この記事では「桟敷」について解説する。

端的に言えば桟敷の意味は「一段高くなった見物席」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

一緒に「桟敷」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「桟敷」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「桟敷」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

桟敷」は「さじき」と読みます。花見や花火、演劇などの話題で使われる言葉ですね。それでは早速「桟敷」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「桟敷」の意味は?

まず初めに「桟敷」の正確な意味を、辞書からの引用で確かめてみましょう。「桟敷」には、次のような意味があります。

1.祭りの行列や花火の見物などのために、道路や川などに面してつくる仮設の席。桟敷席。
2.劇場、相撲場などで、一段高くつくった板敷きの見物席。江戸時代の歌舞伎劇場では、平土間の左右に一段高く二階造りにつくった上等の見物席。桟敷席。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「桟敷」

上記のように、「桟敷」には二つ意味があります。

一つめは、花火大会やお祭り、花見などで、仮設された見物用の座席のことです。この場合一段高く作ったものだけではなく、ブルーシートなどで決められた座席である場合もあります。

二つめは、劇場などで一段高く作られた座席などの特別席のことです。桟敷と言えば、日本の伝統芸能である歌舞伎の桟敷席が有名でしょう。歌舞伎座での桟敷席は、花道の傍に作られた個室のような座席のことを言います。掘りごたつ式になっていたり、茶菓子のサービスやお弁当などの料理を食べる事ができたりなど、座席の価格は高いものの特別待遇がされている席なのです。

「桟敷」の語源は?

次に「桟敷」の語源を確認しておきましょう。「桟敷」は、古語の「仮床(さずき)」が語源であると考えられています。

「仮床」は、材木を綱で結んで仮として作った床や棚のことを言い、古くは主に神事に用いられていました。文献として古いものでは『古事記』に記載があり、スサノヲノミコトがヤマタノオロチに酒を飲ませる場面で、「仮床」に酒を置いたと書かれています。そして、平安時代においては、貴族が祭事での観覧席にと「仮床」を作るようになり、室町時代になると猿楽などの芸能を観るのに、貴族たちが「仮床」を設けました。これが現在の「桟敷」のもととなり、「仮床(さずき)」が次第に訛って、「さじき」と変化していったのだと考えられています。

\次のページで「「桟敷」の使い方・例文」を解説!/

「桟敷」の使い方・例文

それでは、「桟敷」の使い方を、実際の例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.営業部の皆で近くの花見会場に行くため、桟敷席の空席がなくなる前に着こうと退社時間を早めた。
2.当劇場の桟敷席をご利用いただくにはご予約が必要で、お申込みはサイトにて受付しております。
3.友人のおすすめで『天井桟敷の人々』と言う映画を観たが、私としてはフランス映画の上位ランキングに入るほど感動した。

例文1は、催し事の仮設座席としての「桟敷」ですね。

例文2と3は、劇場などの特別席と言う意味の「桟敷」です。例文3では「天井桟敷」と言う使い方をしていますが、これは、劇場で最後方・最上階の天井に近い場所にある観客席のことを特別に指して言います。観えにくかったり、音が聞こえなかったりするので、通常は安い料金に設定されるようです。通常「桟敷席」と言うと、普通席より待遇が良く高額な座席と言うイメージですが、「天井桟敷」と言った場合には、前述した通り、天井に近くあまり良くない座席と言う意味になります。併せて覚えておくと良いでしょう。

「桟敷」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「桟敷」の類義語としては「観覧席」や「ロイヤルシート」などがふさわしいでしょう。

その1「観覧席」

「桟敷」は、祭りごとや、イベントなどの仮設見物席のことを指しますので、演劇やスポーツなどを観るための席である「観覧席」が類義語としてふさわしいでしょう。ただし、「観覧席」には、仮設と言う意味合いはありません。

\次のページで「その2「ロイヤルシート」」を解説!/

その2「ロイヤルシート」

ロイヤルシート」は、特別待遇の席として、主にスポーツ観戦において使われている言葉です。

「ロイヤル」の英語での本来の意味は「王室の」「王の」と言う意味なのですが、日本では「高級な」「高価な」と言う意味合いで使われています。つまり「ロイヤルシート」は、特等席、ということですね。和製英語で使われている「ロイヤル」の意味合いは、英語とは違いますから注意してくださいね。

「桟敷」の対義語は?

image by iStockphoto

「桟敷」は、名詞で、ふさわしい対義語はありません。しかし、「天井桟敷」と言う、一番遠い天井に近い席、と言う言葉ですと「かぶりつき席」と言う反対の意味を持つ言葉がありますので、紹介したいと思います。

