
5分で分かる「HSAB原理」酸と塩基が硬いとはどういうこと?京大卒の研究者が分かりやすくわかりやすく解説!
酸と塩基の定義の中でもルイスの定義は応用範囲が広く、よく使われる定義です。ただしルイスの定義は応用範囲が広いがゆえに、酸と塩基のグループ分けが必要となる。そこで登場するのが今回学習する「HSAB原理」なんです。化学に詳しいライター珈琲マニアと一緒に解説していきます。
ライター/珈琲マニア
京都大学で化学を学び、現在はメーカーの研究職として勤務。学生時代の専門である物理化学を中心として化学全般の知見が豊富なライター。
1.酸と塩基

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今回学習する「HSAB原理」とは酸と塩基に関する用語の一つです。酸と塩基にはいくつかの定義がありますが、「ルイス酸」「ルイス塩基」という定義にHSAB原理は関係しています。
この章では、はじめに酸と塩基の定義で一般的な「ブレンステッド-ロウリーの定義」を学んだ後にルイス酸とルイス塩基について学んでいきましょう。その後にルイス酸とルイス塩基が形成する「錯体」についても学習していきましょう。
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1-1.ブレンステッド-ロウリーの酸塩基

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酸と塩基の定義で比較的一般的なものとして「ブレンステッド-ロウリーの定義」が挙げられます。これは「酸は水素イオン(プロトン)を供与する」、「塩基はプロトンを受容する」という定義です。この定義は高校化学で勉強した人もいるかもしれません。
例えばフッ化水素HFなどのハロゲン化水素は水と接触すると水にプロトンを渡すため酸であると言えます。同様にアンモニアNH3は水と接触するとプロトンを受け取るため塩基です。ちなみに塩基が水に溶けるとOH–基(水酸化物イオン)が生成しますが、これは塩基が水からプロトンを受け取るために生成します。
ブレンステッド-ロウリーの酸と塩基の定義はプロトンの受け渡しで説明できるため理解が容易で、かつ重要な定義です。今回のHSAB原理とは直接関係はありませんが、しっかり理解しておきましょう。
1-2.ルイス酸とルイス塩基

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ブレンステッド-ロウリーの酸と塩基の定義は理解しやすい酸と塩基の定義です。しかし、この定義はプロトンが存在する系にしか適用することができず、金属化合物などの酸と塩基の性質を考えることはできません。そこで登場するのがルイス酸、ルイス塩基です。
ルイス酸とは「電子対を受け取る物質」で、ルイス塩基とは「電子対を渡す物質」と定義されます。この定義は先ほど学んだブレンステッド-ロウリーの定義と矛盾するわけではありません。むしろより広い定義であると言えます。
ルイス塩基を考えるためにアンモニアと水の反応をもう一度見てみましょう。先ほどはアンモニアが水からプロトンを受け取ったと説明しました。これは見方を変えるとアンモニアに存在する二つの電子(電子対)を水に渡すことで水素イオンを受け取ったとも読み取れます。つまりアンモニアは電子対を渡す物質として機能しているのです。
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