
アソシエーションの最も有名な意味は「共通の目的の下で自発的に形成された組織」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。
日本語検定一級を持ち、文学部に所属する現役大学生ライターである文学少女を呼んです。一緒に「アソシエーション」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/文学少女
文学部で学んでいる読書好きの現役大学生。大学のみならず、日々の読書や日本語検定・漢字検定などで学んだ知識を活かして、種々の言葉を丁寧に解説する。
「アソシエーション」の意味や語源・使い方まとめ

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ビジネスや福祉の現場、あるいは自身の専攻した分野でこの語を耳にしたことがある人はいるかもしれません。しかし、その多様な意味や学問的背景を全て把握している人は決して多くないはずです。それでは早速「アソシエーション」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。
「アソシエーション」の意味は?
「アソシエーション」という語は、分野によってかなり意味に幅があります。なお、「アソシエーション分析」のように基本的に「アソシエーション」単独で使われない語については、煩瑣を避けるため割愛します。また、IT分野における用例(関連付け、もしくはRuby on Railsのフレームワーク)についても、紙面の都合上ここでは触れません。
1.心理学の用語。個人の心理や行動の中で、観念・感情・運動がそれに従って連続的に生起する原理をさす。連合。連想。〔新しき用語の泉(1921)〕
2.社会集団の類型の一つ。一定の目的を果たすために、同じ関心をもった人々が人為的・計画的につくった集団をさす。学校、教会、会社、連盟など。アメリカの社会学者マッキーバーが社会分析の用語として使用。結社体。派生社会。〔舶来語便覧(1912)〕
出典:精選版 日本国語大辞典(小学館)「アソシエーション」
まず、1の意味を見ていきましょう。そもそも、一般にある物事を見聞きした時それと関連のある物事を思い浮かべることにこの語が当てられており、その背景にあるプロセスを説明するための専門用語としてこの意味が発展しました。心理学用語としては、心的活動の単位を結びつけることを指します。引用した辞書では特に「観念・感情・運動」の3つを挙げていますが、実際にはこれらに限りません。人間の心理や行動に関して、広く反応間や反応―刺激間全般の結びつきを表す語と考えて下さい。
次に2の意味です。社会学における「アソシエーション」の定義は学者により必ずしも一定していませんが、ここでは特に有名で辞書内でも引用されていたマッキーバー(MacIver, R.M.)のものについて解説します。
マッキーバーは社会集団の二類型として、「アソシエーション」と「コミュニティ」を設定しました。前者は一定の地域の中で習慣や歴史を共有している生活共同体のことです。一方、後者は特定の目標の下で人為的に作る機能集団を指します。「コミュニティ」は血縁や地縁などの自然的契機に基づくものであるのに対し、「アソシエーション」は利害関係集団というのが最も大きな違いでしょう。一般に、「アソシエーション」は社会の近代化に伴い拡大傾向に、コミュニティは縮小傾向にあるようです。
この用語がビジネスや福祉の分野に持ち込まれ、様々な組織をその形成方法に応じて「アソシエーション型組織」「コミュニティ型組織」に分類することがあります。前者の代表例は私企業全般や市民団体であり、後者の代表は自治会などです。
アソシエーションという語は,ある特定の時代を通じて形成された岩石群を指しており,一つの地域に一緒に産出する火成岩で,成因的に関係がありそうなもの全体を,古くからアソシエーションとよんでいる.岩石区と類似した考え方で,一つの岩石区に属する岩石は一つのアソシエーションを作ることになる[鈴木 : 1994].
出典:岩石学辞典(朝倉書店)「深成岩群」より一部引用
岩石学の分野では、特定の岩石中で見られる鉱物群のことを指す用語です。特定の時代や場所の下で産出された岩群がある種の(他の時代や場所と異なる)特徴を持つ時、これを一つの岩石区といいます。そして一つの岩石区の内、特に成因まで関係があるものが一つの「アソシエーション」です。
特定の種類の恒星の集団をいい,つねに暗黒星雲,散光星雲,若い散開星団を中心に分布している。アソシエーションを構成しているのは,年齢が1000万年以下の若い恒星で,100光年から1000光年の空間に数個から数百個の集団をつくっている。アソシエーションには,3種類が知られている。O型およびB型のスペクトルの恒星からなるOBアソシエーションは中心の密度の高い星間物質から生まれて,秒速約10kmくらいの速さで周囲に拡散しつつある星々である。
出典:世界大百科事典(平凡社)「アソシエーション」より一部引用
星落とも。天文学的には、比較的若い星の緩やかな集団のことです。集団を構成する星々は、同様の起源を持ちつつ既に重力的な束縛はありません。そのため、何百万年という時間の中で広く散らばっていくと考えられています。同一のアソシエーションに属するか否かの判断材料は、主に移動方向と星の年齢です。なお、引用した辞書に「アソシエーションには,3種類が知られている。」との記述がありOB型アソシエーションのみが紹介されていますが、残り二種類はT型アソシエーションとR型アソシエーションと呼ばれています(詳細は省略します)。
「アソシエーション」の語源は?
「アソシエーション」の語源を確認しておきましょう。直接の語源としては、英語の「association」がそのままカタカナ語となったものです。元単語である「association」は、ラテン語で「繋がり」を意味する「associatio」に由来します。更にここから、socio(結びつける)→socius(仲間)→sekw-(追い掛ける)と遡ることが可能です。語源を同じくする英単語としては、「social」が有名でしょうか。
「アソシエーション」の使い方・例文
「アソシエーション」の使い方を例文を使って見ていきましょう。
1.そのアソシエーションの活動は、次第に縮小していった。
2.とあるアソシエーションに属する星が、新たに見つかった。
3.火成岩アソシエーションの分布から、当時起こった地殻変動を推測する。
例文1-3はそれぞれ社会学・天文学・岩石学の分野における用例です。ここまで述べてきたように分野により様々な意味がありますが、どれも学術的な用語であるためそれぞれの分野内での意味にほとんど幅はありません。分野ごとの定義をしっかり理解することが大切です。
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