この記事では「剽窃」について解説する。

端的に言えば剽窃の意味は「他人の文言を盗んで使うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語検定一級を持ち、文学部に所属する現役大学生ライターである文学少女を呼んです。一緒に「剽窃」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/文学少女

文学部で学んでいる読書好きの現役大学生。大学のみならず、日々の読書や日本語検定・漢字検定などで学んだ知識を活かして、種々の言葉を丁寧に解説する。

「剽窃」の意味や語源・使い方まとめ

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文章を書く際の不正行為の一つとして、「剽窃」という語を耳にしたことがある人は少なくないでしょう。剽窃を行った場合、学術上やビジネス上のモラルに反するだけでなく、時に法律違反として処罰されることもあります。そうしたトラブルを避けるためにも、この語を正確に理解することが必要不可欠です。それでは早速「剽窃」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「剽窃」の意味は?

「剽窃」には、主に次のような意味があります。

他人の作品や論文を盗んで、自分のものとして発表すること。「他人の論文を剽窃する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「剽窃」

「剽窃」は「ひょうせつ」と読み、主に学術研究や出版の場面で使われる語です。辞書には他人の作品や論文を盗む、とありますが、この場合の「盗む」とは他の人のアイデアや言葉を自身のものとして発表することを指します。一言一句同じでなかったとしても、他人の成果物を簡単にパラフレーズをしただけで内容が同じものは「剽窃」に当たります

もし他の人のものについて自身の文章で言及したい場合には、引用部分を引用符で明記し、参考文献に引用元を示さなければなりません。また、執筆者自身の過去の著作物についても、クレジット表記をしないと「自己剽窃」という剽窃の一種に該当することがあるため注意が必要です。

「剽窃」の語源は?

次に「剽窃」の語源を確認しておきましょう。漢字表記については、「剽」は「かすめ取る」、「窃」は「こっそり取る」を意味します。ほぼ同様の意味を持つ漢字を重ねた熟語です。

\次のページで「「剽窃」の使い方・例文」を解説!/

「剽窃」の使い方・例文

「剽窃」の使い方を例文を使って見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

1.この投稿論文は、剽窃を理由にリジェクトされた。
2.彼は、他の作家の作品を剽窃したとして訴えられている。
3.引用に不備があると、剽窃として罰せられることがある。

例文1では学術研究を、例文2では文学作品を対象として、他の人の成果物を自身の作品として発表したことを表しています。動詞として使いたい場合には、例文2のように「剽窃する」の形でそのまま用いることが可能です。

また、例文3にあるように、その意図が無かった場合にも「剽窃」という語の適用範囲となることに注意。主に、クレジット表記の際のケアレスミスや他言語圏からの引用の際に起こりがちです。ただし、これらは「意図しない剽窃」として、多くの場合通常の「剽窃」とは区別されます。

「剽窃」の類義語は?違いは?

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ここでは、「剽窃」の類義語について見ていきましょう。

その1「コピペ」

元はコンピューターの機能の「コピー&ペースト」の省略形でしたが、転じて、WEB上の検索結果や文章を書き写して自分のものとすることを表すようになりました。インターネットの拡大と共に、「剽窃」がコピー&ペーストの機能を用いて極めて容易に行われるようになったことから生まれた語です。近年では、こうした行為を発見するための「コピペチェックツール」も広まりを見せています。

\次のページで「その2「盗作/盗用」」を解説!/

その2「盗作/盗用」

俗語では「パクり」とも。両者ともに「剽窃」とほぼ意味は同じです。強いていうならば、「剽窃」に比べより一般的な文脈で使われることが多いといえるでしょう。

同じく他者模倣でありながらも、オリジナル作品をそのまま自身のものとして流用するこれらの語と、いわゆる「パロディ」や「オマージュ」とは明確に区別されます。定義は様々ですが、「パロディ」は尊敬・賞賛の意を込めて、「オマージュ」は揶揄や風刺の意を込めて、必ず独自の解釈や表現を加えた創作となっているのが特徴です。

「剽窃」の対義語は?

