今日は「結合距離」について学んでいこう。世の中には数え切れないほどの分子が存在しており、我々の生活を支えている。このような分子を深く理解するためには、まず分子の形を正しく理解しなければならない。「結合距離」とは分子の形を決める重要な要素の一つです。
結合の種類と原子の種類さえ分かれば、どんな化合物でもおおよその結合距離を簡単に求めることができる。キーワードは「結合半径」です。化学に詳しいライター珈琲マニアと一緒に解説していきます。

ライター/珈琲マニア

京都大学で化学を学び、現在はメーカーの研究職として勤務。学生時代の専門は物理化学、量子化学であり、分子に関する知識が豊富なライター。

1.共有結合の結合

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今回は「結合距離」について学んでいきましょう。結合距離とは炭素や酸素、水素などが形成する共有結合の長さ、つまり原子と原子の距離のことです。結合距離は分子の形状に関わる重要な値であり、原子や結合の種類によって長さが変わります。

まずは単結合、二重結合などの結合の種類によって結合距離がどのように変化するか学び、その後に結合の種類と強さについて学んでいきましょう。ここでは例として炭素の結合に注目して学んでいきます。

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1-1.結合の種類と結合距離

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共有結合にはいくつか種類があり、単結合、二重結合、三重結合に分けられるという話を科学の授業で聞いた人もいるかもしれません。まずはこれらの結合について見ていきましょう。ここではそれぞれの結合を持つ化合物としてエタン、エチレン、アセチレンの化学式と結合距離を並べました。ちなみにここで使っている「Å」という記号は「オングストローム」という単位で「10のマイナス10乗メートル(0.0000000001メートル)」です。非常に短い長さですが原子の距離を表すときにちょうどいい大きさなので、この用語はよく使われます。

3つの化合物を比較すると、結合の数が多くなると結合距離が短くなっていることが分かりますね。つまり非常に簡単にまとめると「単結合の結合距離は最も長く、三重結合の結合距離が最も短くなる」といえます。これは全ての原子に共通する性質です。ちなみにベンゼンのような芳香族化合物の炭素-炭素結合は「単結合と二重結合の間の結合」と言われますが、その結合距離は1.399Åであり、単結合より短くて二重結合よりは少し長い値になっています。

1-2.結合の種類と強さ

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次に共有結合の構造をもう少し詳しく見ていきましょう。共有結合はそれぞれの原子から電子を渡し合うことによって生成されます。高校の化学では「原子の手」という例えで習ったのではないでしょうか。

単結合、二重結合、三重結合を形成する共有結合の模式図を以下に示しました。単結合と二重結合、三重結合いずれも、結合と同じ向きに存在する電子によって「σ結合」が形成されます。ただし二重結合、三重結合ではσ結合だけが作られるのではありません。2つ目、3つ目の結合として、σ結合に対して垂直方向に位置する電子同士が形成する「π結合」もあります。

つまり単結合から二重結合、三重結合になるにつれて結合の数が増えるわけです。より多くの結合を形成するため二重結合、三重結合は結合力が強くなり(結合を切断するために多くのエネルギーが必要となり)、結合距離も短くなります。

2.様々な原子の結合距離

前の章では炭素原子に絞って結合の種類と結合距離を考えました。では化合物が変わると原子間の結合距離はどのように変化するのでしょうか。また、原子が変わると結合距離はどのように変化するのでしょうか。この章では様々な化合物の結合距離を確認していきましょう。

2-1.同じ原子の結合距離

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前の章と同様に、まずは炭素について様々な化合物を取り上げて結合距離を見ていきましょう。炭素と炭素が単結合を作る化合物の結合距離を以下の表にまとめました。

表から化合物の構造に関係なく、炭素-炭素間の結合距離は一定であることが読み取れますね。ダイヤモンドのように炭素だけから作られる化合物と、酸素が含まれるアセトンでも結合距離は変わりません。このように化合物が異なっても結合を形成する原子が同じならば単結合、二重結合、三重結合同士の結合距離は一定になります。

2-2.原子の共有結合半径と結合距離

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次に異なる原子の結合距離を考えていきましょう。先ほどは結合を形成する原子が同じならば化合物が異なっていても結合距離はほぼ定数になることを説明しました。従って、原子と結合の種類が分かれば結合距離はある程度予測できると考えられます。そこで原子ごとに値が異なる「結合半径」と呼ばれる概念を導入して、結合距離の予測を行うようになりました。つまり二つの球状の原子が接触したときの距離が結合距離になる、というわけです。

以下に代表的な原子の結合半径の一覧を並べました。この表から例えば炭素と水素の単結合では結合距離は0.30+0.772=1.072Åになると予想できます。また炭素(C)よりもケイ素(Si)、のように原子番号が大きい原子ほど結合半径の値は大きいです。これは原子番号が大きい原子ほど電子の数が多く、外側の電子殻にも電子が存在しているため、原子のサイズも大きくなったことに由来します。

\次のページで「2-3.ファンデルワールス半径」を解説!/

2-3.ファンデルワールス半径

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最後に結合距離に関連したトピックとして、分子間の距離を表すもう一つの考え方を紹介します。今までは化合物の結合を表すときに元素記号と直線を用いていました。しかし実際の原子は原子核の周りを電子が飛び回っている球状のモデルに近いと考えられます。では先ほどの共有結合半径のように球状のモデルで分子を表せないのでしょうか。