「かぶりつき席」

「天井桟敷」の対義語として「かぶりつき席」があります

「かぶりつき席」とは、舞台際の一番近い席、つまり最前列席と言うことです。観客が、演者をかぶりつくようにして観る、と言う意味から由来した呼び名ですね。「天井桟敷」は、二階席の一番天井に近い席、つまり、一番舞台から遠い席ですから、「かぶりつき席」は反対の意味を持つ言葉と言えるでしょう。

「桟敷」を使った忌避すべき慣用表現

「つんぼ桟敷」と言う表現を聞いたことがある人もいると思います。これは、現在では忌避すべき差別用語なので覚えておいてください。

「つんぼ桟敷」は、「天井桟敷(てんじょうさじき)」とも言い、 劇場の二階桟敷の最後方、天井に一番近い席の事です。この席は、舞台に遠く、役者のせりふがよく通らないところでした。そして、耳が聞こえないと言う言葉を用いて「つんぼ桟敷」と呼ばれるようになったのです。この、聞こえない席、と言うことから、 関係者でありながら情報や事情などを知らされないことを「つんぼ桟敷」と言うようになりました。

そして、現在では「つんぼ」は差別的な表現とされていますので、「つんぼ桟敷」も用いられることがなくなりました。とは言え、昔の文学や文献には載っていますので、意味を覚えておくのも良いでしょう。また、意味を知ると同時に忌避すべき言葉であることもしっかりと覚えておきましょう

「桟敷」を使いこなそう

この記事では「桟敷」の意味・使い方・類語などを説明しました。語源で説明した通り、「桟敷」はもともと、古語である「仮床(さずき)」が訛って変化していった言葉であると考えられています。昔から演劇などの見物のために設営された座席の事を言いますが、猿楽から歌舞伎へ、大衆芸能が変化してく中でも、現在まで「桟敷」は受け継がれてきました。普段私達が身近に感じるのは、花火大会やお祭りの見物席である「桟敷」ですが、その語源は古く、日本の伝統文化にも通じていると言うことを覚えておきましょう。

" /> 「桟敷」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「桟敷」の意味や使い方は?例文や類語を日本文学部卒Webライターがわかりやすく解説!

この記事では「桟敷」について解説する。

端的に言えば桟敷の意味は「一段高くなった見物席」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

一緒に「桟敷」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/ヒマワリ

今回の記事を担当するのは、日本文学科卒で現役ライターのヒマワリ。専攻は近代文学だが、古典からマンガまで幅広く読んでいる。受験生家庭教師の経験を生かして、「桟敷」についてわかりやすく丁寧に説明していく。

「桟敷」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

桟敷」は「さじき」と読みます。花見や花火、演劇などの話題で使われる言葉ですね。それでは早速「桟敷」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「桟敷」の意味は?

まず初めに「桟敷」の正確な意味を、辞書からの引用で確かめてみましょう。「桟敷」には、次のような意味があります。

1.祭りの行列や花火の見物などのために、道路や川などに面してつくる仮設の席。桟敷席。
2.劇場、相撲場などで、一段高くつくった板敷きの見物席。江戸時代の歌舞伎劇場では、平土間の左右に一段高く二階造りにつくった上等の見物席。桟敷席。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「桟敷」

上記のように、「桟敷」には二つ意味があります。

一つめは、花火大会やお祭り、花見などで、仮設された見物用の座席のことです。この場合一段高く作ったものだけではなく、ブルーシートなどで決められた座席である場合もあります。

二つめは、劇場などで一段高く作られた座席などの特別席のことです。桟敷と言えば、日本の伝統芸能である歌舞伎の桟敷席が有名でしょう。歌舞伎座での桟敷席は、花道の傍に作られた個室のような座席のことを言います。掘りごたつ式になっていたり、茶菓子のサービスやお弁当などの料理を食べる事ができたりなど、座席の価格は高いものの特別待遇がされている席なのです。

「桟敷」の語源は?

次に「桟敷」の語源を確認しておきましょう。「桟敷」は、古語の「仮床(さずき)」が語源であると考えられています。

「仮床」は、材木を綱で結んで仮として作った床や棚のことを言い、古くは主に神事に用いられていました。文献として古いものでは『古事記』に記載があり、スサノヲノミコトがヤマタノオロチに酒を飲ませる場面で、「仮床」に酒を置いたと書かれています。そして、平安時代においては、貴族が祭事での観覧席にと「仮床」を作るようになり、室町時代になると猿楽などの芸能を観るのに、貴族たちが「仮床」を設けました。これが現在の「桟敷」のもととなり、「仮床(さずき)」が次第に訛って、「さじき」と変化していったのだと考えられています。

\次のページで「「桟敷」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3
Share: