この記事では「眼福」について解説する。

端的に言えば眼福の意味は「美しいものを見たときの幸せな気持ち」ですが、もっと幅広い意味やニュアンスを理解すると、使いこなせるシーンが増えるぞ。

元予備校校舎長で教育系ライターのみゆなを呼んです。一緒に「眼福」の意味や例文、類語などを見ていきます。

ライター/みゆな

元大手予備校校舎長、現在は教育系のライター。国語、特に現代文の指導経験が豊富。難解な言葉や表現を中高生がスラスラ理解できるように解説するのが大得意。

「眼福」の意味や語源・使い方まとめ

image by iStockphoto

「眼福」は「がんぷく」と読みます。顔立ちの整った俳優を見てファンが「眼福だわ!」と言ったりしますね。さてこの「眼福」ですが、どのようにして「眼福」という言葉が成り立ったのかは知っていますか?また正しくはどんな意味なのでしょうか?身近な例文も見ながら、「眼福」について詳しく解説します。

それでは早速「眼福」の意味や語源・使い方を見ていきましょう。

「眼福」の意味は?

「眼福」には、次のような意味があります。

珍しいもの、美しいものなどを見ることのできた幸せ。目の保養。

出典:デジタル大辞泉(小学館)「眼福」

「眼福」は美しいものや珍しいものを見て、心が満たされる・幸せな気分になるという状態を一言で表す言葉です。「眼」という漢字が使われていることからも分かるように、視覚的な情報によって癒される、心が落ち着くと言ったときに使用します。口語より文章でよく登場する言葉ですね。読み方は「がんぷく」であり、「がんふく」ではないことに注意しましょう。

「眼福」の語源は?

次に「眼福」の語源を確認しておきましょう。

「眼福」は中国語由来の言葉だと言われています。もともと中国語には、五感が刺激され幸せな気持ちになることを「福」の字を使って表す慣習がありました。たとえば「美しい音楽を聴いて幸せになる」なら「耳福」、「美味しいものを食べて幸せな気持ちになる」なら「口福」といった具合です。同じように美しいものを見て多幸感に浸ることをいつしか「眼福」と言うようになり、それが日本に渡ってきたものだと言われています。

「眼福」の使い方・例文

「眼福」は文語的な表現と思われがちですが、SNS投稿など日常的にも使えます。美しいものを見たときの幸福感を一言で表せるので、使いこなせるとても便利ですよ。例文で「眼福」の使い方を見ていきましょう。この言葉は、たとえば以下のように用いられます。

\次のページで「「眼福」の類義語は?違いは?」を解説!/

1.あのアーティストの作品はいつ見ても眼福を得ることができる。
2.貴重なコレクションを眼福にあずかり、ありがとうございます。
3.夜通し登り山頂から見たご来光は、眼福の極みだった。
3.眼福と言われたいがために、あの人気タレントは美容整形をしたらしい。

例文1は「眼福を得る」という表現を紹介します。「美しいものを見て幸せな気持ちを得る」という意味です。絵画や芸術作品、壮大な景色などを目の当たりにした際の高揚感を端的に表すことができます。

例文2は「眼福にあずかる」という表現です。これは「眼福を得る」を謙譲表現にしたもので、「素晴らしいものを見せていただいたときの感謝の気持ち」を相手に伝えることができます。

例文3は「眼福の極み」ですね。「眼福を得る」よりもっと気持ちの高ぶりが表現でき、稀少価値の高いものやめったに見ることができないものを見た時の感動をが伝わる表現です。

例文4は日常的な表現を紹介してみました。「あの女性タレントは美しいと言われたいがために美容整形した」という意味になります。

「眼福」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

素晴らしいものを見てとても幸せだという気持ちを表す「眼福」ですが、同じ意味を表す言葉にはどのようなものがあるでしょうか。「眼福」の類義語を見てみましょう。

その1「目の保養」

「眼福」と同じ意味を持つ最も一般的な言葉は「目の保養」です。「眼福」より会話的な表現なので、使ったことがある人も多いかもしれませんね。美しいものや好きなものを見て心が満たされたときに、眼福よりも気軽に使えます。

「テレビで美味しそうなレシピを紹介していた。仕上がりも見事で目の保養になった。」

その2「目の正月」

目の正月」という言葉は聞いたことがありますか?これも「眼福」の類義語です。「正月」という言葉が入っているのでおめでたい雰囲気が感じられる言葉ですね。珍しいもの、美しいものを見て楽しむときに使う表現です。

\次のページで「その3「目の薬」」を解説!/

「成人式を迎える孫が、正月に振袖姿を披露してくれた。まさに目の正月だ。」

その3「目の薬」

目の薬」という表現も「眼福」の類義語になります。「薬」という字から分かるように、美しいものや癒されるものを見て心が穏やかに休まるさまを表現できる言葉です。「癒される」という視点が入ることで、「眼福」とは完全にイコールではありませんが、似た意味を持つ表現として紹介しておきますね。

「日曜日に子どもとハイキングに出かけた。新緑にあふれた景色は目の薬になった。」

その4「目もあや」

目もあや」という言葉は、初めて聞いたという人が多いかもしれません。あまり使われない表現ですが、「眼福」の類義語になります。「まぶしいほどに美しく素晴らしいさま」を表す表現です。ただし「意外で驚きあきれる」「目もつぶれるほどひどい」という意味も持ち合わせているため、誤解されない使い方をしましょう。

「ロイヤルウエディングの中継を見た。王室に嫁ぐ女性の目もあやな姿にくぎ付けになった。」

「眼福」の対義語は?

