この記事では「危惧」について解説する。

端的に言えば危惧の意味は「心配し恐れること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「危惧」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「危惧」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

「危惧」は「きぐ」と読みます。また「危懼」と書いて「きく」と読むことも。どちらも意味は同じです。それでは早速「危惧」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「危惧」の意味は?

「危惧」には、次のような意味があります。

あやぶみ、おそれること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「危惧」

「危惧」は、ある状況を心配し恐れるときに使う言葉です。「危」は「危-ない(うい)」、「惧」は常用漢字表外ですが「おそ-れる」と読みます。

「絶滅危惧種」という語句は、文字どおり絶滅の恐れが極めて高い野生生物一般に使われる言葉です。

「危惧する」は能動的に心配することですが、「危惧される」は第三者的立場で使います。気象庁の発表などで「豪雨による災害が危惧されます」とアナウンスされますね。これは自分自身の身の上より他人を心配しての発言です。普段はあまりこのようなむずかしい表現は使いませんが「家族の安否を危惧する」という場合は、自らが心配する立場で発せられます。

「危惧」の語源は?

「危惧」の語源には確かな文献は存在しません。『「危惧」の意味は?』で解説したとおり、「危-ない(うい)」と「惧(おそ-れる)」という同じような意味をもつ文字を結合してできあがったものです。言葉の語源は中国から伝わったものが多いのですが、「危惧」の語源となるものはありません。どうも日本で生まれた表現だと考えられます。

\次のページで「「危惧」の使い方・例文」を解説!/

「危惧」の使い方・例文

「危惧」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.気象庁では「局地的豪雨による河川の氾濫や土砂崩れが危惧されます」と警戒を呼びかけた。

2.日本に生息するツシマヤマネコ、シマフクロウなどが絶滅の恐れが高いとして絶滅危惧種に指定されており、保護の必要性が叫ばれている。

3.テレビや新聞では毎日のように事件や事故が報道されていますから親御さんが危惧される気持ちはわかりますが、わが校ではボランティアの方や教師が登下校の経路を見守っていますから安心してください。

「危惧」という言葉は、心配事や恐れが差し迫った現実として実感されるときに使われます。例えば交通事故や火山の噴火などにより身体や財産に害が及ぶことに危機感を持ったり、自分の周りで窃盗などの犯罪が頻発している場合などです。これらは漠然とした不安ではなく、より明確なかたちで危険が迫っていることを表しています。それだけに、起こるかもしれない出来事がありありと想像できるのです。

したがって「もしこうなったら嫌だな」という現実的に起こりそうにないことにはあまり使いません。

「危惧」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

「危惧」には多くの類義語、同義語があります。そのなかでも代表的な言葉を取り上げ、意味の違いも解説しましょう。

その1「心配」

「危惧」は「あやぶみ、おそれること」ですが、「心配」は「なにか悪いことが起きないか考え、心が落ち着かない様子」を意味します。現代では「危惧」を使うことのほうがまれで、多くの人が「心配」を使うことのほうが多いでしょう。また「心配」は「心くばり」と同じ意味ですから、あれこれと手配して気遣うという場合にも使われます。「宿の心配までしていただいて‥・」などがいい例ですね。

これらからわかるとおり「心配」は、現在の状況と将来のことをいろいろと気にすることのほか、気配りの意味もあります。つまり「危惧」より広い意味で使われるのです。つまるところ「危惧」は、現在身に降りかかっている不安のことで、「心配」は切迫した状態から将来起こりうる可能性まであれこれと思い悩むことと言えます。ですから取り越し苦労で終わる場合もあるのです。「危惧」は「心配」のなかに含まれる概念と言ってもいいでしょう。

\次のページで「その2「懸念」」を解説!/

その2「懸念」

「懸念」は「けねん」と読みます。「危惧」とよく似た意味の言葉ですが微妙にニュアンスが違うの注意が必要です。「懸念」はまだ起きてもいない将来のことを心配する場合に使うのに対し「危惧」は恐れる対象が具体的ではっきりしています。

例えば、絶滅するかもしれないとの不安がある野生生物は「絶滅危惧種」であり、「絶滅懸念種」とは言いませんね。この例からもわかるとおり「危惧」はその対象が特定されています。ここでもやはり「心配」同様、「懸念」のほうが広い意味で使われており、「危惧」は「懸念」のなかに含まれると考えても差し支えないでしょう。

そのほか「憂慮」や「杞憂」も類義語の一種と言えます。

「危惧」の対義語は?

「危惧」の対義語には「安堵」「確信」があります。「安堵」はなんとなくわかる気がしますが、「確信」については首を傾げる方もおられるのではないでしょうか。そこで「危惧」の対義語としての「安堵」と「確信」について見ていくことにしましょう。

その1「安堵」

「危惧」の対義語としてまず思い浮かぶのは「安堵」(あんど)でしょう。気懸かりなことが取り除かれ安心することです。「堵」(と)には垣根や塀の意味があります。垣根や塀に囲まれた場所は確かに安心できる場所ですね。そこから、中世に領主や幕府が土地の所有権を認めることを「安堵する」と言いました。

テレビの時代劇、特に戦国時代を描いたドラマではよく使われる言葉ですから、あなたも一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

その2「確信」

「確信」が「危惧」の対義語と聞いてピンとこない人もいるかもしれません。しかし「危惧」が「ある状況を心配し恐れること」なのに対し、「確信」は「確かにそうであると自分の予測・判断を信じること」ですから「危惧」の入りこむ余地はないのです。結果的に「確信」は「危惧」の対義語であると言えるでしょう。

もっとも文章を書くときに「確信」が「危惧」の対義語だと意識している人はいないかもしれません。なんとなく使っている場合が多いと思います。しかし、こうした細かい部分に気を配ることであなたの語彙力は徐々に上がっていくのです。

「危惧」の英訳は?

image by iStockphoto

最後に「危惧」の英訳について見ていきましょう。

「concern」

英単語の「concern」が日本語の「危惧」に最も近い言葉でしょう。「concern」は「危惧」「懸念」「心配」のほか「該当の」とか「関連」という意味もあります。日本語の「危惧」のように意味の取り違えがないような語句ではなく、前後の文章や言葉から意味を判断するのが普通です。

例えば「concern」を使った例文には次のようなものがあります。

\次のページで「「危惧」を使いこなそう」を解説!/

1.I am much concerned about your health.
「私はあなたの健康をとても心配している」

2.Developers are typically most concerned about quality.
「通常、開発者は品質について最も懸念している」

3.I understand the customer's concerns.
「顧客の懸念はよく理解している」

「危惧」を使いこなそう

この記事では「危惧」の意味・使い方・類語などを説明しました。

固いイメージがあって普段の会話ではあまり使用されない言葉です。むしろ「心配」や「不安」のほうが一般的によく使われますね。でも「心配」や不安」よりもより具体的なシーンで使われる言葉です。あなたの語彙を増やすためにも覚えていて損はないでしょう。

" /> 「危惧」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説! – Study-Z
国語言葉の意味

「危惧」の意味や使い方は?例文や類語を元広報紙編集者がわかりやすく解説!

この記事では「危惧」について解説する。

端的に言えば危惧の意味は「心配し恐れること」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

自治体広報紙の編集を8年経験した弘毅を呼んです。一緒に「危惧」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/八嶋弘毅

自治体広報紙の編集に8年携わった。正確な語句や慣用句の使い方が求められるので、正しい日本語の使い方には人一倍敏感。

「危惧」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

「危惧」は「きぐ」と読みます。また「危懼」と書いて「きく」と読むことも。どちらも意味は同じです。それでは早速「危惧」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「危惧」の意味は?

「危惧」には、次のような意味があります。

あやぶみ、おそれること。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「危惧」

「危惧」は、ある状況を心配し恐れるときに使う言葉です。「危」は「危-ない(うい)」、「惧」は常用漢字表外ですが「おそ-れる」と読みます。

「絶滅危惧種」という語句は、文字どおり絶滅の恐れが極めて高い野生生物一般に使われる言葉です。

「危惧する」は能動的に心配することですが、「危惧される」は第三者的立場で使います。気象庁の発表などで「豪雨による災害が危惧されます」とアナウンスされますね。これは自分自身の身の上より他人を心配しての発言です。普段はあまりこのようなむずかしい表現は使いませんが「家族の安否を危惧する」という場合は、自らが心配する立場で発せられます。

「危惧」の語源は?

「危惧」の語源には確かな文献は存在しません。『「危惧」の意味は?』で解説したとおり、「危-ない(うい)」と「惧(おそ-れる)」という同じような意味をもつ文字を結合してできあがったものです。言葉の語源は中国から伝わったものが多いのですが、「危惧」の語源となるものはありません。どうも日本で生まれた表現だと考えられます。

\次のページで「「危惧」の使い方・例文」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: