今回は、「医学、医療」とは何か、ということを考えてみよう。例えば、たくさんの人が経験する頭痛。もしも頭痛にいつも悩まされていて、自分で鎮痛剤などを服用して改善することを試みる人が多いでしょう。しかし、それが「ただの片頭痛でなく、重篤な病気が隠れているかも。」と心配になったら、病院へ行き、CTを撮る、血液検査や必要に応じた検査をして医師の診察を受けるでしょう。もしくは、病院や薬に頼らず、自宅でアロマを焚いたり、リラクゼーションで改善するか、様々な対処法が人それれぞれ異なるでしょう。これらを安易に「治療」といってひとまとめに言ってはならないのだよ。そこで、医学とは、治療とはについて医学系研究アシスタントのライターmimosa(ミモザ)と一緒に解説していきます。

ライター/mimosa

もともと文系出身で、独学で生物学、生化学を勉強し、現在医学系研究所の研究アシスタントとして理系の世界へ飛び込んだ。理科が苦手な方へも興味を持ってもらうべくわかりやすい説明を心掛けている。

1.現代の医学の種類

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現在主流となっている外科手術や検査データから正常値を定め、正常値でなければ治療を施すという医療の手法・考え方は「現代西洋医学」の考え方です。「西洋医学」「東洋医学」という言葉は聞いたことある方が多いかもしれませんね。では、「代替医療」は聞いたことありますか。この章では、それぞれおおまかな定義について確認しましょうね。

現代西洋医学とは

西洋医学とは、ヨーロッパから伝わったヨーロッパ流の医学の考えですよ。ヨーロッパでは、解剖学が進んでいました(キリスト教徒にはもともと人体解剖はタブーであったのですが)。人体を解剖することによって、これまで概念的な身体の構造が「実態」となったわけです。それまでは予測でしかなかったのですよ。人体を解剖する=病変、異常があるものを目視することができました。

日本では、なんと鎖国をしていた江戸時代から西洋医学の考えは伝わっていたのですよ。中学の歴史でも学んだかとは思いますが、江戸中期にはドイツの解剖書である「ターヘル・アナトミア」を杉田玄白や前野良沢らが翻刻しました。

江戸時代後期において長崎の鳴滝塾を開いたドイツ人医師、シーボルトによって西洋医学を教授していました。鳴滝塾には日本全国津々浦々の西洋医学を学びたい医師の卵たちが集っていたのですよ。それから鎖国を解いて、本格的に外国と交流する明治時代になってから広く西洋医学の考えは普及しました。それまでは、薬による治療が中心の東洋医学が主流でした。

これに「現代」という言葉がつくのがポイントで、19世紀後半(日本では明治時代あたり)に自然科学(微生物の発見、解剖学の発達)と結合したもののことを「現代医学」と言いますよ。科学的で様々な検査により制度の高い客観的なデータを基に診断して、治療薬は病変のある箇所に鋭く作用するものを使用します。効き目は鋭い分、副作用のリスクもあることは念頭に置かなければなりません。

東洋医学とは

「東洋」という言葉があるので、東洋発祥の医学の考え方です。中国医学、漢方医学(日本における伝統医学)、韓医学(朝鮮半島)などの東アジアをはじめ、アーユルヴェーダ(インド)の考え方も含まれますよ。日本における伝統医学は、古典医学書に基づく薬物療法及び漢方医学と物理的な鍼灸医学の両方を合わせて東洋医学と呼んでいますよ。西洋医学にはない陰陽論、五行説、経路、気・血・津液などの概念があります。西洋医学は客観的なデータから判断、以上のある箇所を治療する局所的なアプローチであるのに対して、「四診」という独自の基準で経験をもとに主観的に判断しますよ。治療法としては、自然の成分(植物や動物由来)の生薬を組合わせた漢方薬、鍼灸などを使用して自然治癒力を引き出すことを目的としています。

代替医療とは

代替医療とは

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「代替」という表現の通り、「通常の医療(治療)のかわりに別のものを取り入れる」というものですよ。あまり日本では聞きなれない言葉ですが、アメリカの成人の4割は代替医療を取り入れたことがあるくらいアメリカでは注目されている様々な医療のうちの一つですよ。代替医療の医学体系は実に多様で、健康食品、サプリメント、鍼灸マッサージ、整体、さらには哲学的な考え方も含まれますよ。表には、アメリカの国立補完代替医療センターによる分類を示しますね。