「剽窃」の対義語は、「新しいものを作る」という観点から考えることができるでしょう。

その1「独創」

他の真似ではなく、その人独自の考えで物事を作りあげることを指します。主に傑出した芸術作品に対する評価として使われることが多いです。この語は本来、単なる新しさや他との違いを表すものではありません。英語をはじめとして西欧語において独創性を意味する単語は、「源泉から湧き出したもの」という意味を持ちます。ここでの「源泉」とは個人の創造力です。つまり、独創性とは個々の作品に刻み込まれた製作者独特の創造性の証であり、新しさはその結果の一側面に過ぎません。

その2「換骨奪胎」

類義語の欄で触れた「パロディ」や「オマージュ」のような、「ある作品の要素を取り入れつつ新たな作品へと昇華する」といった意味での対義語としては、「換骨奪胎」が代表的でしょう。この語は、「骨を取り換え胎を取って自分の物とする」という仙人の術になぞらえて詩作のコツを解説した中国の古典(「冷斎夜話」)が基となった故事成語です。同様の意味を持つものとして、出典を同じくする「点鉄成金」があります。こちらは「他の人が作った平凡なものを素晴らしいものへと変える」というニュアンスが加わった四字熟語です。

「剽窃」の英訳は?

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最後に、「剽窃」の英訳について見ていきます。

「plagiarism」

英単語の「plagiarism」は日本語の「剽窃」とほぼ同様の意味です。この語は、ラテン語で「誘拐犯」を表すplagiāriusが語源となっています。海外に比べ日本ではまだまだ軽視されがちな剽窃行為ですが、「誘拐」と捉え直すとその行為の重大さが分かるのではないでしょうか。

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「剽窃」を使いこなそう

この記事では「剽窃」の意味・使い方・類語などを説明しました。一つの研究や作品を作りあげるには膨大な時間や手間が費やされており、それをそのまま掠めとる「剽窃」は決して許されない行為です。剽窃行為にも様々な種類がありますが、そのどれもを行うことがないように「剽窃」という語の意味を改めて確認しましょう。その上で、繰り返しになりますが、定められた引用ルールを確認・遵守するようにすることが重要です。

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国語言葉の意味

「剽窃」の意味や使い方は?例文や類語を現役文学部生がわかりやすく解説!

この記事では「剽窃」について解説する。

端的に言えば剽窃の意味は「他人の文言を盗んで使うこと」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

日本語検定一級を持ち、文学部に所属する現役大学生ライターである文学少女を呼んです。一緒に「剽窃」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/文学少女

文学部で学んでいる読書好きの現役大学生。大学のみならず、日々の読書や日本語検定・漢字検定などで学んだ知識を活かして、種々の言葉を丁寧に解説する。

「剽窃」の意味や語源・使い方まとめ

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文章を書く際の不正行為の一つとして、「剽窃」という語を耳にしたことがある人は少なくないでしょう。剽窃を行った場合、学術上やビジネス上のモラルに反するだけでなく、時に法律違反として処罰されることもあります。そうしたトラブルを避けるためにも、この語を正確に理解することが必要不可欠です。それでは早速「剽窃」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「剽窃」の意味は?

「剽窃」には、主に次のような意味があります。

他人の作品や論文を盗んで、自分のものとして発表すること。「他人の論文を剽窃する」

出典:デジタル大辞泉(小学館)「剽窃」

「剽窃」は「ひょうせつ」と読み、主に学術研究や出版の場面で使われる語です。辞書には他人の作品や論文を盗む、とありますが、この場合の「盗む」とは他の人のアイデアや言葉を自身のものとして発表することを指します。一言一句同じでなかったとしても、他人の成果物を簡単にパラフレーズをしただけで内容が同じものは「剽窃」に当たります

もし他の人のものについて自身の文章で言及したい場合には、引用部分を引用符で明記し、参考文献に引用元を示さなければなりません。また、執筆者自身の過去の著作物についても、クレジット表記をしないと「自己剽窃」という剽窃の一種に該当することがあるため注意が必要です。

「剽窃」の語源は?

次に「剽窃」の語源を確認しておきましょう。漢字表記については、「剽」は「かすめ取る」、「窃」は「こっそり取る」を意味します。ほぼ同様の意味を持つ漢字を重ねた熟語です。

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