
同じ種類の樹木が一か所に偏らず、まんべんなく分布しているようであれば、それはジャンゼン・コンネル仮説に当てはまる実例の一つかもしれません。
では以下に、ジャンゼンとコンネル、二人の説を見ていきましょう。
1.ジャンゼンの観察
この仮説の提唱者の一人であるジャンゼンは、熱帯の生物を専門とする研究者です。彼は熱帯雨林で樹木を観察する中で、あることに気づきました。それが、「幼木は、その親である木の近くにはほとんど生えていない」という事実です。
ある種の樹木が生育していても、その子ども(もしくは同種の幼木)がすぐ近くに生えていないなんて、変だと思いませんか?
発想を転換すれば、これは「親木(もしくは同種の成木)の近くでは、その幼木が育ちにくい原因があるかもしれない」ということです。ジャンゼンは、同種の成木・親木に集まる病原体や捕食者が、幼木や実、種に影響を与えるのではないかと考えました。
そうですね。ある種の樹木に感染する細菌やウイルスがあり、すでにそれに感染した個体があった場合、その個体の近くほど感染しやすく、離れるほど感染確率は減少することがわかっています。この辺は、私たちの感染症対策につながるものがありますね。
特定の樹種に寄生する生物がいた場合も、やはり感染個体の近くにあるほど危険が及ぶでしょう。
捕食者についても似たようなことが言えます。ある種の樹木の葉が大好物な動物がいるとしましょう。背の高い成木の葉よりも、低いところに若々しい葉をつけた幼木があれば、そちらを先に食べてしまうかもしれません。あるいは、成木の葉を食べようとして幼木を踏みつけてしまうことも考えられます。
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