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2.ホメオパシーとは

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「ホメオパシー」という言葉は聞いたことありますか。「もしかして最近でてきた新しいものなのか。」なんて思うかもしれませんが、ホメオパシーの歴史は古いのですよ。以下、概要を見ていきましょうね。

ホメオパシーの歴史

ホメオパシーとは、ドイツ人の医師ザムエル・ハーネマンによって1796年に提唱されました。ホメオパシーの考えを確立させるきっかけは、マラリアの治療薬だったそうですよ。ハーネマン自身がマラリアの薬を大量に飲んだところ、マラリアに似た症状を発症し、このことにより、「ある病状を引き起こす薬があれば、それを用いることでその症状のある人は治療できる」としました。これは同種療法とも呼ばれますよ。

ナチス・ドイツ時代にもホメオパシーの考えは再燃し、敗血症患者やマラリア患者に対して施されましたが、治療効果はなかったそうです。

ホメオパシーの理論と効果

ハーネマンは、マラリアの治療薬を大量に服用したところ、マラリアと似た症状になったそうです。そこで、ハーネマンは、「同種のものが同種のものを治す」と考えたのですね。治療に用いたのは「レメディー」というものを薬として用いていました。レメディー自体は「砂糖玉」なのです。現代では、ハーネスの考えを踏襲しその砂糖玉に、ある病状を引き起こす成分をごく微量稀釈して砂糖に染みこませているそうですよ。気になるレメディーの原成分ですが、薬草、鉱物が多いのですが、中には病人の臓器や体液などを成分としたものもあります。それらを「ソノード」と言いますよ。さらに、レメディーには「オーラ」や「波動」、「パターン」、「水の記憶」というものが染みこんでいて、これらが体の抵抗力を引き出して自然治癒力が高まるとされています。そのレメディーが効くかどうかは、「波長が合うかどうか」という観点で考えられるということですよ。

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3.代替医療のリスクとベネフィットを考える

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18世紀末当時、提唱者のハーネマンにより「病気や症状を治すことができる」としていましたが、ホメオパシーの理論・効果については、現代医学では、レメディーを用いることはプラセボ効果以上の効果はないとされていますよ。これらのことから、現代医学では、レメディー≠治療薬です。以下、代替医療のリスクとベネフィット(利益)について見ていきましょうね。

山口県新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故

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代替医療のリスクを考える上で、ホメオパシーによる医療事故が起こっています。ホメオパシー自体は害のないものですが、本来は適切な医療行為を受けなければならない人に対して代わりに施されてしまうと医療事故、最悪の場合死亡事故が起こってしまうのですよ。以下、日本での有名な死亡事故について説明しますね。これは、2009年に山口県山口市で起きた死亡事故です。ある女性が助産師立ち合いのもと、女の子を出産しましたが、生まれて2か月で女の子は硬膜下血腫が原因で亡くなりました。

なぜ生まれたばかりの赤ちゃんが硬膜下血腫で亡くなるのか。原因として考えられているのは、ビタミンK欠乏症によるものであると言われています。

新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故はなぜ起きたか

本来ならば、生まれたばかりの赤ちゃんは、母乳を介しての栄養補給しかない上、消化器官の成長も未熟ですから、ビタミンンK(血液を固める働き)が不足しがちです。ビタミンKが不足すれば出血しやすい状態になりますよ。

この助産師が自分の判断で、本物のビタミンK(用いるのはシロップ状)を投与せずに、本物のビタミンKと同じ効果を持つと信じていたホメオパシーで用いるレメディを投与していたのです。さらに悪質なことに、母子手帳には、担当医師に気づかれないように「ビタミンK投与」と偽って記載していたのでした。

気分転換としてのホメオパシー

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ホメオパシーでの死亡事故ですが、これはあくまで適切な治療が施されなかったことによるものであるので、ホメオパシー自体が原因というわけではないと思います。代替医療を行う上でベネフィット(利益)はもちろんあると思いますよ。

