5分で分かる「共役塩基」酸の強さと溶液中で生成するイオンとの関係は?京大卒の研究者がわかりやすく解説!
1-2.平衡状態の反応ギブズエネルギー
反応ギブズエネルギーがゼロになるとき、平衡状態になることを学びました。途中の計算式は割愛しますが反応ギブズエネルギーは化学ポテンシャルの定義から以下の式で書き表すことができます。ここでQは反応比と呼ばれるもので、反応物と生成物の量によって決まる値です。
ここで反応ギブズエネルギー⊿rGにゼロを代入してみましょう。すると標準状態(圧力が1bar)の反応ギブズエネルギーとQの間で以下の式が成り立ちます。標準反応ギブズエネルギーは熱力学データから予測することができるため、この式からQを求めることができるのです。
1-3.実在液体の活量と平衡定数
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ここで2種類以上の化合物が含まれた液体の化学ポテンシャルは以下の式で表すことができます。化合物同士の相互作用にほとんど差がない場合Aの圧力は純粋なAの蒸気圧pA*にモル分率xAを掛けた値で表すことができるため、化学ポテンシャルは以下のように書き換えることが可能です。ただし相互作用の大きさが変わる場合、モル分率xAは「活量」という値で書き換える必要があります。
ここで前の章で学習した反応比Qに戻りましょう。実はこの反応比Qは反応物、生成物の活量を用いて以下のように表すことができるのです。そして平衡状態の場合反応比Qは他の状態と区別するために平衡定数Kとして以下の式で表します。
2.酸と共役塩基
この章では酸と共役塩基の関係について学んでいきましょう。酸と水素イオンH+を放出した共役塩基ならびに水素イオンの間での平衡状態の違いによって酸の強さは決まります。
酸の強さとしてpHという値を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。この値は酸と共役塩基の平衡定数によって決まります。この章では活量を用いたpHの定義を見て、その後に水以外の溶媒でも成り立つ酸定数について学んでいきましょう。
2-1.pHの定義と活量
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酸が入った水溶液を題材に、pHと共役塩基について考えていきましょう。水中での酸の化学平衡は以下の式によって表すことができます。水中で酸は水素が陽イオンとして解離して、同時に元の分子から水素が一つ脱離した陰イオンが生成。この陰イオンが「共役塩基」です。
酸の強さを表すpHは酸から解離した水素イオン(陽子)が水に付加したH3O+の活量を用いて以下のように定義されます。なお酸の濃度が小さい場合、活量はモル濃度に置き換えることが可能です。おそらくモル濃度に置き換えた式のほうが一般的ではないでしょうか。
2-2.酸定数と共役塩基
ここで改めて水溶液中の酸の化学平衡を見ていきましょう。この酸の平衡も活量を用いた平衡定数の式で表現することが可能です。そして希薄溶液においては水の活量を「1」に近似できることため、平衡定数は「酸定数」Kaとして共役塩基などの活量を用いて以下の式で表します。
酸定数Kaは希薄溶液において活量からモル濃度で書き換えることが可能です。つまり、酸定数は共役塩基などのモル濃度を用いて以下の式で表されます。ところで酸定数KaはpHと同じように対数を用いて「pKa」という値で表すことも多いです。ちなみに前の章で学んだ通り、平衡定数は標準反応ギブズエネルギーと関係があります。つまり酸定数の大きさは標準ギブズエネルギーの大小を反映しているのです。
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