そこで「ファンデルワールス半径」と呼ばれる概念が提唱されました。これは原子核の周りを飛び回る電子が存在する空間(電子雲)の大きさを基に原子の大きさを表現した値です。そして原子間の距離はファンデルワールス半径の和として表すと考えます。先ほどの結合半径と同じような考え方ですね。このような表し方は実際の分子の形状を立体的に、かつ正確に表す事が可能であり、最近ではコンピューターを用いた3Dモデルで分子模型を表すことも一般的になっています。

結合距離は分子の性質を反映する重要な値

結合距離は分子の形や反応性など様々な性質に影響する重要な値です。そして原子と結合の種類によってある程度予測できるのも結合距離の大きな特徴と言えるでしょう。

結合距離は基本的に一定ですが、結合距離を変えて反応性や性質を変える研究も行われています。最近は炭素-炭素間の距離を極限まで長くした研究成果も発表されました。通常の長さは約1.5Åに対して、この研究では長さ1.8Åを超えた結合距離の化合物を合成したとのことです。このように今もなお「結合距離」は科学者の関心を集めるトピックの一つになっています。

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化学原子・元素有機化合物物質の状態・構成・変化理科

5分で分かる「結合距離」原子間の距離に影響するものは何?京大卒の研究員がわかりやすく解説!

1-1.結合の種類と結合距離

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共有結合にはいくつか種類があり、単結合、二重結合、三重結合に分けられるという話を科学の授業で聞いた人もいるかもしれません。まずはこれらの結合について見ていきましょう。ここではそれぞれの結合を持つ化合物としてエタン、エチレン、アセチレンの化学式と結合距離を並べました。ちなみにここで使っている「Å」という記号は「オングストローム」という単位で「10のマイナス10乗メートル(0.0000000001メートル)」です。非常に短い長さですが原子の距離を表すときにちょうどいい大きさなので、この用語はよく使われます。

3つの化合物を比較すると、結合の数が多くなると結合距離が短くなっていることが分かりますね。つまり非常に簡単にまとめると「単結合の結合距離は最も長く、三重結合の結合距離が最も短くなる」といえます。これは全ての原子に共通する性質です。ちなみにベンゼンのような芳香族化合物の炭素-炭素結合は「単結合と二重結合の間の結合」と言われますが、その結合距離は1.399Åであり、単結合より短くて二重結合よりは少し長い値になっています。

1-2.結合の種類と強さ

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次に共有結合の構造をもう少し詳しく見ていきましょう。共有結合はそれぞれの原子から電子を渡し合うことによって生成されます。高校の化学では「原子の手」という例えで習ったのではないでしょうか。

単結合、二重結合、三重結合を形成する共有結合の模式図を以下に示しました。単結合と二重結合、三重結合いずれも、結合と同じ向きに存在する電子によって「σ結合」が形成されます。ただし二重結合、三重結合ではσ結合だけが作られるのではありません。2つ目、3つ目の結合として、σ結合に対して垂直方向に位置する電子同士が形成する「π結合」もあります。

つまり単結合から二重結合、三重結合になるにつれて結合の数が増えるわけです。より多くの結合を形成するため二重結合、三重結合は結合力が強くなり(結合を切断するために多くのエネルギーが必要となり)、結合距離も短くなります。

2.様々な原子の結合距離

前の章では炭素原子に絞って結合の種類と結合距離を考えました。では化合物が変わると原子間の結合距離はどのように変化するのでしょうか。また、原子が変わると結合距離はどのように変化するのでしょうか。この章では様々な化合物の結合距離を確認していきましょう。

2-1.同じ原子の結合距離

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前の章と同様に、まずは炭素について様々な化合物を取り上げて結合距離を見ていきましょう。炭素と炭素が単結合を作る化合物の結合距離を以下の表にまとめました。

表から化合物の構造に関係なく、炭素-炭素間の結合距離は一定であることが読み取れますね。ダイヤモンドのように炭素だけから作られる化合物と、酸素が含まれるアセトンでも結合距離は変わりません。このように化合物が異なっても結合を形成する原子が同じならば単結合、二重結合、三重結合同士の結合距離は一定になります。

2-2.原子の共有結合半径と結合距離

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次に異なる原子の結合距離を考えていきましょう。先ほどは結合を形成する原子が同じならば化合物が異なっていても結合距離はほぼ定数になることを説明しました。従って、原子と結合の種類が分かれば結合距離はある程度予測できると考えられます。そこで原子ごとに値が異なる「結合半径」と呼ばれる概念を導入して、結合距離の予測を行うようになりました。つまり二つの球状の原子が接触したときの距離が結合距離になる、というわけです。

以下に代表的な原子の結合半径の一覧を並べました。この表から例えば炭素と水素の単結合では結合距離は0.30+0.772=1.072Åになると予想できます。また炭素(C)よりもケイ素(Si)、のように原子番号が大きい原子ほど結合半径の値は大きいです。これは原子番号が大きい原子ほど電子の数が多く、外側の電子殻にも電子が存在しているため、原子のサイズも大きくなったことに由来します。

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