5分で分かる「分子説」原子や分子の存在を証明する実験とは?京大卒の研究員が丁寧にわかりやすく解説!
3-1.気体反応の法則と原子説の破綻
François Séraphin Delpech – chemistryland.com, パブリック・ドメイン, リンクによる
気体反応の法則は1808年にフランスのゲーリュサックによって発見された法則です。まずは水素と酸素の反応によって水が生成する、という反応を基に法則を見ていきましょう。酸素の体積に対して2倍の体積の水素を反応させると、水素と同じ体積の水(水蒸気)が生成します。つまり、気体反応の法則とは「反応する気体と生成する気体の体積は簡単な整数比となる」という法則です。
この法則は原子説で説明できるでしょうか。仮に酸素、水素が1つの原子として存在すると考えてみましょう。例えば簡単な例として酸素原子が2個、水素原子が4個、水素と同じ体積である水も4個存在するとします。このとき水は酸素原子と水素原子が1個ずつ結合した化合物として考えると酸素原子が足りません。そして酸素原子は分割できないので水素1個と酸素2分の1ずつとすることもできません。逆に水が4個あるからといって足りない酸素原子を2個追加したら質量保存の法則と矛盾します。つまり原子説では気体反応の法則は説明できなかったのです。
3-2.分子説
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気体反応の法則を説明できる仮説として1811年にイタリアのアボガドロが提唱したのが「分子説」です。分子説とは「同一温度、同一圧力において、同じ体積の気体には同数の分子が含まれる」という仮説であり、水素や酸素、水などは複数の原子が結合した分子として存在しているという仮説でした。
分子説を使って気体反応の法則を説明してみましょう。今度は2つの原子が結合した酸素分子が2個、水素分子が4個存在すると考えます。このとき酸素原子1つ、水素原子2つから水が作られると考えると原子を分割することなく水4個を作ることが可能です。
ちなみに分子説が発表されたときは「気体反応の法則を説明するために持ち出した仮説に過ぎない」という反論もありました。分子の存在が立証されたのは20世紀初頭、量子化学という学問が誕生、発展してからのことです。
分子説は実験結果を説明できる科学的な仮説
今回は原子説を学び、原子説と矛盾する実験結果を説明できる仮説として分子説が誕生したことを学びました。原子説、分子説は天秤を用いて定量的、正確に行われた実験結果を説明できる、という点でそれまでの仮説とは異なります。原子説、分子説が誕生した18世紀末は「科学の始まり」とも言えるかもしれません。
原子説と矛盾する法則が登場し、その法則を説明するために分子説が誕生する。このように従来の仮説を否定する実験結果が現れ、その結果を説明できるより良い仮説が誕生する、というサイクルを繰り返して科学は発展してきました。分子説を学ぶことは科学の作法を学ぶという点でも優れた教材と言えるでしょう。