残念ながら「眼福」に対義語はありません。「美しいものを見て幸せになる」という意味の対義を考えると、「醜いものを見て不幸な気持ちになる」ですよね。そのようなシーンを表したいときも滅多にないとは思いますが、もし遭遇した場合は状況を説明する表現を使って切り抜けてください。

「眼福」の英訳は?

image by iStockphoto

「眼福」の意味や使い方は分かりましたね。さて英語ではどのように表現するのでしょうか。美しいものを見て心が動くのは、世界共通の事象です。海外の人に幸せを分かち合う場面に備えて、英語表現を見ておきましょう。

\次のページで「その1「feast for the eyes」」を解説!/

その1「feast for the eyes」

「眼福」に最も近い意味を持つ英語表現は「feast for the eyes」です。直訳すると「目の宴会」。「feast」が「宴会」、「for the eyes」が「目にとっての」という意味です。目が宴会するほどの美しさや素晴らしさ、という意味ですね。

The rose exhibition was a feast for the eyes.
「バラの展覧会は眼福だった」

その2「eye candy」

eye candy」という言い方もあります。口語表現で、「目の保養」に近い言葉ですね。直訳すると「目の飴(キャンディ)」、目にとって甘く嬉しいもの、という意味です。ただし「eye candy」には「見た目は良いけれど、本質が伴っていないもの」というマイナスな意味もあります。褒めたつもりがけなされた!と相手が怒りだしかねないので、使う相手は気心がしれた友人に限るのが無難です。

He is good eye candy.
「彼は見た目がとても良い(イケメンだ)」

「眼福」を使いこなそう

この記事では「眼福」の意味・使い方・類語などを説明しました。

私たちが見て幸せになるものは、人によってさまざまです。何かを見て「幸せだな、嬉しいな」と感じる心の動きは、その人だけの大切な時間。ペットやアイドル、好きな雑貨やお店など、何でもよいのです。これからはぜひ、「眼福」という言葉を使ってみてください。新しい言葉は知っているだけではなく、使うことで自分のものになっていってくれますよ。

" /> 「眼福」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説! – ページ 2 – Study-Z
国語言葉の意味

「眼福」の意味や使い方は?例文や類語を元予備校校舎長がわかりやすく解説!

1.あのアーティストの作品はいつ見ても眼福を得ることができる。
2.貴重なコレクションを眼福にあずかり、ありがとうございます。
3.夜通し登り山頂から見たご来光は、眼福の極みだった。
3.眼福と言われたいがために、あの人気タレントは美容整形をしたらしい。

例文1は「眼福を得る」という表現を紹介します。「美しいものを見て幸せな気持ちを得る」という意味です。絵画や芸術作品、壮大な景色などを目の当たりにした際の高揚感を端的に表すことができます。

例文2は「眼福にあずかる」という表現です。これは「眼福を得る」を謙譲表現にしたもので、「素晴らしいものを見せていただいたときの感謝の気持ち」を相手に伝えることができます。

例文3は「眼福の極み」ですね。「眼福を得る」よりもっと気持ちの高ぶりが表現でき、稀少価値の高いものやめったに見ることができないものを見た時の感動をが伝わる表現です。

例文4は日常的な表現を紹介してみました。「あの女性タレントは美しいと言われたいがために美容整形した」という意味になります。

「眼福」の類義語は?違いは?

image by iStockphoto

素晴らしいものを見てとても幸せだという気持ちを表す「眼福」ですが、同じ意味を表す言葉にはどのようなものがあるでしょうか。「眼福」の類義語を見てみましょう。

その1「目の保養」

「眼福」と同じ意味を持つ最も一般的な言葉は「目の保養」です。「眼福」より会話的な表現なので、使ったことがある人も多いかもしれませんね。美しいものや好きなものを見て心が満たされたときに、眼福よりも気軽に使えます。

「テレビで美味しそうなレシピを紹介していた。仕上がりも見事で目の保養になった。」

その2「目の正月」

目の正月」という言葉は聞いたことがありますか?これも「眼福」の類義語です。「正月」という言葉が入っているのでおめでたい雰囲気が感じられる言葉ですね。珍しいもの、美しいものを見て楽しむときに使う表現です。

\次のページで「その3「目の薬」」を解説!/

次のページを読む
1 2 3 4
Share: