5分で分かる「分子説」原子や分子の存在を証明する実験とは?京大卒の研究員が丁寧にわかりやすく解説!
1-1.古代ギリシャの物質観
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「万物は一体どんなものから作られているのか」、「物質を分解し続けると何が現れるのだろうか」、このような疑問は古代ギリシャの哲学者を悩ませていました。自然哲学の父とも言われるタレスは「万物の根源は水である」と述べ、哲学者のアリストテレスは「万物の根源は火、空気、土、水である」と述べました。
偉大な哲学者であるアリストテレスの影響力もあり、後者の「四元素説」はその後2000年もの間「正しい物質観である」とされていました。
1-2.科学的思考の登場
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古代ギリシャの四元素説は原子説、分子説に近い考えではないか、そう思う人もいるかもしれません。しかし四元素説にはその考えを立証する証拠がない、という致命的な問題がありました。つまり四元素説は「科学」のように実験結果から自然現象を考察する、というものではなく思索のみから答えを導き出す「哲学」でした。
もちろんアリストテレスなどの古代ギリシャの哲学者の偉業を貶めるつもりはありません。ですが「科学的に考える」ためには数字を使って自然現象を表現することが必要です。そのような数字による表現を行うために重要な役割を果たしたのは「天秤」でした。天秤を用いることで「重さ」を数字で、定量的に表すことが可能になったためです。
2.原子説の登場
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前の章では思索に基づく古代ギリシャの四元素説、そして実験結果と数字を基に自然現象を表現する「科学」の考え方を紹介しました。この章では原子説が誕生するきっかけとなった実験について学んでいきます。まずそれぞれの実験結果から導き出される法則について学び、その後に各法則を説明できる「原子説」について学んでいきましょう。
2-1.質量保存の法則
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最初に学ぶ法則は「質量保存の法則」です。1774年、フランスのラボアジエは金属の一種であるスズと空気中の酸素が反応したときの質量変化を調べました。
まず密閉された容器にスズを入れて質量を測定します。スズの重さをA、容器内の空気の重さをBとすると、容器全体の重さはA+Bです。この容器を加熱して、空気中の酸素とスズが反応しても全体の重さはA+Bで変わりませんでした。しかし、この状態で容器の栓を外すとスズと反応した酸素の分だけ空気が入り、全体の重さはA+B+aと増加します。
この実験結果から言えること、それは「化学反応の前後で質量は変わらない」ということです。
2-2.定比例の法則
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次はフランスのプルーストが発見した「定比例の法則」について学びます。ここでは例として空気中でマグネシウムを加熱することによる酸化反応を考えてみましょう。
質量が異なるマグネシウムを加熱すると、酸素と反応することによって酸化マグネシウム(MgO)が生成します。このマグネシウムと酸化マグネシウムの質量の関係を以下の表にまとめました。マグネシウムと酸化マグネシウムの質量を比較すると全て3:5、つまり酸化マグネシウムの質量比はマグネシウムと酸素が3:2で常に一定になります。これが「定比例の法則」です。
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