

「隠喩」なんて聞いたのは、はるか昔のお子さま時代に国語の時間にみて以来だな。俺は国語が得意教科だったわけじゃないから、あまり印象に残っていないがな。『ものごとをなにかに例えること』ってなんとなく覚えているが、語学的にどうなのかは怪しいもんだ。
今回は、シャレた「隠喩」を使いこなしたくてたまらない、っていうライターのぷーやんを呼んだ。「隠喩」の意味と使われ方について、説明してもらおうか。

解説/桜木建二
「ドラゴン桜」主人公の桜木建二。物語内では落ちこぼれ高校・龍山高校を進学校に立て直した手腕を持つ。学生から社会人まで幅広く、学びのナビゲート役を務める。

ライター/ぷーやん
webライター歴6年。鍛えられた語彙と文章力は本業でも発揮され、社内ルールの書き換え担当に。「隠喩」をオシャレに使いこなせるようになることを夢見ている。
辞書にみる「隠喩」
まずは辞書で「隠喩」がどのように書かれているのかを確認します。
比喩法の一。「…のようだ」「…のごとし」などの形を用いず、そのものの特徴を直接他のもので表現する方法。「花のかんばせ」「金は力なり」の類。暗喩。隠喩法。メタファー。
出典:デジタル大辞泉(小学館) 「隠喩」
桜木先生のおぼろげな記憶は正解でしたね。「隠喩」は比喩の一種で、なにかに例えていることを示す『○○のようだ/みたいだ』という言葉を省略したものです。したがって明確にイメージが湧く例え方をされないと、すこしわかりにくいことになります。
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例文で「隠喩」の使い方を確認!
次に、「隠喩」の言葉としての使い方を例文でみてみます。
1.『専用窓口へお電話でお問い合わせのうえ、無料商品サンプルをお試しください』と謳い、『会員になれば安価に買える』『紹介によって会員を増やせば利益の一部を還元する』と入会させて、次々と会員を増殖させる商法が横行している。なかには商品を介さず会員権のみのパターンもあり、この方法は会員数があっという間に増えることを多産に隠喩して、「ねずみ講」と呼ばれる。
2.年末年始の準備に12月は大忙しになる。『先生ですら走らなければならない』という意味の「師走」とは、これを実にうまく隠喩した表現だ。
3.中高一貫校に通っていて入試と縁遠かったため、大学入試に対して手続きから支障がないか心配だった。しかし中学生のとき学習塾で指導してくれていた講師の、『頑張った経験は人生の財宝だ。結果はあとからついてくる』という隠喩表現を思い出して、頑張っている。
例文1、2、3ではそれぞれ、『ねずみ』『師走』『財宝』が隠喩表現ということになります。
ちなみに例文1の前半で紹介されているような、『商品』を扱って会員を指数関数的に勧誘させていく商法は、『マルチ商法』です。いずれも会員が無限に増えていくことを前提として、儲かる仕組みとなっています。しかし当然そんなことは不可能なので、いつかは破綻して入会者は大損することも。うますぎる話には気を付けたいものですね。

「隠喩」は比喩の一つの形態ってことなんだな。いやあ、意外と小さい頃の記憶でも確かなもんだな。さて、言葉を正確に使いこなすためには、類義語や対義語を知っておくことも大切なことだ。「隠喩」には似た意味の言葉や反対の言葉はあるんだろうか?
暗喩:『○○のようだ』という形を取らない比喩
「隠喩」の別名で、同じ意味の言葉です。
メタファー:隠喩や暗喩の英語
のちに英語訳でも紹介しますが、「メタファー」は隠喩の英語訳です。また、外来語として「メタファー」というときは、『明確には示されないが、なんらかの象徴になっているもの』というニュアンスも。ちなみに「メタ」は「高次」という意味の接頭辞です。そしてここでの「高次」とは、「抽象的」ということ。この概念は複雑なものごとを整理するのにとても役立つので、覚えておくといいと思います。
「隠喩」の対義語はなにがある?
「隠喩」の対義語を2つご紹介します。ここで挙げる2つの言葉は、同義語です。
直喩:『○○のようだ』という形の比喩表現
『隠』に対して『直』の字を使って、直球的な比喩であることを表していますね。
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