日本ではあまりなじみがありませんが、イギリスでは、コンプリメンタリー・メディシンというセラピーが盛んに行われているようですよ。これは、病気ではなく、個人の体質や状態に合わせて健康維持のために行うものです。「人間本来が持つ自然治癒力」に重きを置いていますよ。日本で言う、アロマセラピーやハーブ療法もこちらに含まれます。ハーブは生薬にも含まれるものですから、特効性はなくじっくり効いていくものとして考えられていますよ。アロマセラピーなら、香りで気分をリラックスさせたり、逆に集中力を高めたり、その時の気分によって変えられますし、難しい、取扱注意な薬品、器具は用いないので、安全に使用できるかと思いますよ。

\次のページで「ホメオパシー療法を試す前に考えたいこと」を解説!/

ホメオパシー療法を試す前に考えたいこと

いつまでも健康に過ごしていけることが人生で最も幸せなことだと思います。しかし、どんな人でも体に思わぬ不調が生じることだってありますね。体の不調を抱えたとき、治療の選択は近年になって患者主体になってきています。患者主体になってきたとしても、まずは医療機関を必ず受診してください。主治医やかかりつけの病院があることが望ましいですね。ホメオパシー療法単独で、患者独自の判断だと病気の治療が行えません。どうしてもホメオパシー療法も取り入れたいのであれば、医療機関に持ち込み、薬剤の相互作用がないか、副作用がないか相談にのってもらいましょう。

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理科生物

3分で簡単「現代西洋医学」と「ホメオパシー」について医学系研究アシスタントがわかりやすく解説

3.代替医療のリスクとベネフィットを考える

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18世紀末当時、提唱者のハーネマンにより「病気や症状を治すことができる」としていましたが、ホメオパシーの理論・効果については、現代医学では、レメディーを用いることはプラセボ効果以上の効果はないとされていますよ。これらのことから、現代医学では、レメディー≠治療薬です。以下、代替医療のリスクとベネフィット(利益)について見ていきましょうね。

山口県新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故

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代替医療のリスクを考える上で、ホメオパシーによる医療事故が起こっています。ホメオパシー自体は害のないものですが、本来は適切な医療行為を受けなければならない人に対して代わりに施されてしまうと医療事故、最悪の場合死亡事故が起こってしまうのですよ。以下、日本での有名な死亡事故について説明しますね。これは、2009年に山口県山口市で起きた死亡事故です。ある女性が助産師立ち合いのもと、女の子を出産しましたが、生まれて2か月で女の子は硬膜下血腫が原因で亡くなりました。

なぜ生まれたばかりの赤ちゃんが硬膜下血腫で亡くなるのか。原因として考えられているのは、ビタミンK欠乏症によるものであると言われています。

新生児ビタミンK欠乏性出血症死亡事故はなぜ起きたか

本来ならば、生まれたばかりの赤ちゃんは、母乳を介しての栄養補給しかない上、消化器官の成長も未熟ですから、ビタミンンK(血液を固める働き)が不足しがちです。ビタミンKが不足すれば出血しやすい状態になりますよ。

この助産師が自分の判断で、本物のビタミンK(用いるのはシロップ状)を投与せずに、本物のビタミンKと同じ効果を持つと信じていたホメオパシーで用いるレメディを投与していたのです。さらに悪質なことに、母子手帳には、担当医師に気づかれないように「ビタミンK投与」と偽って記載していたのでした。

気分転換としてのホメオパシー

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ホメオパシーでの死亡事故ですが、これはあくまで適切な治療が施されなかったことによるものであるので、ホメオパシー自体が原因というわけではないと思います。代替医療を行う上でベネフィット(利益)はもちろんあると思いますよ。

日本ではあまりなじみがありませんが、イギリスでは、コンプリメンタリー・メディシンというセラピーが盛んに行われているようですよ。これは、病気ではなく、個人の体質や状態に合わせて健康維持のために行うものです。「人間本来が持つ自然治癒力」に重きを置いていますよ。日本で言う、アロマセラピーやハーブ療法もこちらに含まれます。ハーブは生薬にも含まれるものですから、特効性はなくじっくり効いていくものとして考えられていますよ。アロマセラピーなら、香りで気分をリラックスさせたり、逆に集中力を高めたり、その時の気分によって変えられますし、難しい、取扱注意な薬品、器具は用いないので、安全に使用できるかと思いますよ。

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