この交渉力が、彼が部署のエースと呼ばれる所以です。

2.人間の人間たる所以は、自律の精神にある。

3.これこそわが社が発展した所以なのだ。

「所以」は「わけ。いわれ。根拠。」という意味があります。「わけ」は使う時に「~と言われるわけは…」「~と呼ばれるわけです。」のような形で使いますよね。「所以」もそれと同じような形で使いましょう。

また、「所以」はどちらかというと文章上の表現が多く、それも古めかしい言い回しと感じられることが多いです。そのため、ビジネスにおいて「所以」という言葉を使う際は、使う場面を考えた方がいいでしょう。例えば発言内容を強調したいときには「所以」という言葉は有効かもしれません。

「所以」の類義語は?違いは?

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ここでは、「所以」の類義語について見ていきましょう。それぞれの類義語と「所以」がどのような点で異なるかについても紹介していきます。

その1「いわれ」

「いわれ」は動詞「言う」に受身の助動詞の「る」の連用形がつき、そしてそれが名詞化したものです。「物事について一般に言われていること。ものごとの意味。特に、物事のもととなる根拠。因縁。理由。」や「ものごとの由緒、由来として言われていること。」という意味があります。「根拠」という意味があるということで「所以」と類似していると言うことができるでしょう。

「いわれ」と「所以」とで異なる点は、「所以」には「あることを行うやり方」という意味があるのに対し、「いわれ」にはないという点です。ただ、「所以」を「やり方」という意味で使う場面は現代はあまりないため、「いわれ」と「所以」は非常によく似た言葉として使っても差し支えないでしょう。

\次のページで「その2「根拠」」を解説!/

その2「根拠」

「根拠」は「もととしてよること。また、そのよりどころ。基づくところ。」「ねじろ。本拠。」という意味があります。その中の「基づくところ」は「所以」の意味である「わけ」に通じるため、二つの言葉は類似していると言うことができるでしょう。

「根拠」は「よりどころにする場所」という意味を持つ「本拠」を示すことができます。「所以」は「理由」程度の意味ですが、「根拠」はさらに深くよりどころに言及するニュアンスを持っていますね。

その3「理由」

「理由」は「物事がそのようになったわけ。子細。」「いいわけ。口実。」「哲学で、論理的関係において正しく結論を導きだす論拠をいう。前提におかれる。実在的関係では原因と同義。前者を論理的理由といい、後者を実在的理由ということもある。」という意味です。一つ目の意味である「物事がそのようになったわけ」というところが「所以」と類似している点でしょう。

「理由」は幅広く物事の原因に言及することのできる言葉です。対して「所以」は言外に「そう呼ばれる理由」といったニュアンスが含まれており、「理由」に比べて使用場面が限られていると言えます。

「所以」の対義語は?

ここでは、「所以」の対義語を紹介していきます。

「所以」は「わけ。いわれ。」という意味を示します。そのため、「理由」としての意味の「わけ」の反対の意味を示す言葉としては、「結果的に落ち着くもの」という意味を持つ言葉が適切でしょう。また、「いわれ」の対義語は明確にはないため、ここでは紹介しません。

その1「帰結」

「帰結」は「いろいろな議論や行動などが最後におちつくこと。また、そのおちついた所。結着。帰着。」という意味です。「所以」が「わけ」を示すのに対する対義語と言うことができるでしょう。

その2「帰着」

「帰着」は先ほど紹介した「帰結」によく似た言葉です。「議論や物事の経過などが最終的にある点に落ち着くこと。また、その落ち着いたところ。帰結。」という意味があります。

「所以」の英訳は?

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ここでは、「所以」の英訳について見ていきましょう。

\次のページで「その1「reason」」を解説!/

その1「reason」

「reason」は「理由」という意味で、比較的手軽に「所以」の英訳として使えるものです。「所以」という言葉ほど堅苦しくなく使用できます。

その2「grounds」

「grounds」は第一に「場所」という意味が出てくる英単語ですが、不可算名詞として用いる際に「根拠。理由。」という意味で使うことが可能です。また、このとき「ground」はしばしば複数形にすることがあります。

その3「hence its name」

これは、ややかしこまった言い回しですが、「hence its name」というものもあります。「hence」とは「このゆえに。今後。」という意味です。そのため、「hence its name」は「ここにその名前がある所以がある」という意味ということになります。

「hence」を「comes」に変換することも可能です。

「所以」を使いこなそう

この記事では「所以」の意味・使い方・類語などを説明しました。「所以」は説明的な性格の言葉なので、発言に説得力を持たせたいときや印象を強くしたいときに使うのがおすすめです。ぜひ、使いこなしてみてくださいね。

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国語言葉の意味

「所以」の意味や使い方は?例文や類語を文学院生がわかりやすく解説!

この記事では「所以」について解説する。

端的に言えば所以の意味は「いわれ。やり方。」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は、日本文学を専攻し研究している翠を呼んです。一緒に「所以」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/翠

中古の日本文学を研究している。様々な時代やジャンルの作品を読み、ことばに触れている。中学校と高校の国語科の教員免許も取得しており、ことばについて分かりやすく説明する。

「所以」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「所以」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「所以」の意味は?

「所以」には、次のような意味があります。

1.(─する)あることがらの理由になること。あることがらによっていること。また、その、よってきたるところ。理由。わけ。いわれ。

2.あることを行なうやり方。

出典:日本国語大辞典 第二版(小学館)「ゆえん」

「所以」は「ゆえん」と読みましょう。「いえん」「しょい」と読むこともありますが、現在、多くは「ゆえん」と読むことで定着しています。意味は「わけ。いわれ。」が第一義です。

「所以」は同じ読み方をする「由縁」と混同されてしまいがちですが、両者は全く異なります。「由縁」は一言でいえば「関係、ゆかり」という意味を持っていますが「所以」とは違いますね。ただ、「由縁」にも「所以」のように「わけ。いわれ。」という意味を持って使われることがあります。これは「所以」と「由縁」が混同してしまったことで「由縁」の意味が異なって伝わったためです。

「所以」の語源は?

次に「所以」の語源を確認しておきましょう。「所以」の語源は明確な一つのものがあるわけではありません。主に二つの説があります。

一つは漢文訓読語の「ゆえになり」が撥音便化して「ゆえんなり」となったところから生じたとする説です。もう一つは「ゆえなり」が撥音を加えて「ゆえんなり」となったところから生じたとする説があります。

漢文が文字表記に大きく関与した日本では「所以」という言葉が使われるようになった歴史は古く、『古事記』からも用例を確認することが可能です。

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