この記事では「悉く」について解説する。

端的に言えば悉くの意味は「すべて」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

今回は広報担当者としての経験を持つライター「井上 樹」を呼んです。一緒に「悉く」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/井上 樹

“広報担当者”としての顔を併せ持つライター。「単語の意味レベルでも、誤った情報は発信しない」をモットーにしている。今回は「悉く」について分かりやすく解説していく。

「悉く」の意味や語源・使い方まとめ

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それでは早速「悉く」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「悉く」の意味は?

「悉く」には、次のような意味があります。

問題にしているもの全部。残らず。すべて。みな。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「悉く」

「悉く」は「ことごとく」と読みます。冒頭で桜木さんが説明したように、「すべて」という意味を持ち、かつ“残すところなくすべて”というニュアンスがある言葉です。

音読みでは「シツ」と読み、日常ではあまり見かけませんが「知悉(ちしつ)」「詳悉(しょうしつ)」などの熟語があります。知悉は「ある物事について、細かい点まで知りつくすこと」、詳悉は「非常にくわしくて漏れのないこと」という意味があり、いずれも「すべて」という意味合いが含まれていることがわかりますね。

また、「悉く否定された」「悉く外れた」など、一般的には好ましくない状況で使われます。「悉く」の具体的な使い方は、後で例文を紹介しますね。

「悉く」の語源は?

次に「悉く」の語源を確認しておきましょう。

悉くの「ことごと」は元々「事事」から由来しており、「物事のすべて」を表します。
また、言葉としては使ったことがあっても、漢字まではすぐに思い出せないという方も多いのではないでしょうか。

一見、形が珍しいこの漢字、象形文字を組み合わせた“会意文字”なんです。
獣が爪で他の獣の心臓をすべてえぐりとる様子から、獣の「」と「心臓」の象形文字を組み合わせて「悉く」という言葉ができました。

「悉く」の使い方・例文

先ほど「好ましくない状況で使われる」と紹介しましたが、実際にはどんな使われ方をするのでしょうか。以下の例文を見ながら、「悉く」の使い方を理解していきましょう。

\次のページで「「悉く」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.私の案は、悉く上司に却下された。

2.占い師の予言が悉く外れた。

3.事業に失敗してしまったので、悉く財産を失ってしまった。

4.ストレス発散をしたくて、密かに貯めていた貯金を悉く使ってしまった。

例文の「悉く」から伝わるニュアンスとして、例文1、2は「すべて」の意味を表し、例文3、4は「残らず」の意味を表します。いずれも好ましくない状況で使われていることがわかりますね。

「悉く」の類義語は?違いは?

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さきほどの例文のように、「残すところなくすべて」という意味で使われる「悉く」。類義語にはどんな言葉があるのでしょうか。一緒に確認していきましょう。

その1「尽く」

「尽く」も「ことごとく」と読みます。辞書で見ると、悉くと一緒に紹介されていることが多い言葉で、意味もほぼ同じです。微妙な違いとしては、「尽く」は漢字からもイメージできるように「尽くす、出し切る」というニュアンスがあります。

ただし、厳密な意味の違いはないので、悉くと尽くはどちらを使っても問題ないですよ。

あまりの暑さに、用意していたドリンクが尽く無くなっていった。

その2「余すところなく」

「余すところなく」は「残りがないこと」を表し、そこから「すべて」の意味を持つ表現になりました。悉くとは異なり、ポジティブな場面でも使われます。

\次のページで「その3「すっかり」」を解説!/

今度の試合では、練習の成果を余すところなく発揮します。

その3「すっかり」

「すっかり」も悉くの類義語として、「残らずすべて」という意味を持ちます。また、「驚くほど変わって」というニュアンスもある言葉です。

1.銀行に預けていた貯金がすっかりなくなってしまった。(すべて)

2.彼は都会に行って、すっかり人が変わってしまった。(驚くほど変わって)

その4「あらゆる」

「あらゆる」は「ある限りの」という意味です。ただし、悉くのように「残らず」というニュアンスはないため、使う時は注意しましょう。他の選択肢が残っている可能性もある、という時に使われます。例文で詳しく見てみましょう。

1.先日の会議では、上司にあらゆる質問をした。

2.間違った判断をしないよう、あらゆる角度から検討する。

「悉く」の対義語は?

結論から言うと、悉くには決まった対義語はありません。

しいて言うなら「すべて」という意味の反対となる「一部分」を表す言葉として「片鱗」「断片的」などで表現することができます。

「悉く」の英訳は?

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最後に、悉くを英訳するとどんな表現になるのかをご紹介しますね。

\次のページで「その1「all」」を解説!/

その1「all」

「all」は日常でもよく見る単語ですが、「全部・すべて」の意味を持ち、悉くのニュアンスを表現することができます。

その2「entirely」

「entirely」は「まったく・完全に」と訳し、all同様、悉くを表すことができる英単語です。

このように悉くを直訳するような英語はありませんが、「すべて」というニュアンスを伝える言葉として「all」や「entirely」などが使われます。最後に、それぞれの英語の例文を一つずつご紹介して、今回の悉くについての解説を終わりますね。

He spent all the money he had.
(彼は持っていたお金を悉く使ってしまった。)

It's entirely different from what I expected.
(私が期待していたこととは、悉く異なっている。)

「悉く」を使いこなそう

この記事では「悉く」の意味・使い方・類語などを説明しました。悉くは「残らずすべて」という意味で、好ましくない状況で使うことがご理解いただけましたか。

厳密に言うと、好ましくない状況でしか使ってはいけないというわけではありませんが、「先日受けた試験は、悉く合格だった。」というようなポジティブな使い方は、やはり違和感がありますよね。

言葉から生まれる違和感は、コミュニケーションの流れを止めてしまいます。今回説明したように類義語もいくつかあるので、ニュアンスの違いをしっかりと理解して、「悉く」を使いこなしましょう。

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国語言葉の意味

「悉く」の意味や使い方は?例文や類語を広報担当者ライターがわかりやすく解説!

今度の試合では、練習の成果を余すところなく発揮します。

その3「すっかり」

「すっかり」も悉くの類義語として、「残らずすべて」という意味を持ちます。また、「驚くほど変わって」というニュアンスもある言葉です。

1.銀行に預けていた貯金がすっかりなくなってしまった。(すべて)

2.彼は都会に行って、すっかり人が変わってしまった。(驚くほど変わって)

その4「あらゆる」

「あらゆる」は「ある限りの」という意味です。ただし、悉くのように「残らず」というニュアンスはないため、使う時は注意しましょう。他の選択肢が残っている可能性もある、という時に使われます。例文で詳しく見てみましょう。

1.先日の会議では、上司にあらゆる質問をした。

2.間違った判断をしないよう、あらゆる角度から検討する。

「悉く」の対義語は?

結論から言うと、悉くには決まった対義語はありません。

しいて言うなら「すべて」という意味の反対となる「一部分」を表す言葉として「片鱗」「断片的」などで表現することができます。

「悉く」の英訳は?

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最後に、悉くを英訳するとどんな表現になるのかをご紹介しますね。

\次のページで「その1「all」」を解説!/

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